伊藤忠商事、デサント株式に対する公開買付けで株券等所有割合を40%に
――大企業間では異例の敵対的TOBが成立、特別決議の拒否権を確保――
伊藤忠商事(東京都港区、東証第一部上場)は3月15日、同社の完全子会社であるBSインベストメント株式会社(東京都港区)を公開買付者とし、デサント(大阪府大阪市天王寺区、東証第一部上場)の普通株式を対象として実施した公開買付けが前日14日に終了したこととともに、本公開買付けが成立したことを発表した。
1月31日〜3月14日の30営業日を公開買付期間とし、買付予定数および買付予定数の上限を7,210,000株、買付価格を普通株式1株につき2,800円(1月30日の対象者株式終値1,871円に対しては49.65%のプレミアムを加えた価格。買付代金は20,188百万円)としていた本公開買付けには、15,115,148株の応募があった(公開買付けに至る経緯、その目的等について、SH2334 伊藤忠商事、デサント株式に対する公開買付けを開始 (2019/02/13)既報)。
買付予定数の上限を超える部分については公開買付開始公告・公開買付届出書に記載のとおり、買付けを行わないこととされ、法令に基づくあん分比例の方式により買付けの受渡し・決済がなされる。各応募株主の応募株式数に応じた「あん分比例後の株式数」「最終買付株式数」「応募株主に返還する株式数」等に関しては、BSインベストメントが3月15日付で提出した公開買付報告書に「計算過程及び計算の結果」が示されている。
デサント株式の30.44%を所有する筆頭株主であった伊藤忠商事は本公開買付けによりBSインベストメントが7,210,000株、株券等所有割合にして9.56%を買い付けたことから、伊藤忠商事側として計40.00%を所有するに至った。デサントは出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する株主総会の特別決議を伊藤忠商事らの同意なく可決することはできないこととなり、伊藤忠商事として拒否権を確保した恰好となる。
本公開買付けを巡ってはデサントが2月7日、取締役会として反対の意見表明(以下「反対意見表明プレスリリース」という)を公表するとともに、続いて「オール・デサント労働組合中央執行委員会」名による反対声明文の発表(同月8日)、同社OB会「デサントスピリット会」名による反対声明文の発表(同月22日)がなされるなど、大企業間では異例の敵対的TOBとして展開した。
加えて、本公開買付けの開始後に伊藤忠商事・デサント間で行われた協議に絡んでは、伊藤忠商事側がその協議を打ち切ったうえ、公開買付開始公告における「1.公開買付けの目的」の「(3)本公開買付け成立後の経営方針」中の記載などを訂正したと発表。これを受けてデサント側としても、反対意見表明プレスリリースを訂正するかたちで当該協議の経過・内容を説明するに及んだ経緯もある(詳細について、SH2397「伊藤忠商事、デサント株式に対する公開買付けで開始公告等の「目的」を訂正 (2019/03/13)」既報)。
伊藤忠商事側は「公開買付け後の方針等及び今後の見通し」につき、本公開買付けの成立を発表したプレスリリースにおいて、上記訂正を含むこれまでの発表から変更はない旨を発表。一方のデサントにあっては3月18日、公開買付結果を確認したとするプレスリリースのなかで、同社の今後の方針として「改めて伊藤忠商事と建設的に協議してまいりたいと考えており、伊藤忠商事との対話を開始しております」と述べた。