◇SH1782◇債権法改正後の民法の未来23 役務提供契約(3) 橋田 浩/宇仁美咲(2018/04/19)

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債権法改正後の民法の未来 23
役務提供契約(3)

橋田法律事務所/  岡本正治法律事務所

弁護士 橋 田   浩/弁護士 宇 仁 美 咲

 

3 議論の経過

(1) 役務提供契約

 (ウ)役務提供型の新たな典型契約を設けることに対しては、情報や交渉力等において役務提供者側が強い立場にある契約、弱い立場にある契約、当事者間に差がない契約等があり、このうち雇用類似の役務提供者側が弱い立場にある契約については、当初の段階から、任意解除権の規律などで問題が生じることが指摘され、弱い立場にある役務提供者の保護を図る必要があることに留意すべきとの意見が述べられ(第17回会議議事録)、こういった点についても議論が重ねられました。

 (エ)以上のとおりの議論がなされましたが、前記の①~③のいずれも十分な支持が得られるには至りませんでした。

 そこで役務提供契約についての提案がなされた原点、すなわち、準委任に関する規定が役務提供型の契約一般に妥当する内容となっていないという点に立ち返り、準委任の規定をこれにふさわしいものに改めるという考え方が現れました(部会資料57、民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明502頁)。

 そして、準委任を区別する基準として、信頼関係を基礎にするか否かを念頭に、「受任者の選択に当たって、知識、経験、技能その他の当該受任者の属性が主要な考慮要素になっていると認められるもの」と「それ以外のもの」という基準をあげ、後者には委任の規定のうち一部の準用を否定するという考え方が提案されました(部会資料57、民法(債権関係)の改正に関する中間試案第41 委任、6準委任)。

 (オ)その結果、中間試案をとりまとめる段階(部会資料57)で準委任に代わる役務提供型契約の受皿規定を設けることは見送られ、これまでと同様、準委任がその役割を担い続けることとなりました。

 また準委任の類型化についても、区分の基準が不明確、不十分などの指摘があったことから、要綱仮案の段階で見送られることとなりました(部会資料81-3。)

(1) 媒介契約

(ア)民法に規定を設けることの当否

 当初は、媒介契約について民法に規定を設けることの当否については、明確に条文上規定することは望ましいのではないかとの意見が出されました(第17回会議議事録)。

(イ)媒介契約に盛り込むべき定義

 媒介契約を有償の準委任と定義することについては、最近は、仲介手数料が無料である不動産仲介、媒介手数料が無料である上場投資信託などが現れていることから、媒介についてだけ有償を要件と要検討する必要はないとの意見がありました(第17回会議議事録)。

(ウ)情報提供義務

 媒介者に情報提供義務を課すことについては、商社のビジネスは情報格差を基盤とすることから一般的に情報提供義務を認めるのはビジネスについて不都合が大きいなどの意見が出されました(第17回会議議事録、部会資料26)。

(エ)その後の議論

 情報提供義務については、受任者が適切な時期に委任事務の処理の状況を報告しなければならないとされていること(民法645条)からも導くことができること、媒介者は、第三者間に法律行為を成立させるために情報収集と調査だけではなく、第三者に適切に情報を提供したり、交渉を行ったりする必要があることから、媒介者の義務は情報提供義務にとどまらないこと、報酬の支払方式については、委任契約に成果完成型と履行割合型があることを明文化するのであれば、媒介の委託は準委任に該当し、通常の準委任とは区別される特殊な特徴を備えているとまでは言えないように思われるとして、媒介の規定を設けないものとする方向での提案がなされ(部会資料46、第57回会議議事録)、媒介の委託について明文規定を設けることについては慎重論が多くを占め、規定の明文化は見送られました。

 

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