法務担当者のための『働き方改革』の解説(23)
労働者派遣と同一労働同一賃金
TMI総合法律事務所
弁護士 大 皷 利 枝
Ⅹ 労働者派遣と同一労働同一賃金
2 適正な就業の確保等
前述のとおり、派遣労働者は派遣先において職務を遂行するため、改正法により、以下のとおり、就業に関する派遣先の義務も強化された。
改正前 | 改正後 |
実施するよう配慮する義務 |
実施するなど必要な措置を講じる義務(*注) |
利用の機会を与えるよう配慮する義務 |
利用の機会を与える義務 |
必要な措置を講じるよう努力する義務 |
必要な措置を講じるよう配慮する義務 |
- *注 教育訓練については、派遣元から求めがあった場合に限られるとともに、①派遣元において同様の教育訓練を実施済み又は実施可能な場合や、②当該派遣労働者が必要な能力を既に有している場合には義務を負わない。
3 紛争解決
現行法では、特に派遣労働者と派遣先の間の紛争について、裁判外での迅速かつ簡易な紛争解決のための手続は存在しなかったが、改正法では、労働者派遣に関し、労働局における紛争解決援助及び調停の手続が新設され(新労働者派遣法47条の5)、事案に応じて、裁判所における手続と裁判外の手続を選択することが可能となった。
4 違反時の制裁
改正法で新設・強化された以下の派遣先の義務に関しては、派遣先が、違反について、労働局の勧告を受けたにもかかわらず、勧告に従わなかった場合、企業名公表が行われる可能性がある(新労働者派遣法49条の2)。
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5 今後の対応
派遣先が最も大きな影響を受ける改正点は、労働者派遣契約締結前の情報提供義務(前回1(1)及び(2))であると思われ、前述のとおり、派遣元において、労使協定が締結されているか否かで、派遣先が提供する必要がある情報が全く異なるため、改正法施行後は、派遣先が、労使協定の対象となる派遣労働者のみを受け入れることを希望する可能性がある。
しかしながら、かかる方針で、必要な能力・人数の派遣労働者が確保できるかは現状分からないため、比較対象労働者の選定及び情報提供がスムーズにできるよう、派遣先においては、自社の従業員の「職務の内容」と「『職務の内容』及び『配置』の変更の範囲」等を整理しておくことが望ましい。(派遣先の社内に短時間労働者及び有期雇用労働者がいる場合、整理した「職務の内容」と「『職務の内容』及び『配置』の変更の範囲」は、それらの者との同一労働同一賃金の検討にとっても非常に有用である。)