わが国上場会社において
バーチャルオンリー株主総会を許容する場合における法的論点(下)
西村あさひ法律事務所
弁護士 太 田 洋
三 バーチャルオンリー総会を許容する場合に問題となる法的論点
1 音声のみの総会を認めるか又は音声と映像(動画)とを併用した総会でなければならないか
バーチャルオンリー総会の開催を立法によって認めるとして、まず問題となるのは、音声のみの総会を認めるか又は音声と映像(動画)を併用した総会でなければならないかという点である。
およそ株主総会も会議体である以上、議長側と出席株主側との間及び出席株主相互間においてリアルタイムでのコミュニケーションの双方向性(すなわち、情報伝達の双方向性と即時性)が確保されている必要があるが、「コミュニケーションの双方向性」という以上、音声と映像(動画)とが共に双方向でリアルタイムに視聴できる環境が確保されている必要があるのか、それとも、議長側からの音声と映像(動画)はストリーミング技術によりインターネット経由で出席株主側に流すことは容易であるとして、出席株主側の音声に加えてその映像(動画)も議長側と他の出席株主側でリアルタイムに視聴できる環境まで確保されていなければならないのであろうか。
この点、そもそもリアル総会の開催場所さえ物理的に存在していれば、株主がビデオ会議方式やウェブ会議方式のみならず、リアル総会の開催場所とそれら株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されていることを条件として、電話のみで当該総会に参加する方法(電話会議による方法)により株主総会を開催することも可能であると解されている[29]ところではあるし、前述のとおり、米国では、バーチャルオンリー型を採用した会社の97%が音声のみのウェブキャストを用いた方式により総会を開催されていることに鑑みれば、バーチャルオンリー総会の開催を立法によって認める場合でも、音声に加えて映像(動画)により議長側と出席株主側との間及び出席株主相互間においてリアルタイムでのコミュニケーションの双方向性が確保されていることまでは必要ないと割り切ることも法的には可能であるように思われる[30]。米国でも、バーチャルオンリー型を採用する会社の大半が音声のみのウェブキャストを用いた方式により総会を開催している理由は、通信障害が生じるリスクを可及的に低減させるためとコスト面の問題からであると指摘されており、バーチャルオンリー総会の開催を立法によって認める場合に、音声に加えて映像(動画)により議長側と出席株主側との間及び出席株主相互間においてリアルタイムでのコミュニケーションの双方向性が確保されていることまで要求するのは、現在のわが国企業社会の総体としての技術水準や通信環境を前提とする限り、やや困難を強いるものといわざるを得ない。少なくとも、法的には、音声によって上記の情報伝達の双方向性と即時性が確保されていれば足りるとしておかないと、映像(動画)が途切れてしまった場合には直ちに株主総会決議取消しの問題が生じかねず、それではバーチャルオンリー総会を利用する上場会社自体がほとんど現れないことになってしまうであろう。したがって、バーチャルオンリー総会を許容する場合、法的には、音声によって議長側と出席株主側との間及び出席株主相互間においてリアルタイムでのコミュニケーションの双方向性が確保されていれば足りるとしておいた上で、音声に加えてどの程度まで映像(動画)を用いて双方向性と即時性を確保すべきかは、取締役会の裁量に委ねてもよいように思われる。
もっとも、法的な建付けとしては上記のように割り切ることができるとしても、上場会社のように、株主が不特定多数であって流動性も高く、特に、多くの出席株主が、社長を始めとする経営陣と直接相対して質疑応答している模様を間近で見聞できること(ないしは自ら質問すること)を期待して株主総会に出席しているものと考えられるわが国の場合には、少なくとも実務上は、可能な限り、音声に加えて映像(動画)を用いて、議長側と出席株主側との間及び出席株主相互間における情報伝達の双方向性と即時性を確保すべく努力すべきものと思われる。この点、新型コロナ感染症の感染拡大を防止するためのロックダウンに対応するために、バーチャルオンリー総会を時限的に解禁したドイツの新型コロナ対応法[31]では、バーチャルオンリー総会の開催に当たっては、①株主総会全体について映像と音声の配信がなされること[32][33]、②株主が電子投票できること(事前投票又はオンラインでの参加が認められること)、③株主に電子的な手段により質問する機会が与えられること及び④株主総会に物理的に参加しなくても、議決権を行使した株主に株主総会決議に異議を唱える機会が与えられること、という4つの条件を満たす必要があるとされており(新型コロナ対応法1条2項)、少なくとも、議長側からの音声と映像(動画)をリアルタイムで出席株主側に配信することは必要であると解されていることは、参考になるように思われる[34]。
2 通信が途絶した場合の取扱い
たとえバーチャルオンリー総会を許容する立法措置が講じられたとしても、少なくとも議案の採決時に通信が完全に途絶してしまった場合には、総会決議不存在として扱わざるを得ないであろう[35]。
他方、総会における議案の説明及び質疑応答の大部分が、大多数の株主にとって通信(映像のみならず音声も)が途絶した状況下で行われた場合には、総会決議取消しが問題となる。この点、前述のドイツ新型コロナ対応法1条7項は、電子的方法による株主総会への参加と議決権行使に伴う技術的な混乱に関連して決議の有効性を争う権利を会社に故意又は重過失がある場合に限定していたドイツ株式法243条3項1号をさらに押し進め、バーチャル株主総会に関するドイツ株式法の規定とバーチャルオンリー総会に関する新型コロナ対応法1条2項の違反については、会社が故意に行わない限り決議の有効性を争うことができない旨定めており[36]、参考になる[37]。
