公取委、「独占禁止法に関する相談事例集(令和3年度)」を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 池 田 美奈子
1 はじめに
公正取引委員会(以下「公取委」)は、令和4年6月22日、令和3年度の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」)の相談事例集[1]を公表した。本項では、物流業界における業務提携の独禁法抵触の有無の検討に係る一定の取引分野(市場)の画定に関する公取委の考え方として参考になると思われることから、相談事例の中から、化学製品甲のメーカー2社が、商品配送の効率化のため、遠隔地域に所在する需要者への配送ルートを共同化すること(以下「本件取組」)の、不当な取引制限(独禁法2条6項)[2]該当性に関する相談事例(相談事例4)について、概説する。
2 本件取組の概要
化学製品甲のメーカーであるX社及びY社が共同配送する区間は、B地域にあるX社のα工場と、B地域から地理的に離れたA地域にあるX社のβ営業所との間である。Y社のγ工場の化学製品甲はX社のα工場に持ち込まれ、X社の製品と混載し、X社が委託する運送業者P社によってX社のβ営業所に配送された後、β営業所の倉庫に一時保管される。その後、Y社の製品は、X社のβ営業所からA地域にあるY社のδ営業所まで、X社が契約する別の運送業者Q社により配送される。
3 公取委の見解
公取委は、以下のとおり、本件取組は、化学製品甲に係る運送サービスの調達市場及び化学製品甲の販売市場のいずれに関しても、一定の取引分野における競争を実質的に制限するものではなく、独占禁止法上問題となるものではないと判断した。
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(いけだ・みなこ)
岩田合同法律事務所アソシエイト。日本及び米国(NY州)弁護士。2007年東京大学法学部卒業。2009年University of Michigan Law School修了(LL.M.)。2010年早稲田大学法科大学院修了。約4年間、海事専門法律事務所に所属し、海事案件の経験も豊富に有する。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902 年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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公取委、独占禁止法に関する相談事例集(令和3年度)について
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jun/220622.html