SH4311 意外に深い公益通報者保護法~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 第9回 公益通報の種類・範囲(3) 金山貴昭(2023/02/13)

組織法務公益通報・腐敗防止・コンプライアンス

意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 

第9回 公益通報の種類・範囲(3)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 金 山 貴 昭

 

Q 匿名通報の受け付けに関する留意点

 公益通報者保護法では、公益通報の主体は、事業者の労働者や退職者、役員とされています。この点、匿名での公益通報の場合には、労働者や退職者、役員かどうかを通報者の氏名で確認することはできませんが、そのような場合には公益通報を受け付けなくとも公益通報者保護法には違反しないでしょうか。

 

A 【ポイント】

公益通報者保護法は匿名の通報であっても、同法が定める公益通報の要件を満たしている場合には、事業者はこの公益通報を受け付けなければなりません。事業者は、通報者が労働者、退職後一年以内の退職者、役員等であるかの確認を求めることも可能ですが、匿名通報を認めている趣旨に反するような確認方法とならないように留意する必要があります。

 

【解説】

 公益通報者保護法が定める公益通報は、顕名であることを要件とはしておらず、匿名での通報も公益通報の要件を満たせば、公益通報として保護されます。そのため、内部公益通報受付窓口になされた匿名の公益通報を受け付けないことは、法定指針(第4の1(3))に違反します。公益通報者として保護される通報主体については、事業者の労働者、退職後一年以内の退職者及び役員等であり、それ以外の者による通報は公益通報者保護法上の公益通報とはなりません。なお、事業者において、公益通報者保護法が定める労働者、退職者及び役員等以外からも広く通報を受け付けることは何ら妨げられず、これらの者からの通報についても公益通報と同様に取り扱うことは問題ありません。

 上述のように、法定の通報主体は限定されており、法定の通報主体からの通報以外の通報は受け付けないとの運用を厳格に行う場合、事業者は匿名での通報についても、通報者が労働者、退職者及び役員等の法定の通報主体に該当するか否かを確認することも考えられます。その確認方法としては、氏名や社員番号等を黒塗りにした社員証の提示を求めたり、事業者内部の者からしか通報ができない仕組み(たとえば、事業者内部者しか知らない電話番号やEメールアドレスを通報窓口に設定する)を整備することも考えられます。

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(かなやま・たかあき)

弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。

 

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