◇SH1852◇消費者庁、内部通報制度に関する認証制度の導入 小西貴雄(2018/05/22)

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消費者庁、内部通報制度に関する認証制度の導入

岩田合同法律事務所

弁護士 小 西 貴 雄

 

 消費者庁は、平成30年5月14日、「内部通報制度に関する認証制度の導入について」と題する報告書(以下「報告書」という。)を公表した。報告書は、事業者の内部通報制度の実効性の向上を図るための認証制度(以下「認証制度」という。)の導入を検討するものである。消費者庁は、内部通報制度に対する事業者の自主的な取組を重視しており、平成28年12月15日付で公表した「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会最終報告書」において、事業者のインセンティブを高める制度として認証制度を導入することを提唱した。この最終報告書では、認証制度を可及的速やかに実施することとされていた。

 以下では、報告書が言及している認証制度のポイント等について述べる。

 

(1) 認証制度の全体の構成

 報告書は、事業者が内部通報制度に係る認証を得るための制度として、事業者自らが自身の内部通報制度を審査した結果を登録する「自己適合宣言制度」と、中立公正な第三者機関が事業者の内部通報制度を審査・認証する「第三者認証制度」の2本立てで制度を構築することが適当であると述べる。そして、今後の認証制度の導入に当たっては、まず簡便な自己適合宣言制度を導入し、その運用状況を踏まえ、追って第三者認証制度を導入していくことが適当であると述べる。

 自己適合宣言制度と第三者認証制度の2本立てで構成される認証制度の全体構成のイメージは、以下の図のとおりである。同図では、自己適合宣言制度を本年度中に導入し、追って第三者認証制度を次年度以降に導入する予定である旨が記載されている。

(出典:内部通報制度の関する認証制度の導入について(報告書)(平成30年4月 内部通報制度に関する認証制度検討会))

 

(2) 認証制度の審査基準

 本報告書の別添資料において、認証制度が導入された場合の審査基準のイメージが示されている。この審査基準は、消費者庁が別途公表している「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」の内容を踏まえ、審査項目とその趣旨を具体化したものとなっている。報告書は、審査項目を「周知・研修関連」「通報者保護、秘密保持、調査是正関連」「環境整備関連」「体制整備関連」等の類型に分け、それぞれの類型について、評価の裏付けとなるエビデンスをまとめている。

 

(3) 認証制度の導入による実務上の影響

 企業不祥事が相次ぐ昨今において、企業が適切なコンプライアンス体制を構築しているかという点に対する国民の関心は日々高まっている。内部通報制度は、企業が自らの不祥事を認識する端緒となる制度であり、コンプライアンス体制の構築にとって重要な意味を有している。特に上場企業にとっては、コーポレートガバナンス・コードで内部通報に係る適切な体制整備を行うべき旨が定められていることもあり、内部通報制度の充実に対するステークホルダーの目線はますます厳しくなっていくものと思われる。企業にとって、適切な内部通報制度の整備・運用は引き続き重要な課題であり、認証制度の導入により、内部通報制度を充実させるインセンティブがより一層高まるものと思われる。

 認証制度が導入されたとしても、企業に認証取得の義務が課せられるわけではない。しかし、内部通報制度の充実がますます強く要請されるであろうことからすると、株主を始めとするステークホルダーからは、認証の取得が強く求められるであろう。報告書では、自己適合宣言制度が平成30年度に導入予定とされており、制度の導入に向けて準備を進めていく必要があろう。

 報告書の別添資料では、認証制度が導入された場合の審査基準の概要イメージが示されている。この審査基準は、現時点では案にとどまるものであるが、どのような項目に着目して審査が行われるかを示しており、内部通報制度の整備・運営において参考になるものと考えられる。企業としては、現在導入している内部通報制度について、今回公表された審査項目に照らして充実したものとなっているかを見直すことが有益であると思われる。

以 上

 

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