◇SH1212◇経産省、「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」(価値協創ガイダンス)を策定(2017/06/06)

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経産省、「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」(価値協創ガイダンス)を策定

--ESG・非財務情報開示と無形資産投資の促進--


 経済産業省は5月29日、「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報開示と無形資産投資の促進-」(価値協創ガイダンス)を策定した。

 経産省によると、今回のガイダンス策定の背景として、企業の競争力や収益力を高めるため、人材や技術、顧客基盤等、財務諸表に表れない「無形資産」への投資が重要性を増していることが指摘されている。企業にとって、これらの投資戦略等を通じて事業ポートフォリオを強化すること、それを支える投資家・株主の信任を得て長期的な資金を確保することは、重要な経営課題となっているとされる。投資家が企業価値を評価する上でも、企業の経営戦略やビジネスモデル、リスクへの対応等の非財務情報が重要になっており、さらに、グローバルな機関投資家が「ESG(環境・社会・ガバナンス)」といった要素を投資判断等に組み込む動きが本格化しているとされる。

 一方で、中長期的な企業価値向上を見据えた無形資産への投資やESGの取組みについては短期的には利益を押し下げる「費用」としてのみ認識されることや、これらに関する情報開示や対話が不足していることが、企業と投資家の長期的な投資判断や建設的な対話を損なっているのではないかとの見方もあると指摘されている。

 このような課題認識の下、経産省が2016年8月に設立した「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」(座長=伊藤邦雄・一橋大学大学院特任教授)は、企業の情報開示や投資家との対話の質を高めるための枠組み(共通言語)の必要性を提起し、研究会の提言の一つとして「ガイダンス」原案を策定した。この提案を基に、今般、経産省として「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報と無形資産投資-」(価値協創ガイダンス)をとりまとめたものである。

 経産省によると、本ガイダンスは、企業と投資家が情報開示や対話を通じて互いの理解を深め、価値協創に向けた行動を促すことを目的としており、その観点から、以下のような役割を期待しているとしている。

① 企業経営者の手引として

 企業経営者が、自らの経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等を統合的に投資家に伝えるための手引である。直接的には企業の情報開示や投資家との対話の質を高めることが目的ではあるが、それを通じて、経営者が企業価値創造に向けた自社の経営のあり方を整理し、振り返り、さらなる行動に結びつけていくことが期待される。

② 投資家の手引として

 投資家が、中長期的な観点から企業を評価し、投資判断やスチュワードシップ活動に役立てるための手引である。持続的な企業価値向上に関心を持つ投資家が、企業との情報・認識ギャップを埋めるためにガイダンスを参照して企業と対話を行い、自らの投資判断に必要な情報を把握することが期待される。また、機関投資家がスチュワードシップ責任を果たすために行う投資先企業の状況把握や対話・エンゲージメント等を実施するための枠組みとして活用されることも想定している。

 本ガイダンスの構成をみると(後掲参照)、基本的な枠組みとして6項目(価値観、ビジネスモデル、持続可能性・成長性、戦略、成果と重要な成果指標、ガバナンス)を示しており、各項目の中で示す事項については、各企業が自社の戦略や目的に応じて柔軟に活用することが想定されている。

 経産省によると、今回のガイダンスは企業の情報開示や投資家との対話の質向上に向けた出発点であり、今後、企業による優良事例や投資家の評価実態等を把握・分析しつつ、より良い内容や活用方法を検討する場を設置し、不断の見直しを行っていく予定であるとしている。


○ 価値協創ガイダンスの構成
  1. 価値観
  1.1. 企業理念と経営のビジョン
  1.2. 社会との接点
  2. ビジネスモデル
  2.1. 市場勢力図における位置づけ
  2.1.1. 付加価値連鎖(バリューチェーン)における位置づけ
  2.1.2. 差別化要素及びその持続性
  2.2. 競争優位を確保するために不可欠な要素
  2.2.1. 競争優位の源泉となる経営資源・無形資産
  2.2.2. 競争優位を支えるステークホルダーとの関係
  2.2.3. 収益構造・牽引要素(ドライバー)
  3. 持続可能性・成長性
  3.1. ESGに対する認識
  3.2. 主要なステークホルダーとの関係性の維持
  3.3. 事業環境の変化リスク
  3.3.1. 技術変化の早さとその影響
  3.3.2. カントリーリスク
  3.3.3. クロスボーダーリスク
  4. 戦略
  4.1. バリューチェーンにおける影響力強化、事業ポジションの改善
  4.2. 経営資源・無形資産等の確保・強化
  4.2.1. 人的資本への投資
  4.2.2. 技術(知的資本)への投資
  4.2.2.1. 研究開発投資
  4.2.2.2. IT・ソフトウェア投資
  4.2.3. ブランド・顧客基盤構築
  4.2.4. 企業内外の組織づくり
  4.2.5. 成長加速の時間を短縮する方策
  4.3. ESGやグローバルな社会課題(SDGs等)の戦略への組込
  4.4. 経営資源・資本配分(キャピタル・アロケーション)戦略
  4.4.1. 事業売却・撤退戦略を含む事業ポートフォリオマネジメント
  4.4.2. 無形資産の測定と投資戦略の評価・モニタリング
  5. 成果(パフォーマンス)と重要な成果指標(KPI)
  5.1. 財務パフォーマンス
  5.1.1. 財政状態及び経営成績の分析(MD&A等)
  5.1.2. 経済的価値・株主価値の創出状況
  5.2. 戦略の進捗を示す独自KPIの設定
  5.3. 企業価値創造と独自KPIの接続による価値創造設計
  5.4. 資本コストに対する認識
  5.5. 企業価値創造の達成度評価
  6. ガバナンス
  6.1. 経営課題解決にふさわしい取締役会の持続性
  6.2. 社長、経営陣のスキルおよび多様性
  6.3. 社外役員のスキルおよび多様性
  6.4. 戦略的意思決定の監督・評価
  6.5. 利益分配の方針
  6.6. 役員報酬制度の設計と結果
  6.7. 取締役会の実効性評価のプロセスと経営課題
 

 

  1. 経産省、「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」を策定しました-ESG・非財務情報開示と無形資産投資の促進-(29日)
    http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170529003/20170529003.html
  2. ○ 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス – ESG・非財務情報と無形資産投資 -(価値協創ガイダンス)
    http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170529003/20170529003-1.pdf
  3. ○ 価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス – ESG・非財務情報と無形資産投資 -(価値協創ガイダンス)(背景説明資料)
    http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170529003/20170529003-2.pdf
  4. ○ 本ガイダンスの全体像(日本語)
    http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170529003/20170529003-3.pdf
  5. ○ Overview of the Guidance(英語)
    http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170529003/20170529003-4.pdf
     
  6. 参考
  7. 持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会 開催状況
    http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/economy.html#jizokuteki_esg
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