3 議長及び取締役会構成員のリアル出席の要否
前述した新型コロナ対応法により、バーチャルオンリー総会が時限的に解禁されたドイツ(新型コロナ対応法1条2項)では、取締役会の構成員(及びNotary)は物理的に株主総会に参加する必要があり、株主総会の物理的な開催が全く不要となるわけではないとされている(ドイツ株式法118条3項は、取締役会の構成員が株主総会に出席することを求めており、新型コロナ対応法はこの要件を緩和していないため)[38]。
もっとも、現行会社法298条1項1号で総会について存在すべきものとされる「場所」とは、株主が出席することができる場所であって議長の所在地ではないと解される[39]ため、わが国ではそもそも議長や取締役会構成員がリアルに総会に出席することは不要と解される[40]ことから、この点はわが国では問題とならないであろう。
4 少数株主が裁判所の許可を得て招集した臨時株主総会の取扱い等
バーチャルオンリー総会を開催できる旨が立法的に手当てされたとして、当該立法措置に基づく制度設計が、前述したリアル総会原則説に基づき、会社は、株主総会をリアルで開催することが原則である(取締役会決議により、リアルでの開催とバーチャルでの開催を併用してもよい)が、定款で別段の定めを置けば、バーチャルのみで開催することもできるとされた場合には、当該別段の定めの規定振りを義務型[41]とした場合には、いかなる場合でも、株主総会はバーチャルのみで開催すべきことになる。
しかしながら、この場合でも、少数株主が、臨時株主総会招集請求権(会社法297条1項)に基づき裁判所の許可を得て開催した臨時株主総会(同条4項。以下、かかる総会を「株主招集総会」という)についても、株主総会の開催方法はバーチャルのみとすべきことになるかは別の問題である。
この点、令和元年会社法改正に際して創設された株主総会資料電子化制度(会社法325条の2~325条の7等)が、株主招集総会についてどのように適用されるかが参考となる。株主総会資料電子化制度においては、「株式会社は、取締役が株主総会の招集手続を行うとき」は、株主総会資料の電子提供措置をとる旨を定款で定めることができるものとされている(会社法325条の2柱書前段)が、ここで、「株式会社は、取締役が」と定められているのは、株式会社の株主総会は取締役が招集することが原則形態であるところ(同296条3項)が、少数株主も、株主招集総会を招集することができることを踏まえたものであって、条文上、株主総会資料の電子提供制度が適用されるのは、取締役が招集する株主総会についてだけであって、株主招集総会については、同制度は適用されないことが明らかにされている。つまり、株主総会資料の電子提供制度は、「取締役が」株主総会の招集手続を行うときの特則であり、株主招集総会には適用されないことが、条文上明確にされている[42](さらにいえば、定款に株主総会資料電子化に係る定めのある株式会社において取締役に電子提供措置をとることを求める会社法325条の3について、「取締役」を「株主」に読み替える旨の規定も置かれていない)。これは、少数株主には、リソースの面で会社と比較して制約があることが通常であるため、そのことを考慮して、株主招集総会については、当該総会を招集する少数株主に電子提供措置をとる義務を課さなかったものと解される。そうであるとすれば、このような政策判断を前提とする限り、定款で義務型の定めを置き、株主総会の開催はバーチャルオンリー総会の形式によるべきものとしている会社についても、少数株主が(臨時株主総会招集請求権を行使して)裁判所の許可を得て招集する株主総会に関しては、バーチャルオンリー総会やハイブリッド出席型バーチャル総会ではなく、リアル総会の形式で株主総会を開催することを認めざるを得ないように思われる[43]。
他方、バーチャルオンリー総会を開催できる旨の立法措置が、前述した自由選択説の考え方に基づき、会社は、取締役会決議によって、株主総会をリアルで開催するか、リアルとバーチャルの双方で開催するか、バーチャルのみで開催するかを決定することができるものとされた場合や、法的には定款に別段の定めを置くことが必要であるとされた上で、会社が、当該別段の定めとして授権型[44]の規定振りを採用した場合には、株主招集総会を招集する少数株主は、その選択により、リアル総会のみを開催することもできるので、上記の問題は特に問題とはならない。もっとも、株主にリアル総会への出席権が保障されているハイブリッド出席型バーチャル総会についてすら、株主提案が提出されている場合や委任状争奪戦が行われるなど議案につき株主間で賛否の拮抗が予想されるような場合には、当日出席株主による議決権行使の結果を適時かつ正確に把握するシステムを整えることができない限り、ハイブリッド出席型バーチャル総会を採用することには慎重であるべきとの指摘がある[45]ことに鑑みると、会社としては、そのようなシステムが整備されていない限りは、①株主提案議案が総会の議案となっている場合、及び②委任状勧誘(会社提案議案への賛否を巡るものを含む)が行われている場合ないし行われる蓋然性が高い場合には、実務上は、極力、株主総会をバーチャルオンリー総会の形式で開催することには慎重であるべきであろう。他方、そのようなシステムが適切に整備されている場合には、2020年の定時株主総会シーズンのように、感染防止等の観点から、株主総会への出席人数を厳しく制限せざるを得ない状況下においても、株主総会をバーチャルオンリー総会の方式で開催することで、「リアル総会に出席できる株主の選別」を巡る紛争を予防することが可能となり、会社経営の麻痺や停滞を回避できる点は、上記一で述べたとおりである。
