◇SH3834◇金融庁、「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」論点整理を公表――環境変化など踏まえ諸課題を総合的に検討、公認会計士制度の改善に向けて金融審に諮問がなされる (2021/11/24)

未分類

金融庁、「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」論点整理を公表

――環境変化など踏まえ諸課題を総合的に検討、
公認会計士制度の改善に向けて金融審に諮問がなされる――

 

 金融庁は11月12日、「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)論点整理―会計監査の更なる信頼性確保に向けて―」を公表した。

 本懇談会(座長・八田進二青山学院大学名誉教授/大原大学院大学会計研究科教授)は、9月13日に開かれた「第47回金融審議会総会・第35回金融分科会合同会合」において、金融庁「2021事務年度金融行政方針」(8月31日公表)を踏まえ、また、コーポレートガバナンス・コードの本年6月改訂など企業のガバナンス改革と歩調を合わせるかたちで会計監査についても信頼性確保に向けた方策を検討する必要があるとし、その開催につき報告・説明がなされていた。9月14日には構成員が発表されるとともに、初会合が翌9月15日に開催されると告知。その後、第2回会合を10月11日に、第3回会合を11月4日に開催し、第3回会合では今般の「論点整理」の原案について審議、成案の公表に至ったものである。

 なお、11月22日の「第48回金融審議会総会・第36回金融分科会合同会合」における配付資料によれば、同日付で金融担当相より「公認会計士制度の改善に関する検討」として「会計監査を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、会計監査の信頼性確保や公認会計士の一層の能力発揮及び能力向上に資する公認会計士制度の改善に関する事項について検討を行うこと」との諮問がなされている。同月29日には公認会計士制度部会が開催される運びとなった。

 公表された論点整理によると、本懇談会では「会計監査を巡る環境の急速な変化を踏まえ、将来に向けて会計監査の信頼性を確保するには何が必要か、幅広い論点について総合的に議論を行っ」ており、提示された論点は大別して次の3つの視点からなる。(A)会計監査の信頼性確保、(B)公認会計士の能力発揮・能力向上、(C)高品質な会計監査を実施するための環境整備などその他。

 上記(A)では(1)上場会社の監査に係る取組み、(2)「第三者の眼」によるチェック機能の発揮を取り上げている。たとえば(1)は、(ア)「企業活動のグローバル化や業務内容の複雑化・専門化に伴い、企業の実態を正確に把握することの困難さが増している」こと、(イ)「近年、会計基準の改正等により会計上の見積りが複雑化する傾向にあり、監査基準においても、 重要な虚偽表示のリスクの評価について強化が図られている」こと、(ウ)「サステナビリティ情報等の非財務情報に対する投資家の関心が高まっており、非財務情報を織り込んだ中長期の企業価値の見極めにも期待が寄せられている」こと――などを背景とし「財務諸表が経営内容を適切に反映できているかを検証する会計監査には、より高い品質の確保が求められている」「足元の上場会社の監査事務所の異動状況を見ると、大手監査法人から準大手監査法人や中小監査事務所にシフトしている傾向があり、……こうした傾向を踏まえれば、中小監査事務所を含む上場会社の監査の担い手全体の監査品質の向上が急務となっている」(編注・注記について略。以下同様)との問題意識のもと具体化されたもので、①中小監査事務所等に対する支援、②上場会社の監査の担い手に対する規律の在り方からなる。

 ①は「自らの監査品質の向上に取り組む中小監査事務所等への支援が重要である」とするもので、より具体的には(i)電子監査調書の導入等のデジタル化支援、(ii)人的基盤の整備、(iii)経営相談体制の強化を例示したうえで「中小監査事務所に対する体制面・ノウハウ面での支援を講ずるといった上場会社の監査の担い手の裾野を広げるための方策の一層の充実を検討する必要がある」としている。

 一方で②では、このような中小監査事務所を含む「上場会社の監査を行う監査法人に対しては、海外の状況を見ても、上場会社等の監査を行わない監査法人に比してより高い規律が求められており、体制、リソース、情報提供等の観点から、我が国においても同様に、より高い規律付けを検討すべきである」とし、具体的には上場会社監査事務所登録制度について「登録審査やその後のレビューを通じて監査事務所が上場会社を監査するに十分な能力・態勢を備えていることを担保する規律としての実効性をより高める」観点から「法律に基づく制度の枠組みを検討する」必要性に言及した。

 併せて「監査法人のガバナンス・コード」などにより対応を促すことも引き続き有効であるとし、たとえば、上場会社の監査を行うすべての監査法人に対してコードの受入れ、業務運営上のKPI等の情報開示の充実を求めることなどについて「検討されるべき」と述べている。なお、ここでは中小監査法人におけるコードの受入れが進むよう(i)コードがコンプライ・オア・エクスプレインの手法によることを再確認すること、(ii)必要に応じて、コードの適用に当たっての指針の整備等を行うこと、(iii)コードの受入れに際しての課題につき日本公認会計士協会が相談に応じること――などの検討がなされるべきと指摘。敷衍して(iv)日本公認会計士協会によるコードを受け入れた監査法人への継続的なフォローアップが行われることが望ましく、(v)コードそのものにつき、改訂すべき点がないかの検討を必要とするとともに、新たに取り入れるべき事項がないかについての幅広い検討を望ましいとした。

 上記(B)公認会計士の能力発揮・能力向上は「公認会計士の働き方の多様化」「監査基準の高度化やAIを始めとする監査の技術革新の進展」を背景とするもので、論点掲出に当たっては(1)公認会計士の能力発揮、(2)公認会計士の能力向上の2項目に分けた。たとえば(1)では、①女性活躍の進展等を踏まえた環境整備として、監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限について見直すべき点はないかといった検討を挙げるほか、②いわゆる組織内会計士向けの指導・支援として、当該指導・支援を広げるための方策の検討、研修プログラムのさらなる充実等に係る検討について指摘した。

 また(2)公認会計士の能力向上については、継続的専門研修(CPE)・実務補習・業務補助等の充実、企業との人材交流等による公認会計士の現場感覚の養成といった諸施策に触れつつ、環境変化に対応できる知識・能力を不断に磨いていくことが職業専門家として重要と指摘。「CPEを長期に受講しない等、CPEの受講義務を適切に履行しない者に対しては、公認会計士の登録を取り消すことも含め、厳格に対応することが求められる」と述べている。

 

タイトルとURLをコピーしました