労働政策審議会建議「女性の職業生活における活躍の推進及び
職場のハラスメント防止対策等の在り方について」
岩田合同法律事務所
弁護士 村 上 雅 哉
労働政策審議会は、厚生労働大臣に対し、女性の職業生活における活躍の推進や職場のハラスメント防止対策等の在り方について、建議を行った。労働政策審議会の建議とは、厚生労働省設置法の規定に基づき、労働政策に関する重要事項等について労働政策審議会が厚生労働大臣に対して意見を述べるものである。今回の建議は、労働政策審議会の雇用環境・均等分科会の報告書に依拠するものであり、女性の職業生活における活躍の推進や、パワーハラスメント等の職場における様々なハラスメントの防止に向けた施策についての提言がなされている。本稿では、上記建議のうち女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下「女性活躍推進法」という。)に関する内容について解説する。
女性活躍推進法は、平成27年9月に施行された法律であり、同法では、300人を超える労働者を常時雇用する事業主に対し、①自社の女性の活躍に関する状況の把握及び課題分析、②状況把握、課題分析を踏まえた行動計画(以下「行動計画」という。)の策定、社内周知、公表、③行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出、④女性の職業選択に資する情報の公表を義務づけている(①については女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令第2条1項、②については女性活躍推進法8条1項、4項及び5項、③については同法8条1項と及び同省令1条、④については同法16条1項にそれぞれ規定が設けられている。詳細については、本トピックス解説「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案が参院本会議で可決・成立 泉 篤志(2015/09/09)」参照。)。このうち、上記②及び④の公表については、厚労省の「女性の活躍推進企業データベース」に掲載する方法による公表が可能であり、②については1万2380社、④については1万174社の取組事例が公表されている(平成30年12月26日時点)。公表されている取組事例としては、本稿末尾記載のような内容が挙げられる。
労働政策審議会が平成30年12月14日付で行った上記建議では、上記②の行動計画策定を義務付けられる企業の範囲を、101人以上300人以下の企業に拡大するとともに、行動計画において数値目標を設定する項目数を増やすことが提案されている。また、上記④の情報の公表についても、公表を義務付けられる企業の範囲を101人以上300人以下の企業に拡大するとともに、情報公表項目の内容を拡充することなどが提案されている。さらに、女性活躍推進法の確実な履行確保のため、求職者の職業選択に影響を与える情報公表義務違反に関して、勧告に従わない企業については企業名を公表できるようにすることについても提案されている。
上記建議では、「プラチナえるぼし(仮称)」制度の創設についても提案されており、これは現在の「えるぼし」認定制度をさらに拡充しようというものである。女性活躍推進法に基づき行動計画を策定して届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣から「えるぼし」認定を受けることができる。この認定は基準を満たした項目数に応じて3段階設定されており、事業主は「えるぼし」マークを商品や広告、名刺、求人票などに使用することができる。「えるぼし」認定の取得により、優秀な人材の確保につながる、公共調達における加点評価が得られるといったメリットがあるとされており、同認定を取得する企業数は年々増加している(「女性の活躍推進企業データベース」によれば2018年12月26日時点で749社)。
少子高齢化が進む中で優秀かつ多様な人材を確保するためには、各企業において、柔軟な働き方やキャリアプランを設け、ライフイベントにかかわらず働き続けられる環境を整えることが求められている状況にある。また、優秀な人材を獲得するためには、女性活躍推進法も定める行動計画の内容を充実させたうえで、積極的な情報の公表を行っていくことが求められるであろう。実際のところ、厚労省が公表している「女性活躍推進の取組 好事例集」では、こうした取組を積極的に行っている企業から、優秀な人材の定着につながっているとの報告もなされている。
上記建議はこうした時流に沿ったものと評価できる。建議内容そのものを反映した法令等の改正がなされるかは未確定であるが、いずれにせよ今後の女性従業員の働き方を考える上では留意する必要があろう。
<えるぼしマーク>
以上
<各企業の取組事例>