5 出席株主の本人確認
バーチャルオンリー総会にバーチャル出席することができる株主(会社法上「出席」したものと取り扱われる株主)は、当該株主総会の議決権に係る基準日において議決権を有する株主に限られるから、バーチャル出席する株主について、リアル株主総会の議場に出席する株主と実質的に同等の株主確認を行う必要がある。この点、ハイブリッド参加型バーチャル総会の場合には、(少なくとも株主総会が開催されている間は)バーチャル出席する株主からのアクション(質問や動議等)を受け付けることが基本的に想定されていないため、かかる株主について厳格な株主確認をする必要がないのに対し、バーチャルオンリー総会の場合には、ハイブリッド出席型バーチャル総会でバーチャル出席株主が出席する場合と同様、バーチャル出席する株主が質問等をしたり動議を提出したりすることが前提とされているため、リアル株主総会の議場に出席する株主と実質的に同等の株主確認を行う必要がある。
会社法上、株主(本人)確認の方法について特に規律は設けられていないが、株主(本人)確認については、全国株懇連合会の「株主本人確認指針」(平成20年12月5日全国株懇連合会理事会決定。最終改正は2020年10月16日)が、集団的権利(会社法124条第1項に規定する権利)を行使する場合の株主本人確認について、「発行会社が作成し、株主の登録住所宛に送付された書類等の提出をもって確認する」と定めた上で、その説明として、「〔議決権等の集団的権利を行使する場合の〕株主本人確認については、短期間に大量・迅速に処理することを勘案し、従前どおり議決権行使書や配当金領収証といった発行会社作成の書類の提出をもって株主本人確認資料とする」としており[46]、実務上、現在のリアル総会では、株主の住所宛てに送付した議決権行使書面を持参すれば、特段の本人確認手続をすることなく、総会会場への入場が認められている。このことに鑑みると、現在のわが国における郵便システムの信頼性に鑑みれば、バーチャルオンリー総会についても、少なくとも株主の住所宛てに郵送した議決権行使書面に記載された当該株主固有のIDとパスワードを入力することでバーチャル総会の「会場」にログインできることにしておけば、かかるログインがあったことをもって、当該IDとパスワードに対応する株主の「出席」があったものとして取り扱うことで差し支えないものと解される[47]。なお、リアル総会と異なり、バーチャルオンリー総会においては、会場受付における係員によるチェックがない分、なりすましによる非株主のバーチャル出席がなされるリスクが増大し得ることとなり、かかる問題に対処するため、実務上、ハイブリッド出席型バーチャル総会についてではあるが、株主の住所宛てに郵送した議決権行使書面に記載された当該株主固有のIDとパスワードの入力を求めるだけでなく、二段階認証やブロックチェーンを活用するといった取組みもなされている[48]が、これらを活用した場合には相応のコストや手間もかかるため、どの程度まで株主確認手続を厳格に行うかは、会社の裁量に委ねられることになろう[49]。
6 代理人出席の可否
ハイブリッド出席型バーチャル総会については、株主本人はリアル総会の会場に行かずともバーチャル出席が可能であり、どうしてもリアル総会の会場に出席したいのであれば、代理人を当該会場に出席させれば済むのであるから、わざわざ代理人によるバーチャル出席を認めるべき必要性は小さい。そのため、実施ガイドでも、「代理人の出席はリアル株主総会に限るとすることも、妥当な判断と考えられる」とされている[50]ところであるが、バーチャルオンリー総会の場合には、代理人をリアル総会の場に出席させること自体が不可能であるから、代理人をバーチャル出席させることを認めざるを得ないであろう。
そして、代理人のバーチャル出席を認めざるを得ない以上、会社はどのように当該代理人の代理人資格を確認すべきか等が問題となるが、この点に関しては、ハイブリッド出席型バーチャル総会において会社が任意に代理人のバーチャル出席を認める場合と同様に、リアル総会に代理人を出席させる場合の代理人資格の確認方法[51](株主総会の前日まで又は当日に、委任状及び委任者の議決権行使書面を提出させるとともに、代理人資格を定款で株主に限るとしている会社については、受任者本人の議決権行使書面を提出させることが一般的な実務である)に準じて、当該代理人の代理権を証する委任状を事前に会社の専用受付アドレスにメールで送信することを求めるといった取扱いをすべきであり、いずれにせよ、会社法298条1項5号及び会社法施行規則63条5号に基づき、代理人によるバーチャル出席に関する事項を取締役会で決議した上で、株主総会招集通知に当該事項を記載又は記録しなければならない[52]ものと解される。
なお、株主本人が株主の住所宛てに郵送した議決権行使書面に記載された当該株主固有のIDとパスワード等を「代理人」に伝達してしまえば、当該「代理人」がそもそも委任状を会社に提出しなくとも(つまり、会社が定めた代理人の資格を含む代理権を証明する方法等が遵守されなくとも)、事実上、当該「代理人」によるバーチャル出席が可能となってしまうが、これは議決権行使書面を持参した者を株主本人とみなす現在のリアル総会に関する実務でも同様に存在する限界であり、バーチャルオンリー総会に固有の問題ではない。仮に、この点を問題があると捉えるのであれば、この点を解決するためには、立法的に、バーチャルオンリー総会(ないしハイブリッド出席型バーチャル総会)を開催する場合には、予め株主が会社に届け出ている電話番号にSMSでPINコードを送る方法等を用いて、二段階認証を要求するといった手法を採用せざるを得ないであろう。
