SH4348 意外に深い公益通報者保護法~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 第15回 内部公益通報受付窓口(4) 金山貴昭(2023/03/09)

組織法務公益通報・腐敗防止・コンプライアンス

意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 

第15回 内部公益通報受付窓口(4)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 金 山 貴 昭

 

Q 内部公益通報対応体制整備義務の対象

 当社グループの子会社には、300名前後の会社がありますが、「常時使用する労働者」に含まれる労働者は具体的にどのような労働者でしょうか。また、グループ共通の通報窓口を設けていますが、子会社も独自に内部公益通報対応体制の整備義務を負うのでしょうか。

 

A 【ポイント】

「常時使用する労働者」は、常態として使用する労働者(労働基準法9条)を指すため、基本的には、正社員の他に、パートタイマー(アルバイト)、契約社員、非正規社員及び出向者も該当すると考えられます。

また、内部公益通報対応体制の整備義務は事業者単位で負うことになるので、グループ共通の窓口を子会社の内部公益通報受付窓口として設置している場合には、子会社独自の通報窓口を設ける必要はありません。ただし、子会社は、内部公益通報受付窓口設置以外の内部公益通報対応体制の整備義務についても遵守しなければならないので、留意が必要です。

 

【解説】

1 「常時使用する労働者」の定義

 公益通報者保護法及び法定指針が定める内部公益通報対応体制の整備義務は、常時使用する労働者の数が300名以下の事業者の場合には努力義務とされています(法11条3項)。そのため、常時使用する労働者数が301名以上の事業者は、公益通報者保護法等が定める内部公益通報対応体制の整備を怠ると、同法違反として、行政措置対象となります(法15条)。他方で、常時使用する労働者数が300名以下の事業者は、これらの体制整備を整備していなくても直ちに公益通報者保護法違反となるわけではありません。

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(かなやま・たかあき)

弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。

 

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