◇SH3715◇ベトナム:PPP政令を踏まえたベトナムPPP制度の論点(1) 澤山啓伍(2021/08/16)

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ベトナム:PPP政令を踏まえたベトナムPPP制度の論点(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

 ベトナムでは2021年1月に官民連携(PPP:Public Private Partnership)方式による投資に関する法律(以下「PPP法」という)が施行された。同法は、これまで政令に定められていたPPPに関するルールを法律レベルに格上げしたものであり、その内容についてはSH3266 ベトナム:PPP法の成立①で紹介させていただいた。しかしながら、ベトナムでは法律の規定だけでは実務上の運用がどうなるか不明確であることが多く、施行細則となる政令・通達を待たないと実務が機能しないことが多い。そこで、本稿では、2021年3月29日に施行された同法の施行細則となる政令35/2021/NÐ-CP号(以下「政令35号」という)の内容を踏まえて、PPP法の下でのベトナムでのPPPにおける論点を3つほどご紹介したい。

 

(1)民間提案型案件の取り扱い

(ア)手続の流れ

 PPP法及び政令35号の下では、PPP案件には政府側で企画立案をして民間投資家を募集する政府提案型と、民間事業者が案件を政府に提案する民間提案型のPPP案件がある。

 このうち、民間提案型のPPP案件(英語のUnsolicitedから、よく「アンソリ型」と呼ばれる)の場合、PPPプロジェクトの組成の流れは以下のようになっている。

 

 すなわち、Pre-FSレポートの作成は、政府提案型のPPP案件の場合、担当省庁・人民委員会の担当部署が行うが、民間提案型のPPP案件の場合、最初に民間事業者が当局に提案をし、一旦当局がこれを承認した後、当該民間事業者がPre-FSレポートを作成することになる。Pre-FSレポートを作成したにもかかわらずその後案件が進まなかった場合でも、民間投資家はその作成費用を求償することはできない。案件が進んだものの提案した民間事業者以外の事業者が当該プロジェクトを落札した場合には、Pre-FSレポート及びFSレポートの作成費用は落札した事業者から支払われることになる。

 

(イ)入札での対応

 政府提案型にせよ民間提案型にせよ、PPP案件を実施する民間事業者は、入札により選定されるのが原則である。

 政府提案型PPP案件の場合、Pre-FSやFSレポートの作成コンサルタント、及びその出資持分・株式を保有する事業者等は、独立性に問題がある者として入札に参加できないとされている。

 民間提案型PPP案件の場合、この規定の適用は除外されており、Pre-FSレポートやFSレポートの作成コンサルタントであっても、入札の参加資格を失うことにはならない。逆に、プロジェクトを提案した民間事業者は、そのプロジェクトの入札において優遇されることがPPP法上規定されていたが、政令35号で、その優遇の具体的な内容として、その入札書の評価点数に5%加算の優遇レートが適用される(評価点数に5%加算される)ことが定められている。

 なお、政令35号では、このほか、総投資額の25%以上にあたる業務について国内業者を使うことを誓約した場合には3%の、総投資額の25%以上にあたる国内原材料等の使用を誓約した場合には2%の優遇レートが適用されることになっている。これらの優遇レートは複数の適用条件を満たす場合でも1つしか適用を受けられないため、プロジェクト提案をした民間事業者が最も有利な優遇レートを受けることができることになる。

 

(2)につづく

 


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(さわやま・けいご)

2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。

現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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