◇SH2187◇法務担当者のための『働き方改革』の解説(15) 大嵜将史(2018/11/12)

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法務担当者のための『働き方改革』の解説(15)

福利厚生的な手当の均衡・均衡待遇の確保

TMI総合法律事務所

弁護士 大 嵜 将 史

 

Ⅵ 福利厚生的な手当の均衡・均衡待遇の確保

 本稿では、福利厚生的な手当のうち、食事手当と住宅手当について述べる。

1 食事手当

 <ガイドラインたたき台の基本的な考え方>

労働時間の途中に食事のための休憩時間がある労働者に対する食費の負担補助として支給する食事手当について、短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の食事手当を支給しなければならない。

 

 <ガイドラインたたき台が示している具体的な事例>

  1. [ 問題とならない例 ]
  2. ・ 労働時間の途中に昼食のための休憩時間がある通常の労働者に対して食事手当を支給している。
  3. ・ 労働時間の途中に昼食のための休憩時間がない(例えば午後2時から5時までの勤務)短時間労働者には支給していない。
  1. [ 問題となる例 ]

通常の労働者には、有期雇用労働者に比べ、食事手当を高くしている。

 なお、第2章Ⅲで詳述したハマキョウレックス事件では、給食手当につき、従業員の食事に係る補助として、勤務時間中に食事を取ることを要する労働者に対して支給される手当であることを前提とした上で、職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは、勤務時間中に食事を取ることの必要性やその程度とは関係がないという理由で、給食手当の支給の有無について不合理であると判断しており、ガイドラインたたき台と同様の結論をとっている。

 

2 住宅手当

 住宅手当については、ガイドラインたたき台には記載されていないが、裁判例においてはその均衡待遇を巡り注目すべき判断が示されている。

 ハマキョウレックス事件では、住宅手当につき、住宅に要する費用を補助する趣旨で支給される手当であるとした上で、契約社員について就業場所の変更が予定されていないのに対し、正社員については、転居を伴う配転が予定されているため、契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となり得るという理由で、住宅手当の支給の有無について不合理でないと判断した。ただし、住宅手当の金額の差異に関する不合理性については判断を示していない。メトロコマース事件においても、同様の理由から住宅手当の支給の有無について不合理性が否定されている。

 他方で、第2章Ⅴで紹介した日本郵便事件(東京地判平成29・9・14判タ1449号174頁、大阪地判平成30・2・21労判1180号26頁)では、正社員には住宅手当が支給され、契約社員には支給されていなかったことについて、住宅手当の趣旨が主として配置転換に伴う住宅に係る費用負担の軽減にあるとした上で、①配置転換が予定されている正社員との比較では不合理ではないが、②配置転換が予定されていない正社員との比較では不合理であると判断している。

 これらの裁判例からは、住宅手当については、支給の有無及び金額の差異が、転居を伴う配転(それに伴う住宅費用の増大)の有無と、相互に関連しているか否かが判断の分かれ目となると解されよう。

 

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