7 総会出席のために事前登録を要求することができるか(事前登録がない場合に出席を拒絶できるか)
2020年にハイブリッド出席型バーチャル総会を開催した会社の一部では、バーチャル出席を希望する株主がどれほどの人数となるかが分からない中で、アクセス集中によるシステムダウンが生じることがないよう、バーチャル出席を希望する株主については事前登録を要求する取扱いがなされたようである[53]が、バーチャルオンリー総会についても、同様に、アクセス集中によるシステムダウンが生じることがないよう、事前に総会「出席」人数を把握するため、「出席」を希望する株主(代理人によるものを含む。以下同じ)については事前登録を要求することが許されるであろうか。
この点、新型コロナウイルス感染症の急速な広がりに伴う政府の緊急事態宣言の中で2020年5月7日に開催された乾汽船の臨時株主総会については、同社の、「事前登録希望者はeメールで登録を申込み、事前登録の成否については会社が株主総会の1週間前に連絡する。入場者数は、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による『10人以上の集会への参加を避けること』との提言に基づいて、議長等も含めて10人未満、うち株主数は3名とする」という形式で実施された事前登録制に基づく出席制限について、入場制限が株主権の不当な制限であるとして総会開催禁止の仮処分が申し立てられ、他の株主からの委任状を持参する株主については入場を認めるという内容の和解が東京地裁において成立しており、一定の条件下で一定の事前登録制を採用することが、裁判所によって事実上適法と認められているところである[54]。また、2020年4月2日付けで経済産業省と法務省の連名で公表された「株主総会運営に係るQ&A」においても、そのQ3に対する回答として、「A3:可能です。Q2の場合における会場の規模の縮小や、入場できる株主の人数の制限に当たり、株主総会に出席を希望する者に事前登録を依頼し、事前登録をした株主を優先的に入場させる等の措置をとることも、可能と考えます。なお、事前登録を依頼するに当たっては、全ての株主に平等に登録の機会を提供するとともに、登録方法について十分に周知し、株主総会に出席する機会を株主から不公正に奪うものとならないよう配慮すべきと考えます」とされており、新型コロナの感染拡大防止に必要な措置として採られる来場制限措置の一環として、事前登録制を採用することが明示的に認められている。
したがって、少なくとも、出席株主の数に上限を設定するものでない場合や、上限を設定するにしても、過去の株主総会への出席株主の最多人数を十分に上回る数を上限とするのであれば、総会当日にアクセス集中によるシステムダウンが生じることがないよう、所要のシステムを構築・整備するための手段として、事前登録制を採用し、事前登録がない場合にはかかる株主の「出席」を拒絶することも適法であって、そのことに基づいて、株主総会決議取消しリスクが生じることはないものと考えられるであろう。
8 バーチャル出席と事前の議決権行使の効力の関係
バーチャルオンリー総会においては、株主は全てバーチャル出席の方法により株主総会に出席することになるが、出席した株主が、書面又は電磁的方法により議決権を事前に行使していた場合には、ハイブリッド出席型バーチャル総会において、バーチャル出席した株主が、書面又は電磁的方法により議決権を事前に行使していた場合と同様に、どの時点で事前の議決権行使を無効とすべきかという問題が生じることになる。
この点、リアル総会においては、従来から、書面又は電磁的方法により議決権を事前に行使していた株主が、総会当日に総会の会場に来場した場合には、受付の際に、事前になされていた議決権行使を無効とする取扱いが一般的に行われている。バーチャルオンリー総会においては、総会の会場に赴くための距離的・時間的な制約がないことから、書面又は電磁的方法により議決権を事前に行使していた株主が、当日の状況次第で急遽バーチャル出席するといった事態は容易に想定されるし、途中出席及び途中退出も、リアル総会にリアル出席する場合と比較すると遥かに容易である。それ故、バーチャルオンリー総会において、株主がバーチャル出席するためのログインを行った際に、事前になされていた議決権行使を無効としてしまうと、その後採決がされるまでの間に当該株主がログアウトしてしまうと、当該株主の議決権行使がないものとして取り扱われてしまう。他方、ログイン時に一旦無効にした事前の議決権行使を、議案採決前にログアウトがあった場合に限って再度有効とするのは極めて煩雑である。
したがって、実務上は、バーチャル出席を受け付けるための株主本人確認手続として、バーチャル出席する株主にはログインを求めるが、ログインがなされた時点では事前になされた議決権行使の効力を取り消さずに維持しておき、議案の採決の時点で電磁的方法により新たな議決権行使がされた場合に限って、当該時点をもって事前になされた議決権行使を無効とする旨の対応をすることが相対的には望ましいと思われる[55]。
