金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」、第一次報告を公表
――世界に開かれた国際金融センターの実現に向けて――
岩田合同法律事務所
弁護士 辛 島 聡
1 背景
金融庁は、コロナ後の新たな経済社会を見据え、成長資金の供給、海外金融機関等の受入れに係る制度整備、金融商品取引業者と銀行との顧客情報の共有等のあり方につき、金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」において検討を行い、それらのうち、海外の投資運用業者等の受入れに係る制度整備、及び外国法人顧客情報に関する銀証ファイアーウォール規制(情報授受規制)の緩和に関する検討結果として、2020年12月23日に、金融審議会市場制度ワーキング・グループの第一次報告(「本報告書」)を公表した。
2 海外の投資運用業者等の受入れに係る制度整備
⑴ 現行制度の概要と課題
現行制度において日本国内において投資運用業を行う場合、原則として金融商品取引業者としての登録が必要であり、その例外としては、適格投資家向け投資運用業[1]についての登録要件の一部緩和、及び適格機関投資家等特例業務[2]についての届出による組合型集団投資スキーム持分の取得勧誘又は自己運用が定められている。
しかし、現行制度については、主として海外の資金を運用する海外事業者を必ずしも想定していない、海外の資金のみ運用する海外事業者につき参入時やその後の監督において海外での業務実績や海外当局による監督の有無を勘案していない等の課題が指摘されていた。
⑵ 制度整備のあり方
それらの課題を踏まえた制度整備として、本報告書においては、①ファンドの投資家が主として外国法人や外国居住の個人(「外国法人等」)であることに着目し新たな類型として簡素な参入手続での国内業務を可能とする制度、及び②海外での業務実績(トラック・レコード)や海外当局の監督等を勘案し、日本で本登録等の前に一定期間参入を認める制度が提案されている。それらの内容は以下のとおりである。
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(からしま・さとし)
岩田合同法律事務所弁護士。1989年早稲田大学法学部卒業。1993年弁護士登録。1997年コロンビア・ロー・スクール修了(LL.M.)。1998年米国NY州弁護士登録。金商法・会社法を中心とした証券業務・企業法務全般を取り扱う。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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