ベトナム:PPP法の成立②
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
(3) 投資方針決定
政令第63号では、プロジェクトの規模・内容に応じて、国会、首相、中央省庁、省級人民評議会又は省級人民委員会が、当該PPP案件を進めるかどうかの投資方針決定を行うのに対して、PPP法では、省級人民委員会が投資方針決定を行う権限を持つ対象がなくなっている。
なお、PPP法では、PPPプロジェクトの最低総投資額を以下のように定めている。
プロジェクトの分野
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最低総投資額
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交通 |
原則2000億VND以上 但し、経済・社会状況が困難または特別困難である地域である場合には、1000億VND以上 |
発電所及び送電網 | |
灌漑、上水、排水及び下水処分、廃棄物処理 | |
ITインフラ | |
医療、教育、職業訓練 | 1000億VND以上 |
(4) プロジェクトの公表
民間提案型のものも含め、投資方針決定が出されたPPP案件は、原則として公表されることになっている。その公表までの期間は、政令第63号では、投資方針決定から7営業日以内とされていたが、PPP法では10営業日以内となっている。
(5) 事業化調査レポート(以下「FSレポート」という。)の作成、評価
投資方針決定後、FSレポートの作成・評価が行われる。FSレポートは、原則として引き続きプロジェクト準備ユニットにより作成されるが、民間提案型の場合には提案を行った民間事業者に委託される。民間提案型の場合でFSレポートが承認されないときには、その作成費用は民間事業者が負担するものとされている。なお、ハイテクPPP案件の場合は、FSレポートの作成前に事業者選定が行われ、選定された事業者によりFSレポートが作成される。
政令第63号では、FSレポートの評価は、国家レベルの案件については国家審査委員会により、その他の案件については所轄の政府機関の下にあるPPP活動管理局により行われるとされていたが、PPP法では、すべての案件のFSレポートは、Pre-FSレポートと同様に、3つのレベルのPPPプロジェクト審査委員会のいずれかにより評価されることになっている。
(6) プロジェクトの承認
政令第63号では、FSレポートの評価後、FSレポートの承認が行われることになっていた。それに対して、PPP法では、FSレポートではなく、プロジェクトを承認することになった。国会が投資方針を決定した案件については、首相が、その他の案件については所轄の政府機関の長や省級人民委員会委員長によりプロジェクトの承認が行われる。
(7) 民間事業者の選定
プロジェクトが承認されると、次にその案件を実施する民間事業者の選定が行われる。
政令第63号では、投資家の選定は原則として入札法に基づいて入札で行われる、としていただけで、入札の方法等については特段定めを置いていなかった。それに対して、PPP法では、事業者の選定につき、選定の一般的プロセス、入札参加資格、投資家選定における競争の確保措置、選定手続に使用する言語、選定の方式、入札参加者の評価の方法と基準等、具体的な規定を設けている。事業者の選定は、一般競争入札、競争交渉、事業者指名又は特別な場合における首相が決定した方式による、とされている。
また、政令第63号においては、FSレポートを作成した投資家は、入札において有利に取り扱われる旨の規定が置かれているところ、PPP法においても、承認されたプロジェクト提案書類を有する事業者は有利に取り扱われるとされている。また、国内の請負業者、製品、素材、設備を使用することを誓約した事業者は、入札の評価において有利に取り扱われることになっている。
③につづく