また、上場会社について、株主総会終了後に提出しなければならないものとされている臨時報告書に記載すべき議決権の数については、総会会日前日までの事前行使分や当日出席の大株主分の集計により議案の可決要件を満たし、会社法に則って決議が成立したことが明らかになった等の理由がある場合には、バーチャル出席した株主が当日行使した議決権数を集計しないこともできると解される。その場合には、総会会日前日までの事前行使分や当日出席の大株主分の集計により議案の可決要件を満たし、会社法に則って決議が成立したことが明らかになった旨を、バーチャル出席した株主が当日行使した議決権数を集計しない理由として開示すればよいものと解される(リアル総会の場合に、総会当日に議場に出席している株主のうち、会社に委任状を提出している株主を除く株主が当日行使した議決権数を集計しない場合と同様である)。
9 動議の取扱い
実施ガイド22頁では、ハイブリッド出席型バーチャル総会にバーチャル出席した株主については、基本的に動議を提出できず、動議の採決にも参加できないという取扱いも許容され、総会当日に議場で提出された修正動議への賛否の取扱いについては議決権行使書面を出したが当日出席しなかった株主と同じ扱いを受けるものとされているが、前述したとおり、バーチャルオンリー総会では、株主にはリアル総会に参加するという選択肢がない以上、バーチャル出席株主について、手続的動議や実質動議(修正動議)を提出することを認めないことは許されないであろう。
しかしながら、バーチャルオンリー総会の場合には、リアル総会の場合と異なり、株主が複数発言したときに、議長が原則として必ず取り上げなくてはならない必要的動議[56]についても、聞き漏らしてしまうリスクが飛躍的に高まる。また、動議については、会議体の原則に照らすと、通常は、その提出株主に対して、提出した動議の内容に関する趣旨確認や提出理由の説明を求めることが必要になるものと考えられるが、現状のわが国の総体としての企業社会の技術的水準や通信環境に鑑みると、バーチャルオンリー総会の議事進行中に、バーチャル出席株主に対してそのような趣旨確認等を求めることや、そのためのシステム的な体制を整備することは、会社の合理的努力を越えた困難を伴うものと解さざるを得ない。
したがって、バーチャルオンリー総会では、動議の提出について、発言によるものは受け付けず、インターネットを経由した書き込みやメールによるものしか受け付けないとする取扱いも合理的な制約として許容されるべきである。これは、株主に対して、リアル総会の場合とは異なる制約を課すものであって、かつ、株主には、ハイブリッド出席型バーチャル総会の場合と異なり、リアル総会の方に出席して動議を提出するという選択肢も存しないのであるから、バーチャルオンリー総会の開催を立法によって許容する場合には、上記のような合理的な制約を課すことが許される旨を、公的なガイドラインないしQ&Aか又は立法的に手当てしておくことが望ましいのではないかと思われる。
この点、2020年にハイブリッド出席型バーチャル総会を開催した一部の会社においては、バーチャル出席株主からの質問や動議等は全てシステムを通じたテキスト形式でのみ受け付けるものとし、システムの入り口として質問・発言と動議とを分けて、動議については、法的観点から類型化(各議案についての修正動議、議長不信任動議、延期・続行動議、会計監査人出席要求動議、株主総会提出資料調査者選任請求動議、その他)して選択できるプルダウンを設け、株主側で当該プルダウンの中から自己が提出しようとする動議を選択した上で提出するものとする、との取扱いが行われていたようである[57]が、かかる取扱いは、上記の公的なガイドラインないしQ&Aか又は立法的手当てを行う場合にも、実務上の対応策としても、参考になるであろう。
なお、バーチャル総会だけでなく総会運営全体に関する議論として、修正動議に関して無制限に認めるという運用が本当に望ましいのかについても検討が必要であるとの指摘がある[58]。この論者は、「出席していない株主に動議につき議決権行使をする機会を与えるためには、一定期間前に動議を提出することをルールとして定め、当該動議を事前に公表して議決権行使をし得る体制を整えたほうがよいのではないか」と述べている[59]が、立法論としては、バーチャルオンリー総会を解禁する際に、併せて検討すべき課題であろう。もっとも、ハイブリッド出席型バーチャル総会と異なり、バーチャルオンリー総会では、株主はリアル総会に出席してその場で修正動議を提出するという選択肢が存しない以上、上記のような手当てがなされない限りは、出席株主からの修正動議は、総会前日の会社の営業時間終了時等を提出期限とするわけにはいかず、総会当日において、議長が報告事項の説明と議案の趣旨説明を行った後、質疑応答のために設けられた時間が終了する一定時間前までは、受け付けざるを得ないものと解される。
10 質問をどのような形式で受け付けるか及びどのように質問者の指名を行うか
バーチャルオンリー総会においては、株主は、本来的には、リアル総会にリアル出席した株主と同様に、議長の議事整理権に服すという前提の下ではあるが、自由に質問等をすることもできるはずである。
