日本取引所グループ、TCFD提言に沿った情報開示に関する実態調査結果を発表
――「リスクと機会」「リスクと機会の評価に用いる指標」「取締役会による監視体制」など、
統合報告書による開示が進む――
日本取引所グループは11月30日、「TCFD提言に沿った情報開示の実態調査」を公表した。気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures, TCFD)に2021年3月末時点で賛同を表明し、TCFD公式ウェブサイトにおいて TCFD Supporters として会社名が掲載されていた国内の上場259社を対象に、2021年6月末時点で最新となる有価証券報告書、統合報告書・アニュアルレポート、サステナビリティレポートなどにより該当情報が記載されているかについて確認した結果を取りまとめている。
日本取引所グループによると、本調査は「日本企業におけるTCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示の実態を把握し、上場会社が気候変動関連情報の開示に取り組むうえで参考となる情報を提供するとともに、開示の質と量の充実化に向けた検討の参考とすること」を目的として実施された。調査対象259社の合計時価総額は東京証券取引所全上場会社の時価総額の5割を占め、業種としては、多い順に(1)素材・化学:38社、(2)電気・精密:36社、(3)情報通信・サービスその他:24社、(4)銀行:22社、(5)建設・資材:21社、(6)食品:15社、(7)金融(除く銀行):14社、(7)電気・ガス:14社、(9)機械:13社、(10)自動車・輸送機:12社などとなった。これら259社における有価証券報告書など媒体別の発行状況をみると、下記の各媒体につき、それぞれ次のような状況であった。(ア)有価証券報告書:259社(100%)、(イ)統合報告書/アニュアルレポート(本資料において「企業の財務情報、非財務情報を統合的な形で報告するために作成される媒体」と定義。以下同様):233社(90.0%)、(ウ)ESG/CSR/環境/サステナビリティレポート(主に企業の非財務情報を開示するために作成される媒体):119社(45.9%)、(エ)TCFDレポート(TCFD提言に沿った情報を開示することを目的に作成される媒体):14社(5.4%)。
本調査では、TCFDの提言で開示が推奨される項目について、上記ア~エの媒体の記載から開示状況を確認することとしており、TCFDによる計11の開示推奨項目は次のとおり。(A)ガバナンス:①取締役会による監視体制、②経営者の役割、(B)戦略:③リスクと機会、④ビジネス・戦略・財務計画への影響、⑤シナリオに基づく戦略のレジリエンスの説明、(C)リスク管理:⑥リスクを評価・識別するプロセス、⑦リスクを管理するプロセス、⑧⑥⑦が総合的リスク管理に統合されているか、(D)指標と目標:⑨リスクと機会の評価に用する指標、⑩Scope1、2、あてはまる場合は3のGHG排出量、⑪リスクと機会の管理に用いる目標と実績。
調査結果によると、上記①~⑪の開示項目について、調査対象259社のうち42社(16.2%)が「11項目」すべての開示を行っていた。次いで多いのは、すべての項目について「開示なし」となる36社(13.9%)で、以下「10項目」の開示が26社(10.0%)、「9項目」「8項目」がそれぞれ22社(8.5%)、「5項目」20社(7.7%)、「4項目」19社(7.3%)、「3項目」17社(6.6%)などと続く。
日本取引所グループでは「TCFD提言の開示推奨11項目全てにおいて、統合報告書で該当する情報を開示している会社の数が最も多かった」とする。上記イ「統合報告書/アニュアルレポート」による各項目の開示状況をみると、100社以上で開示がなされていた項目は多い順に(1)③リスクと機会:137社(調査対象259社に対して52.9%。以下同様)、(2)⑨リスクと機会の評価に用いる指標:128社(49.4%)、(3)①取締役会による監視体制:122社(47.1%)、(4)⑪リスクと機会の管理に用いる目標と実績:117社(45.2%)、(5)⑩Scope1、2、あてはまる場合は3の排出量:112社(43.2%)、(6)②経営者の役割:106社(40.9%)、(7)④ビジネス・戦略・財務計画への影響:101社(39.0%)であった。
本資料では「時価総額別の状況」「業種別の状況」も取りまとめており、適宜参考とされたい。調査対象259社の詳細は本資料末尾に掲げられている。