◇SH2515◇公取委、「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査について(中間報告)」を公表(2019/05/07)

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公取委、「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査について(中間報告)」を公表

――オンラインモール、アプリストア運営事業者の取引実態等――

 

 公正取引委員会は4月17日、「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査について(中間報告)」を公表した。

 今回の中間報告は、公取委が今年1月に開始した「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査」の一環であり、

  1. ① オンラインモール運営事業者の取引実態に関するアンケート調査
  2. ② アプリストア運営事業者の取引実態に関するアンケート調査
  3. ③ デジタル・プラットフォームサービスの利用者(消費者)に対するアンケート調査

を実施し、中間報告として取りまとめたものである。

 公取委では、今後、中間報告で取り上げた分野を含め、デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態の更なる把握を行い、独占禁止法・競争政策上の考え方の整理を進めていくことしており、引き続き、デジタル・プラットフォーマーに関する取引実態や利用状況についての情報提供を広く受け付けていくとしている。

 以下、今回の中間報告の概要を紹介する。

 

「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査について(中間報告)」(4月17日)の概要

1 オンライモールにおける事業者間取引の実態調査

(1) アンケート調査の概要

 調査対象:商品を販売するためにオンライモール利用したことがある
      又は利用の申請をしたことがある事業者(利用事業者)

 調査方法:オンラインアンケート

 実施期間:2月27日から3月26日まで

 回答者数:811名

(2) アンケート調査結果の概要

(以下、「A」はAmazon、「Y」はYahoo!ショッピング、「楽」は楽天市場の利用事業者を指す)

  1. ① 規約の変更
  2.    規約の変更について、運営事業者によって「一方的に変更された」との回答が多く(Aの72.8%、Yの49.9%、楽の93.2%)、規約の変更の中に「不利益な内容があった」との回答も多かった(Aの69.3%、Yの37.3%、楽の93.5%)。
     
  3. ② 出店・出品の審査
  4.    運営事業者による出店・出品の不承認が行われた場合、その理由について「説明はなかった」という回答が多かった(Aの64.0%、Yの85.7%、楽の70.0%)。また、運営事業者の説明に「納得できなかった」との回答も多かった(Aの66.7%、Yの16.7%、楽の69.2%)。
     
  5. ③ 商品の販売価格又は品揃え
  6.    運営事業者から、商品の販売価格又は品揃えに関する「要請や指示を受けたことがなかった」との回答が多かった(Aの50.9%、Yの76.7%、楽の51.8%)が、「要請や指示を受けたことがあった」との回答も一定程度存在した(Aの37.7%、Yの8.5%、楽の35.3%)。
     運営事業者による要請や指示があった場合、その根拠について「説明があった」「説明はなかった」との回答がそれぞれ一定程度存在した。また、運営事業者の説明に「納得できなかった」との回答が多かった(Aの57.6%、Yの43.8%、楽の53.9%)。
     
  7. ④ データの取扱い関係
  8.    消費者の顧客情報や販売データの取扱範囲について、運営事業者と利用事業者との間で「不公平な取扱いがあった」との回答が一定程度存在した(Aの26.6%、Yの7.6%、楽の41.3%)。
     
  9. ⑤ 運営事業者との取引全般
  10.    運営事業者の行為によって、深刻な又はある程度の影響を受けたにもかかわらず、何らかの理由で当該オンラインモールを利用せざるを得ないとする回答が多く、その理由として、「貴社の全売上額に占める当該オンラインモールの売上額の割合が高いため」(Aの64.0%、Yの46.3%、楽の76.6%)、「切り替えてもよいと考えるオンラインモール運営事業者が他にいないため」を挙げる回答が多かった(Aの54.7%、Yの50.2%、楽の50.9%)。

 

2 アプリストアにおける事業者間取引の実態調査

(1) アンケート調査の概要

 調査対象:アプリを提供するためにアプリストア利用したことがある
      又は利用の申請をしたことがある事業者(利用事業者)

 調査方法:オンラインアンケート

 実施期間:2月27日から3月26日まで

 回答者数:56名

(2) アンケート調査結果の概要

(以下、「A」はAppleAppStore、「G」はGooglePlayストアの利用事業者を指す)

  1. ① 規約の変更
  2.    規約の変更について、運営事業者によって「一方的に変更された」との回答が多く(Aの81.4%、Gの73.8%)、規約の変更の中に「不利益な内容があった」との回答が一定程度存在した(Aの51.2%、Gの33.3%)。
     