しかしながら、バーチャルオンリー総会においては、質問者の指名につき、リアル総会の場合のように、「挙手」した株主の中から議長が質問者を指名するという方式を採用することが、実務上困難な場合も考えられる(zoomの「手を挙げる」機能を用いる等すれば、「挙手」した株主の中から議長が質問者を指名することも不可能ではないと考えられる[60])。したがって、バーチャルオンリー総会における株主からの質問については、その出席形態がバーチャルであることに鑑み、ウェブ会議における発言や電話での発言[61]など口頭の発言によるものは受け付けず、インターネットを通じた書き込み(指定のウェブサイトを通じた書き込みや指定のアプリのチャット機能を利用すること等が考えられる)やメールによるもののみを受け付けるという取扱いをすることも、合理的な制約として許容されるべきである。そして、このように、インターネットを通じた書き込みやメールでのテキスト形式による質問を受け付ける場合、議長が質問者としてバーチャル出席している株主を指名した後に、当該指名された株主が質問のテキストやチャットを送信することは時間を要し、議事運営に支障が生じることから、バーチャルオンリー総会においては、質問を希望する株主については、総会当日における一定の質問受付期限まで[62]に、株主が予め会社が準備した入力フォームに質問内容を入力し、それを受け付ける方式を採用することが現実的であろう。この方法であれば、議長がその質問内容を確認した上で、当該質問を取り上げるかどうかを判断することも技術的に可能となる。このように、バーチャルオンリー総会を運営する場合の実務対応としては、株主は、総会当日における一定の質問受付期限までに予め用意されたフォームに質問内容を書き込んだ上で会社に送信することとし、受け取った会社側は、運営ルールに従ってそれを確認し、議長が議事整理権を合理的に行使した上で適宜取り上げるというフローを経ることが、円滑な議事運営の観点から便宜ではないかと解される[63]。
他方、株主からインターネットを通じた書き込みやメールによる質問を受け付けるということになると、インターネットを通じて質問するということの手軽さから、多数の質問が寄せられることや、同じ内容の質問を繰り返し送信したり、同じ内容の質問を各社の事情を考慮することなく一斉に多数の会社に送信したりするといった濫用的な質問がなされることも考えられるが、その場合には、取り上げる質問をどのように選別するか、株主から受け付ける質問数や質問の字数に制限を設けることはできるかが問題となる。この点、一般論としては、このような場合における質問の取扱いは議長の議事整理権の範囲内の事項と考えられるだけでなく、バーチャルオンリー総会の場合には、株主から提出された質問が採用されても、質問株主がバーチャルな総会の「会場」からいなくなってしまうこともあり得るため、円滑な総会運営が妨げられる可能性がリアル総会の場合よりも高いことから、質問の選別は合理的な方法によるものであればよく、質問数や質問の字数も、個別の会社の実情に応じて合理的に制限することができると解すべきであろう[64][65][66]。
しかしながら、以上で述べたような対応は、株主に対して、リアル総会の場合とは異なる制約を課すものであって、かつ、株主には、ハイブリッド出席型バーチャル総会の場合とは異なり、リアル総会の方に出席して動議を提出するという選択肢も存しないのであるから、バーチャルオンリー総会の開催を立法によって許容する場合には、上記のような合理的な制約を課すことが許される旨を公的なガイドラインないしQ&Aか又は立法的に手当てしておくことが望ましいのではないかと思われる。そして、バーチャルオンリー総会の開催を立法によって許容する場合には、バーチャルオンリー総会を開催するに際して、個々の株主が提出できる質問回数や文字数、受付期限等の事務処理上の制約を課す場合には、それらの制約の内容について、会社法298条1項5号及び会社法施行規則63条5号に準じて予め取締役会で決議した上で、株主総会招集通知に当該事項を記載又は記録しなければならない[67]旨を、公的なガイドラインないしQ&Aか又は立法的に手当てしておくことが望ましいのではないかと思われる。
もっとも、質問を取り上げる際の考え方(質問選別基準[68])については、リアル総会でも、質問者の指名は、一般的には議長の議事整理権の範囲内と解されていることから、それとのバランスからも、敢えて取締役会による事前の決定や株主総会招集通知における開示まで要求しなくともよいのではないかと思われる。いずれにせよ、バーチャルオンリー総会を許容すべき理由としてコスト削減が挙げられていることからすると、バーチャルオンリー総会の開催を立法によって許容する場合、バーチャルオンリー総会の方がリアル総会よりも会社の負担が重くなるというのはいささか本末転倒の感があり、質問選別方針の事前開示や回答しなかった質問を事後的に開示しなくとも、総会決議取消しのリスクまではないものと解すべきであろう[69]。
なお、修正動議の場合と同様、ハイブリッド出席型バーチャル総会と異なり、バーチャルオンリー総会では、株主はリアル総会に出席してその場で質問を提出するという選択肢が存しない以上、出席株主からの質問は、総会前日の会社の営業時間終了時等を提出期限とするわけにはいかず、総会当日において、議長が報告事項の説明と議案の趣旨説明を行った後、質疑応答のために設けられた時間が終了する一定時間前までは、受け付けざるを得ないものと解される。
四 終わりに
以上で述べたとおり、バーチャルオンリー総会を許容する旨の立法措置は、社会的な意義や有用性もあり、早急に講じられるべきものと考えられるものの、バーチャルオンリー総会に関して問題となる法的論点は、ハイブリッド出席型バーチャル総会に関して問題となるものとは質的にかなり異なる様相を有するものがあると考えられるため、かかる立法措置を講じるに当たっては、バーチャルオンリー総会が株主にとってはある種の事実上の「期待権」を制限し得る要素を含むことを十分念頭に置くとともに、特別法の制定後も、実務的な観点も含めて多角的・複眼的な議論がなされていくことを強く期待したい。
(完)
[30] この点、経団連提言では、「米国のバーチャル株主総会では、コスト面、通信の安定性等の技術的理由、動画拡散リスクへの懸念等から、映像通信なしの音声通信のみによる開催が認められており、現に音声通信のみによる開催が大半である。日本においても音声通信のみによる接続(総会会場から出席役員への接続を含む)について同様に考えるべきである」とされている。
