◇SH2660◇金融庁、金融機関等のコンプライアンス・リスク管理で「傾向と課題」を取りまとめ――経営陣の姿勢、海外拠点管理、情報通信技術など網羅的・多角的に事例を整理 (2019/07/11)

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金融庁、金融機関等のコンプライアンス・リスク管理で「傾向と課題」を取りまとめ

――経営陣の姿勢、海外拠点管理、情報通信技術など網羅的・多角的に事例を整理――

 

 金融庁は6月28日、預金取扱金融機関・証券会社・保険会社・外資系金融機関等の経営陣らとの対話による実態把握などから得られた事例と、ここから抽出される傾向や課題等を「コンプライアンス・リスク管理に関する傾向と課題」(以下「傾向と課題」という)として取りまとめ、公表した。

 金融庁では、2018年6月に公表した「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」を踏まえ、個々のテーマ・分野ごとのより具体的な考え方と進め方については議論のための材料であることを明示した「ディスカッション・ペーパー」を示すこととし、同年10月15日には金融機関が管理すべきコンプライアンス・リスクに関し「コンプライアンス・リスク管理に関する検査・監督の考え方と進め方(コンプライアンス・リスク管理基本方針)」をこの形式で策定、公表したところである。

 今般公表された「傾向と課題」は、検査・監督基本方針の公表に際して行われた意見募集において「コンプライアンス・リスク管理につき、具体的な事例やそこから抽出される課題等、金融機関が採るべき対応の参考に資する情報の積極的な公表を望む意見が多数寄せられ」たとし、このような意見への対応の一環として編まれた。経営陣らとの対話の機会を通じてコンプライアンス・リスク管理に関する事例や課題認識の収集を主眼に実態把握を行い、また、比較的規模の大きい預金取扱金融機関、証券会社、保険会社、外資系金融機関以外の金融機関に対するこれまでのモニタリング結果にも基づき、「基本方針で示した問題意識を踏まえた取組み事例」および「問題事象につながった事例」について整理するとともに、2019年6月現在のコンプライアンス・リスク管理の傾向や課題について取りまとめたものとなる。

 約30頁でまとめられた「傾向と課題」は、「Ⅰ.はじめに(本文書の位置づけ及び構成)」「Ⅱ.金融機関における管理態勢の傾向と課題等」「Ⅲ.全体的な傾向と課題」「Ⅳ.今後の進め方」の4章構成となった。上記のうち第Ⅱ章においては、基本方針で示された着眼点に沿いつつ(1)経営・ガバナンスに関する着眼点、(2)リスクベースの発想への視野拡大に関する着眼点とに大別。うち(1)では(ア)経営の根幹をなすものであることに関する着眼点として、①経営陣の姿勢・主導的役割、 ②内部統制の仕組み、③企業文化、④外に開かれたガバナンス態勢の4点を、また(イ)リスク管理の枠組みに関する着眼点として、⑤事業部門による自律的管理、⑥管理部門による牽制、⑦内部監査部門による検証、⑧グループ会社管理および海外拠点管理の4点を、さらに(ウ)人材や情報通信技術等のインフラに関する着眼点として、⑨コンプライアンス・リスク管理に係る人材の確保、⑩情報通信技術の活用の2点を掲げ、そのうえで各着眼点に関する「金融機関におけるコンプライアンス・リスク管理の傾向と課題」「基本方針で示した問題意識を踏まえた取組み事例」「問題事象につながった事例」を示していく。網羅的・多角的な事例収集と分析が特徴といえる。

 たとえば、上記(イ)⑧により「海外拠点管理」について具体的にみると、「基本方針で示した問題意識を踏まえた取組み事例」としては(a)「海外の主要拠点につき、本社の経営陣による定期的な訪問や、高頻度でのテレビ会議や電話会議の実施により状況把握及び連携を実施している事例」や(b)「周囲で発生した不適切な行為の報告漏れが、懲罰や人事評価へ直結する制度をグローバルに構築し、子会社及び海外拠点のコンプライアンス・リスクを管理している事例」といった計6例が紹介されている。一方の「問題事象につながった事例」としては(c)「海外拠点の役職員の不適切な行動につき、拠点では課題を過小評価してしまい、本社と拠点との間のコミュニケーション不足等も相俟って、適切な対応が遅れた結果、海外当局からの処分、多額の金銭支出を伴う制裁等につながった事例」など4事例を掲げた。

 金融庁においては、全体的な傾向として多くの金融機関が試行錯誤の過程にあり、その進捗状況は様々であることを述べつつ「コンプライアンス・リスク管理のための検討及び取組みを一定程度進めている様子が窺われる」と総括。法令等の既存のルールを遵守していれば足りるという発想から抜け出すことが何よりも重要であるとして、「各金融機関の経営陣が中心となり、かかる観点を踏まえた検討及び良質な企業文化の醸成に向けた真摯な努力を今後さらに進める必要がある」と、今後の取組みに向けた課題を指摘している。

 

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