  3. ② アプリの審査
  4.    運営事業者によるアプリの不承認が行われた場合、その理由について「説明があった」との回答が多かったものの(Aの78.9%、Gの81.3%)、運営事業者の説明に「納得できなかった」との回答も多かった(Aの60.0%、Gの38.5%)。
     
  5. ③ 運営事業者に支払う手数料
  6.    利用事業者が運営事業者に支払う手数料について、エンドユーザーであるアプリ利用者から支払われる額の「30%」との回答が多かった(Aの79.1%、Gの78.6%)。
     手数料について何らかの理由で問題があるとする回答が多く、その理由として、「手数料の水準が高額である」(Aの69.8%、Gの71.4%)、「交渉の余地なく一方的に決められた」(Aの48.8%、Gの50.0%)を挙げる回答が多かった。
     
  7. ④ 運営事業者との取引全般
  8.    運営事業者の行為によって、深刻な又はある程度の影響を受けたにもかかわらず、何らかの理由で当該アプリストアを利用せざるを得ないとする回答が多く、その理由として、「当該アプリストア運営事業者以外にアプリストア運営事業者が存在しないため」(Aの61.5%、Gの40.0%)、「当社の全売上高に占める当該アプリストアの売上額の割合が高いため」(Aの51.3%、Gの46.7%)を挙げる回答が多かった。

 

3 デジタル・プラットフォームサービスの利用者(消費者)の認識

(1) アンケート調査の概要

 調査対象:デジタル・プラットフォームサービスの利用者(消費者)

 調査方法:委託調査

 実施期間:3月15日から3月18日まで

 回答者数:2,000名

(2) アンケート調査結果の概要

  1. ① 個人情報や利用データの経済的価値
  2.    無料のデジタル・プラットフォームサービスを利用する代わりに自身の個人情報や利用データを提供しているという「認識はある」との回答が79.7%、自身の個人情報や利用データが「経済的な価値を持っていると思う」との回答が66.1%であった。「デジタル・プラットフォーマーが個人情報や利用データを勝手に利用することはやめてほしいと思う」との回答は47.7%であった。
     
  3. ② 個人情報や利用データの収集等
  4.    デジタル・プラットフォーマーがどのような個人情報や利用データを収集しているかについて「十分に知っている」または「ある程度は知っている」との回答が57.0%、自身の入力した情報等がデジタル・プラットフォーマーにどのように利用されているかについて「十分に知っている」または「ある程度は知っている」との回答が48.9%であった。
     
  5. ③ 利用者の懸念
  6.    デジタル・プラットフォーマーによる個人情報や利用データの収集、利用、管理等について「懸念がある」との回答が75.8%であり、具体的な懸念としては、「個人情報や利用データの取扱いや情報管理(情報流出など)に懸念を感じる」との回答が85.6%、「インターネット利用時に不要な広告が掲載されたり、Eメールが届いたりすることに懸念を感じる」が65.5%であった。

 

4 今後の調査・検討の視点

 公取委では、下記の論点などにつき、運営事業者の事情も含め、さらなる実態の把握を行い、独占禁止法・競争政策上の考え方の整理を進めていくこととする。

  1. ・ プラットフォームを利用せざるを得ない利用事業者に対して、不当な不利益を与えていないか。
  2. ・ 運営事業者と利用事業者の立場を兼ねる場合に、自ら販売する商品と競合する商品を販売する利用事業者を不当に排除していないか。
  3. ・ 利用事業者の事業活動を不当に拘束していないか。
  4. ・ 取引条件の透明性が十分に確保されているか。

 公取委では、さらに、デジタル・プラットフォーマーによる個人情報や利用データの収集、利用、管理等に懸念を有しているサービス利用者(消費者)が多いなどといった利用者向けアンケート調査結果も踏まえつつ、対消費者取引に対する優越的地位の濫用の適用の考え方について、引き続き検討を進めていくこととする。

 

 

  1. 公取委、デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査について(中間報告)(4月17日)
    https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/apr/190417.html
  2. ○ デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査について(中間報告)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/05/190417honbun.pdf
  3. ○(別添)デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査について(中間報告)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/05/190417betten.pdf
  4. ○(別紙1)オンラインモール運営事業者の取引実態に関するアンケート調査(詳細)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/05/190417besshi1.pdf
  5. ○(別紙2)アプリストア運営事業者の取引実態に関するアンケート調査(詳細)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/05/190417besshi2.pdf
  6. ○(別紙3)デジタル・プラットフォームサービスの利用者(消費者)に対するアンケート調査(詳細)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/05/190417besshi3.pdf
  7. ○(概要)デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査(中間報告)の概要(4月24日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/05/190424gaiyou.pdf

 

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