[31] ドイツの新型コロナ対応法の詳細については、石川智也「ドイツ、アメリカのバーチャル株主総会の最新動向と日本への示唆―第1部 ドイツ―」資料版商事法務436号(2020)21-24頁参照。
[32] この①の映像と音声の配信については、配信が技術的に妨げられず、すべての株主に届いていることまでは要件としないと解されている(Gesetzesbegründung, Mar. 24, 2020, BT 19/18110 (Ger.) at 26, available at http://dipbt.bundestag.de/dip21/btd/19/181/1918110.pdf.)。以上につき、石川・前掲[31] 22頁参照。
[33] なお、バーチャルオンリー総会を時限的に解禁したオーストリアの新型コロナ対応法においては、株主が映像と音声で総会に参加できることが要件とされているが、出席株主の50%までは音声のみによる参加でもよいものとされている。以上につき、《https://blog.pwclegal.at/en/covid-19-decision-making-under-company-law-what-can-be-done-remotely-part-4/》参照。
[34] とはいえ、たとえバーチャルオンリー総会を許容する立法措置を講じるに当たっては、現在のわが国企業社会の総体としての技術水準や通信環境を前提とする限り、会社側からの映像(動画)の配信が途絶したとしても、電話等の手段で、音声により会社側と株主側との間及び株主相互間で双方向性と即時性が確保されていれば、基本的には、株主総会決議に取消事由まではない(仮にあったとしても裁量棄却がなされる)ものと整理すべきであろう。
[35] 田中亘=佐久間大輔=赤松理=岩本忠史=仲摩篤史=日高直樹=近澤諒「座談会 本年の実務と残された課題 ハイブリッド“出席型”バーチャル株主総会を検討する」ビジネス法務2020年12月号25頁〔田中発言〕参照。
[37] 北川雅史「新型コロナを受けた『会議体』の課題――総会IT化をめぐる世界・日本の動向」ビジネス法務2020年12月号13頁は、バーチャル株主総会に積極的な意義を認めるのであれば、通信障害が生じた場合につき、ドイツ株式法243条3項1号を参考にして、総会決議取消事由とならないための要件を会社法に定めるべきであるとする。なお、経団連提言は、「会社側が通信途絶に十分な対策を取っていた場合には、株主側の通信環境の問題で通信障害が発生した場合は勿論、会社・株主双方に帰責性がない事情によって通信障害が生じた場合にも、……決議取消事由には当たらない」としているが、議案の採決時に通信が完全に途絶してしまった場合は株主総会決議不存在と扱わざるを得ない点を除けば、特段の立法措置を講じなくとも、現行の会社法831条1項1号の解釈からでも、かかる結論は導き出せるであろう。
[39] そもそも、取締役の出席を排除して株主全員が出席して開催された株主総会に瑕疵(取消原因)があるか否かとの問題につき、実務上、取締役が出席していなくとも、原則としてかかる総会決議に瑕疵はないと解されている(東京地方裁判所商事研究会編『類型別会社訴訟Ⅰ〔第2版〕』(判例タイムズ社、2008)399頁参照。但し、反対説として、例えば、江頭憲治郎『株式会社法〔第7版〕』(有斐閣、2017)329頁注7、大隅健一郎=今井宏『会社法論 中巻〔第3版〕』(有斐閣、1992)84頁参照)。
[40] 2020年にハイブリッド型バーチャル総会を開催したソフトバンクグループにおいては、議長を始め、同社の取締役会は全員Zoomで参加したと報じられている。
[42] 以上については、森本滋・京都大学名誉教授との議論に際して、同教授からご教示頂いた。
[43] なお、改正法においては、振替株式発行会社が電子提供措置をとる旨の定款の定めを設けることが義務付けられているが、振替株式を発行する会社の定款については、改正法の施行日(電子提供制度については公布の日から3年6月以内の日)において、当該定款変更の決議をしたものとみなす旨の経過措置(整備法10条2項)が設けられている。改正法では、本文で述べたとおり、「株式会社は、取締役が株主総会の招集の手続を行うとき」は、株主総会資料の電子提供措置をとる旨を定款で定めることができるものとされている(会社法325条の2柱書前段)ので、少数株主が株主招集総会を開催されない場合には、当該定款規定も適用されないことは明らかである。バーチャルオンリー総会の開催を可能にする立法措置を講じる場合において、株主総会の開催はリアル総会の方法によることを原則(ハイブリッド型バーチャル株主総会の方法によることは妨げられない)とした上で、定款で別段の定めを置けば、バーチャルのみで開催することも可能とする旨の制度設計がなされる場合には、上記の株主総会資料の電子提供措置に関する会社法の規定振りと同様の規定振りを採用すべきことになろう。
[45] 濱口耕輔=山本ゆり「2020年総会の動向と新時代の展望(2)バーチャル株主総会実務の課題と展望」商事2241号(2020)21頁参照。
[46] もっとも、全国株懇連合会編『全株懇モデルⅠ――定款・株式取扱規程モデルの解説、自己株式の理論と実践』(商事法務、2016)137頁は、「本指針で示す株主本人確認の方法はあくまでも例示であ」ると述べた上で、「各社の実情に応じて別途各社の判断にて適宜な方法を採用して株主本人確認することを妨げるものではない」としている。なお、プロキシー・ファイトが行われていた事案につき、本人確認書類の添付されていない委任状を無効と取り扱うことは違法ではないと判示した裁判例(東京地判平成22・7・29資料版商事法務317号191頁〔大盛工業株主総会決議取消請求事件〕がある。
