ホシザキが追加調査報告書を公表、遅延の四半期報告書も提出で上場を維持
――嘱託社員による不適切指示の懸念を払拭、監査への影響なし――
業務用厨房機器製造・販売のホシザキ(本社・愛知県豊明市)は12月27日、連結子会社であるホシザキ東海の不適切取引を巡り「追加調査報告書(開示版)」を公表するとともに、関東財務局への提出が遅れていた第73期第3四半期報告書について、その提出が完了したと発表した。伴って、同社株式が上場されている東証・名証において同月14日付でなされた監理銘柄(確認中)の指定は28日付で解除され、両市場における上場は維持された。
ホシザキでは12月6日、今般の不適切取引について事実関係を検証し、再発防止策を提言すべく社内調査委員会が取りまとめた「社内調査報告書(開示版)」を公表。四半期報告書については延長後の期限となる同月14日までに提出できる見込みであったが、その後、監査法人から追加調査の要請等を受けて間に合わない事態となり(SH2257「ホシザキ、社内調査委員会による調査報告書を公表(2018/12/19)」既報)、仮に12月27日までに提出できない場合には東証・名証において上場廃止となることから、同社および社内調査委員会、監査法人等の対応が注目されていたものである。
追加調査等が必要となったのは「社内調査報告書(開示版)」の公表後となる12月10日、同社の四半期レビュー手続を行う監査法人トーマツから、①ホシザキ社外取締役監査等委員である弁護士(社内調査委員会を構成する4委員のうちの1名でもある)、②社内調査委員会の委員長を務める大手法律事務所の弁護士に対して連絡があり、a)同社経営陣による組織的な関与の疑いがないことを前提とする社内調査委員会という調査体制とその委員構成、b)本件調査報告書の内容を維持しうるか否かについて疑義を生じうる通報がトーマツに対してあったことが判明したため。この通報により、ホシザキ東海を除く国内販売子会社14社の各管理責任者に対するトーマツによる電話インタビューに際して「国内販売子会社で管理責任者を経験し、現在は定年後嘱託社員として当社グループ管理部において子会社管理に日々従事しているA氏」から各管理責任者に対して、インタビューへの回答例を添付したメールにより不適切な指示または示唆がなされた可能性が懸念されることになったという。
今般の追加調査では調査の客観性・中立性を確保するため、4名の委員中、社外の専門家である上記②の弁護士、③大阪市中央区の事務所に所属する弁護士・公認会計士、④社外調査チーム(以上の②・③・④を以下「受命委員ら」という)に本追加調査を行わせ、その結果を社内調査委員会に対して報告させたうえで委員会としての判断を行うという態勢が採られた。
12月11日から25日にかけて実施された追加調査の目的は(ア)メールが送信された事実の有無の確認、(イ)送信されている場合、その具体的内容および意図、(ウ)上長らの指示または関与の有無(組織的な行為であるか否か)、(エ)トーマツによるインタビューへの回答に対する不当な影響の有無の確認。追加調査における対面または電話によるインタビューは、メールを送信したとされるA氏、その上長に当たるB氏(グループ管理部部長)および社内調査委員会の委員でもあるホシザキ経理部・グループ管理部担当の取締役に対してなされたほか、メールを受信した側となる14販社の管理部部長ら(以下「本件管理責任者」という)を対象に行われ、A氏・B氏および取締役に対してはメールデータや会社貸与PC・会社貸与携帯電話の保全をしてレビューするデジタル・フォレンジックも行われている。
また、情報収集に万全を期するとし、12月18日から25日午前までの間においては社内調査委員会における通報窓口も再開するとともに「(以前に)通報できなかった不正に関する具体的な情報がもしあれば通報していただきたい旨」「通報窓口に寄せられた情報は社内調査委員会の中でも受命委員らのみで閲覧し、匿名性の確保及ビ通報者の利益保護に慎重に配慮する旨」などを周知した。
調査結果によると、A氏からはトーマツによるインタビューの実施前である12月4日11時58分、本件管理責任者に対して「トーマツによる電話インタビューに関して」と題するメールが送信されたことが確認された。本件インタビューへの協力を依頼するとともに、「ホシザキ国内販社管理部責任者へのインタビュー見本」と題し、トーマツ作成の12月1日付「監査のご協力のお願い」と題する質問予定事項書のPDFファイルにA氏がコメント機能を用いて一定の回答例を追記したものも添付されていた。
メールには、ホシザキ東海以外の販売子会社の管理部の機能に問題はない旨を回答するよう指示または示唆をしたと読み取れる記述がある一方、「回答のひな型を書き込んでおきましたので、是非ともご自身の言葉に置き換えてご回答ください」とも記載。また、A氏およびメールを受信した本件管理責任者へのインタビュー結果によると「本件メール及ビ本件回答例について、A氏から実態と異なる場合でも一定の回答を指示又は示唆されたものと認識した者はおらず、実際、本件管理責任者は各社の実態に応じて回答をした」と認定されており、加えてデジタル・フォレンジックによる調査結果を総合すると、A氏には「(トーマツの)インタビューに際して実態と異なる回答を指示又は示唆する意図はなかったものと認められる」とされている。
上長の指示・関与があったかについては、B氏に対する同じ手法の調査により、A氏から本件メールと本件回答例につき事前に共有を受けたことは確認されたものの、「(トーマツの)インタビューにおいて本件管理責任者に一定の回答内容を指示又は示唆している可能性のあるもの、又はその他トーマツの監査・四半期レビュー手続に対して不適切な対応を検討、指示又は示唆している可能性のあるものは発見されなかった」という。経理部・グループ管理部担当の取締役に関しては、本件メールの送信になんら関与していないと認定された。
以上の結果を踏まえ、追加調査報告書の結論としては「現時点においても、社内調査委員会という調査体制及ビその委員構成が不適切と認められる事情は認められず、本件調査報告書の内容は現時点においても維持できる」と判断。再開した通報窓口を通じては「会社に対して大きな不満を抱き、同時に、何とか会社をよくして欲しいという切実な気持ちを有する者が複数存在することが判明」したとし、同社に対して誠実な対応を要請するとともに、グループ全体としてコンプライアンス教育により役職員の意識向上を図っていくことが必要であると指摘している。
なお、追加調査報告書が公表された12月27日には、ホシザキ東海の社長・取締役管理部長に対して取締役を解任する旨、ホシザキの取締役らに対して月額報酬30%〜10%を5ヵ月〜1ヵ月の間、自主返納させる旨の処分が決定・公表されたほか、原価企画部を工場部門の直下組織とする組織変更が発表され、原価企画・原価管理活動の定着と推進を図っていくとの表明がなされた。