◇SH1233◇タイ:関税法の改正 箕輪俊介(2017/06/14)

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タイ:関税法の改正

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 箕 輪 俊 介

 

 2017年5月17日に関税法の改正法が官報に掲載され、180日後の2017年11月13日より施行される。法定刑や報奨金制度等において大きな変更が加えられているため、主要な点について本稿にて紹介したい。

 

1. 罰則制度の変更

違反行為 現行法 改正法
密輸 (CIF価格+関税)の4倍の罰金若しくは10年以下の懲役又はそれらの併科 現行法と同様
虚偽申告
(過少申告)
納付不足額の0.5倍から4倍の罰金若しくは10年以下の懲役又はそれらの併科

 現行法上、刑事裁判にて関税法違反の責任を問われた場合、その犯罪の内容を問わず、刑事罰は(CIF価格+関税)の4倍の罰金若しくは10年以下の懲役又はそれらの併科とされている。但し、関税法違反の嫌疑をかけられた者は、事件が刑事裁判所に係属する前に、当局による調査の段階で和解での解決を求めることができる。かかる場合の和解の基準は、虚偽申告(過少申告)の事案では罰金額は納付不足額の2倍とされている。

 これに対して、改正法では、違反行為別に罰則が定められており、密輸の場合の罰則は現行法から変更がないものの、虚偽申告(過少申告)の場合は、罰金額が納付不足額の0.5倍から4倍に変更されている。

 

2. 遅延損害金の上限

 現行法上、当局から要求される遅延損害金(サーチャージ)については納付不足額を完納するまで発生し続けるものとされており、上限は定められていなかった。

 これに対して、改正法では、遅延損害金は納付不足額と同額が上限になるものと定められている。

 

3. 事後調査期間

 現行法上、当局が事後調査を実施するにあたり、実施時期について特段の規定は設けられていなかった。

 これに対して、改正法では、輸入日又は輸出日から5年以内に事後調査が実施されなければならないという規定が設けられている。

 

4. 報奨金制度の見直し

違反行為 現行法 改正法
密輸 情報提供者:30%(上限なし) 情報提供者:20%(500万バーツを上限)
関税局職員:25%(上限なし) 関税局職員:20%(500万バーツを上限)
虚偽申告
(過少申告)
情報提供者:30%(上限なし) 情報提供者:報奨金の受領なし
関税局職員:25%(上限なし) 関税局職員:20%(500万バーツを上限)

 関税法違反行為の摘発に関与した情報提供者や関税局職員に対して、一定の割合の報奨金が付与されることとなっているが、現行法では、その報奨金の額について上限が設けられていない。本来の法の趣旨は賄賂を防止しつつ違反行為の摘発を推進する点にあると思われるが、事案によっては報奨金の額が著しく高額となることもあって、関税局職員等による不合理な指摘や調査が後を絶たないという弊害が生じている。

 これに対して、改正法では、それぞれが受け取ることのできる報奨金について、1件あたり500万バーツを上限とすることが定められている。

 

5. 改正の影響

 現行法では、刑事責任を問われた場合の負担が重いこと(関税局との間の紛争が訴訟に持ち込まれ、審理の結果、敗訴となると(CIF価格+関税)の4倍の罰金という法外な罰金を負担させられること)及び訴訟になる場合、結論が出るまでに時間を要することが多く、遅延損害金が雪だるま式に積み上がっていくこと等から、関税法違反の嫌疑をかけられた者は、関税局による税務調査の結果に納得がいかない場合であっても、調査の段階で和解での解決を選ぶことが多かった。

 改正法が施行された後は、上述のとおり、虚偽申告(過少申告)の罰金額が「納付不足額の0.5倍から4倍」に変更され、遅延損害金にも上限が設けられる。これにより訴訟において敗訴した場合のリスクや訴訟が長期化することによる生じるリスクが軽減されるため、関税案件において調査の段階での和解を選ぶのではなく、訴訟で争うケースが改正前よりも増えることが想定される。昨年の法改正により関税訴訟においても三審制が導入されたこと(従前は二審制)で、より公平性の高い判決が得られる可能性が高まっていることも、訴訟を選択し易くなる一因になり得ると思われる。

 また、報奨制度が見直されたことにより、関税局職員による過剰な調査や、公正性に欠ける認定がなされることについて、一定の歯止めがかけられることが期待される。

 

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