[47] ハイブリッド出席型バーチャル総会について述べられたものであるが、実施ガイド15-16頁参照。
[48] 実施ガイド16頁参照。なお、アステリアが2020年6月24日に実施した定時株主総会においては、ブロックチェーン技術を用いた議決権行使・質問システムが利用されている(2020年6月8日付け同社報道発表資料「新型コロナ感染予防対策として公共交通機関の利用や三密を避けるための『ハイブリッド出席型バーチャル株主総会』を開催」)。
[49] なお、また、法人株主のID・パスワードの管理を容易にするための工夫として、議決権行使書面等でID・パスワードの記載面を再貼付が不可能なシールで覆うといった工夫も考えられる(実施ガイド16頁注16参照)。
[50] 実施ガイド16頁参照。
[51] 会社法298条1項5号及び会社法施行規則63条5号により、代理人の資格を含む代理権を証明する方法等については、取締役会決議により定めることができるものとされている。
[52] 会社法299条4項、同298条1項5号及び会社法施行規則63条5号参照。
[54] 同社の2020年4月30日付け「臨時株主総会開催禁止の仮処分命令申立事件の和解に関するお知らせ」と題するプレスリリース及び「乾汽船、株主により招集される臨時株主総会の開催禁止の仮処分命令申立てについて株主と和解」商事2231号(2020)68頁参照。
[55] 実施ガイド18頁参照。もっとも、リアル総会の場合の実務と同様に、ログインをもって出席とカウントし、それと同時に事前の議決権行使の効力を取り消す旨の方法を採用することも、法的には問題ないものと解される(実施事例集(案)25頁)。いずれにせよ、議決権行使の効力関係については、株主の権利行使に支障が生じないよう、予め招集通知等で株主に周知しておくべきであり、バーチャルオンリー総会の開催を立法によって許容する場合には、議決権行使の効力関係について、会社法298条1項5号及び会社法施行規則63条5号に準じて予め取締役会で決議した上で、株主総会招集通知に当該事項を記載又は記録しなければならない旨を、立法的に手当てしておくことが望ましいものと思われる。
[56] 例えば、議長不信任動議については裁量判断に馴染まないことから、議長は原則として必ず取り上げなければならないとする裁判例がある(東京高判平成22・11・24資料版商事法務322号180頁)。
[60] 2020年3月25日に開催されたフューチャーの定時株主総会では、実際にそのような方式が採用されている(実施事例集(案)30頁参照)。
[61] 電話による受付の方法としては、2020年にハイブリッド型バーチャル総会を開催した一部の会社においては、会場にコールセンターを設置し、質問がある株主は当該コールセンター宛に電話をかけてもらい、来電があった場合にはコールセンターのスタッフが議長に伝えるという体制が採られたとのことであり、実務上参考になると思われる(田中ほか・前掲[35] 28頁〔赤松発言〕参照)。
[62] 後述するが、バーチャルオンリー総会を開催する場合には、株主は、リアル総会に出席してその場で質問を提出するという選択肢が存しないことから、ハイブリッド型バーチャル株主総会(出席型)におけるバーチャル出席株主からの質問の場合と異なり、株主からの質問につき、総会前日の会社の営業時間終了時等を受付期限とすることは、もはや許されないと解すべきであろう。
[63] なお、ハイブリッド型バーチャル株主総会(出席型)の場合につき、実施ガイド21頁参照。
[65] 質問数や字数の制限に関しては、2020年にハイブリッド型バーチャル総会を開催した一部の会社においては、質問数は無制限とし、質問の字数は250字以内とした上で(但し、質問数は無制限としたため、字数が足りない場合には、多数の質問に分割して送付することは可能)、質問受付時間も、総会開始前から当日の質疑応答の締切時間までの間に設定する取扱いがなされたとのことであり、実務上参考になると思われる(田中ほか・前掲[35] 28頁〔仲摩発言〕参照)。
[66] 質問の選別に関しては、2020年にハイブリッド型バーチャル総会を開催した一部の会社においては、テキスト方式であると会社側に都合の良い質問のみを恣意的に選別することが可能となるため、株主からの疑念を払拭すべく、予め質問の選別方針(審議事項に関係があり、多くの株主の関心がある質問)を開示しておいた上で、当日における選別作業を外部弁護士や社内弁護士に委ね、更に、テキストで受け付けた質問を総会後に全て会社のホームページで開示する取扱いがなされたとのことであり、実務上参考になると思われる(田中ほか・前掲[35] 28頁〔日高発言〕参照)。
[67] 会社法299条4項、同298条1項5号及び会社法施行規則63条5号参照。
[68] 具体的には、例えば、総会の目的事項との関連性の高いものから取り上げる一方で、個人情報が含まれる場合や個人的な攻撃等につながる不適切な内容は取り上げないといった基準が考えられよう。
(おおた・よう)
西村あさひ法律事務所パートナー弁護士。1991年東京大学法学部卒、93年第一東京弁護士会弁護士登録、2000年ハーバード・ロー・スクール修了(LL.M)、01年米国NY州弁護士登録、01年~02年法務省民事局参事官室(商法改正担当)、13年~16年東京大学大学院法学政治学研究科教授
日本経済新聞「企業が選ぶ2020年に活躍した弁護士」M&A分野第1位・企業法務一般第3位、同「企業が選ぶ2019年に活躍した弁護士」企業法務総合第2位など受賞多数