東証、2021年3月期決算会社の定時株主総会の動向を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 上 西 拓 也
令和3年4月26日、東証は、3月期決算の上場会社について、本年の定時株主総会の動向を公表した(以下「本公表」という。)。本公表に含まれる項目は次のとおりである。
- ① 本年の開催日程
- ② 招集通知の早期ウェブ開示・早期発送
- ③ 議決権の電子行使の状況
- ④ 英文招集通知の提供状況
- ⑤ バーチャル総会の開催予定
以下、各項目に関する集計データについて、解説を加えつつ紹介する。なお、東証による調査結果は、毎週月曜日に東証ウェブサイト[1]上で更新される予定であるが、以下で言及する集計データはいずれも4月26日付けの本公表に依拠しており、その後の更新内容を反映するものではない。
1 ① 本年の開催日程
本年3月期決算の定時株主総会の集中日は、6月29日(火)となる見込みである。この最集中日への集中率は26.9%であり、調査が始まった1983年の集計開始以来最も低い。3月期決算会社の定時株主総会の最集中日への集中率は1995年の96.2%をピークに低下しており、とりわけコーポレートガバナンス・コードの制定(2015年6月)後は低い水準で推移している。
本年の集中率が特に低い理由としては、株主総会を株主との対話の場として重視する認識が浸透して分散開催する傾向が強まったことに加え、6月最終金曜日である25日に前倒し開催する会社も多いこと(第二集中日である25日(金)への集中率は25.6%である。)が挙げられる。
2 ② 招集通知の早期ウェブ開示・早期発送
招集通知を定時株主総会の3週間(中15営業日)以上前の早期にTDnetにおいて公表する予定の会社は、過去最高水準の74.1%であり、招集通知を総会開催日の3週間(中15営業日)以上前の早期に発送する会社は24.2%と例年と同水準である。
株主総会議案の検討期間の拡大は、会社と株主との対話促進の観点から重要な意義を有するところ、早期開示・早期発送の拡大は会社と株主との対話を重視する各社の傾向があらわれたものといえる。
なお、令和元年改正会社法により上場会社に株主総会資料の電子提供が義務付けられるところ、同制度において、会社は総会開催日の3週間前までに電子提供することが求められる。当該制度の開始を待たず、既に早期ウェブ開示の傾向は拡大している。
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(うえにし・たくや)
岩田合同法律事務所弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業。2011年弁護士登録。『Q&A 家事事件と銀行実務』(共著、日本加除出版、2013年)、「各業務における反社勢力対応のポイント」(共著。銀行実務658号)、『Q&Aインターネットバンキング』(共著 金融財政事情研究会 2014年)等著作多数。
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1902 年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国におい て最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会 社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与してい る。
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