GPIF、「第6回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する
上場企業向けアンケート集計結果」を公表
――非財務情報の開示の一層の充実、活用する投資家の増加という好循環が進展――
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月12日、「第6回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表した。
GPIFでは運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価、「目的を持った建設的な対話」(エンゲージメント)の実態、前回アンケート実施以降1年間の変化の把握を目的として上場企業を対象にアンケートを実施している(前回の集計結果について、SH3154 GPIF、「第5回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表――統合報告書の作成など非財務情報の開示・活用が引き続き進展 (2020/05/21)既報)。今回は2020年12月30日時点の東証一部上場企業2,186社(前回2,160社)を対象として2021年1月15日~3月13日の間に実施、回答社数は681社(回答率31.2%。前回662社・30.6%、前々回604社・28.4%)であった。前回に引き続き過去最多の回答社数となっている。
アンケートの構成上、大別して(1)GPIFの運用受託機関を含む機関投資家のスチュワードシップ活動の現状と変化、(2)自社のIRおよびESG活動、(3)GPIFが選定したESG指数、(4)GPIFのスチュワードシップ活動全般――に関する調査を行っている点に変更はなく、同一の設問からは近時の変化を読み取ることができる。上記(1)に関し「コーポレート・ガバナンス報告書の機関投資家による活用は進んでいますか?」と尋ねる質問4では「進んでいると感じる」とする回答が今回25.9%となり、前回比4.3ポイント増、前々回比9.1ポイント増と着実な進展がみられることに加え、作成企業に対し「統合報告書の機関投資家による活用は進んでいますか?」と尋ねる質問5では「進んでいると感じる」が今回61.7%にものぼり、前回比11.7ポイント増、前々回比22.3ポイント増と顕著な進展が継続していることが判明した。
なお例年、(1)関係の質問1では「機関投資家全般について、ここ1年で、IRミーティング等において変化はありましたか?」と問うているところ、「①全体または多数の機関投資家の好ましい変化を感じる」との回答が今回9.9%(前回6.7%、前々回3.5%)、「②一部の機関投資家についてではあるが、好ましい変化がある」が今回37.3%(前回36.1%、前々回37.1%)と「好ましい変化」を指摘するものが合わせて47.2%(前回42.9%、前々回40.6%)を占めており、近時のエンゲージメントの姿勢とその変化が企業側から好感をもって受け止められている状況が窺える。
今回調査では、質問6として「コロナ禍を受けて機関投資家との対話の内容やテーマに変化はありましたか?」を織り込んだ。「あり」とする回答が78.1%を数えるなか、具体的な変化としては「従業員のコロナ感染防止対策やテレワークの実施状況など、当社のコロナ対応の質問のほか、コロナが事業に与えるプラス・マイナスの影響を詳しく確認されるようになった」「コロナの影響、対応、今後の見通し、コロナ後の市場変化の見方、またコロナをきっかけとした全社戦略や方針に変化が生じたか、という質問については、ほぼ全ての投資家の方からご質問を受けている」などとする【コメント抜粋】が掲載・紹介されている。
上記(2)関係の質問として自社のESG活動などを巡り「貴社ではESGを含む非財務情報の任意開示(CSR報告書、サステナビリティ報告書、統合報告書など)を行っていますか?」と尋ねる質問1では「行っている」が78.5%(前回比3.7ポイント増、前々回比6.1ポイント増)。任意開示の実施に当たっては、うち30.7%が「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言報告書」を、25.8%が「経済産業省が策定した「TCFDガイダンス」」を参考としている(前回調査では順にそれぞれ20.4%、16.5%)。また、質問4「統合報告書またはそれと同等の目的の機関投資家向け報告書を作成していますか?」については、すでに作成している企業が58%・390社に至った(前回53%・350社、前々回51.2%・292社)。
上記(2)の関係では前回調査より「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同されていますか?」と尋ねることとしているが(今回・質問5、前回・質問9参照)、賛同している企業は208社(31%)にのぼり、前回144社(22%)から急伸。かかる208社に対して「TCFDに沿った情報開示をされていますか?」と問う枝問では「①開示している」が139社(67%、前回61社・43%)にのぼる。なお、賛同企業208社中「①開示している」との回答以外の全69社(33%)が「②今後開示予定」としており、当該69社のうち「2021年開示予定」が34社、「2022年開示予定」が12社となっている。