ホシザキ、第三者委員会による調査報告書を公表
――他の4販社の不正を確認、社内調査委員会調査にも言及――
業務用厨房機器製造・販売のホシザキ（本社・愛知県豊明市、東証第一部・名証第一部上場）は5月7日、連結子会社であるホシザキ東海における不適切取引に関して設置した第三者委員会から調査報告書を受領し、公表した（第三者委員会の設置経緯・目的・調査体制について、SH2387 ホシザキ、子会社における不適切取引の継続判明で第三者委員会を設置 （2019/03/08）既報）。
併せて同日発表されたところによると、3月29日付で提出期限の延長が認められていた第73期有価証券報告書も期限となる5月7日に無事提出されたほか、第三者委員会の調査結果を受け、過年度における金額的な重要性は乏しいと判断したことから過年度の有価証券報告書・四半期報告書・内部統制報告書・決算短信の訂正は行わない予定としている。
今般明らかになった5月5日付の「調査報告書 （公表版）」によると、本調査は2月25日〜5月4日の期間、2018年1月1日〜同年12月31日における「貸し借り（別の取引間での売上原価の付替え）」「仮装代理店販売」など計6類型の不正行為を対象として行われた。その手法として、ホシザキ東海のエリア営業部に対し「社内調査委員会の調査結果・調査資料の利用」「客観的資料の確認」「顧客店舗の現地調査」「役職員に対するヒアリング」「協力業者に対する調査」が行われるとともに、ホシザキ東海を含む計15販社（いずれもホシザキの連結子会社）に対する類似不正調査を「営業本部長、管理責任者その他役職員に対するヒアリング」「個別取引調査」「電子メールデータのレビュー」「役職員アンケート」「協力業者アンケート」「役職員ヘルプライン」「協力業者ヘルプライン」「会社に対する内部通報、リスク管理情報のレビュー」などにより実施。親会社となるホシザキに対しても「客観的資料の確認」「役職員・関係者へのヒアリング」「電子メールデータのレビュー」が行われている。
調査結果によれば、ホシザキ東海においては（ア）長年にわたる不正行為の継続による規範意識の鈍麻、（イ）過度の目標達成プレッシャー、（ウ）協力業者との特異な関係による営業担当者の甘え、（エ）内部統制の杜撰さを原因とし、調査対象期間中「貸し借り」「架空発注又はその疑いがある取引」「架空販売」「売上の先行計上」が認められた。
また、ホシザキ北海道における「架空販売・先行売上計上」「架空発注等」「架空発注とキックバック」が判明したことを始め、ホシザキ北関東で「協力業者との間の貸し借り」など、ホシザキ阪神で「架空販売」など、ホシザキ中国で「協力業者との間の貸し借り」などの不正行為を確認。15販社中、ホシザキ東海を含む計5社で不正行為があったと結論付けた。
調査報告書では、原因分析を行う過程で「今回の危機管理における問題点」についても言及している。ホシザキ東海で発覚した不正行為の背景にある組織的要因にまで踏み込んで原因を究明しようとすれば調査対象は他の14販社などにまで及ぶことが想定されるはずであったにもかかわらず、「昨年から今年にかけて実際に行われたことは、ホシザキ東海のエリア営業部を調査対象として社内調査委員会調査が行われ、調査対象となるべきグループ管理部担当取締役が調査委員に入るという、理想的な姿からは遠いものであった」「他の14販社については、社内調査委員会の調査報告書で、『類似事象が存する蓋然性を検討する観点から一定の調査の対象とした』（2頁）との記載はあるが、その調査方法すらも明らかにされないまま、問題はなかったという結論だけが導かれた」「ホシザキの取締役らは、昨年12月27日に連座して報酬を自主返納したにとどまった。こうして、問題はホシザキ東海の中だけで収められ、親会社や他の販社に累が及ぶことは避けられた」などと指摘。
そのうえで、組織的要因や根本原因にまで踏み込んで是正するための実効性ある再発防止策かつ各種関係者が納得感を得られる対応が重要であるとして、（1）大幅な人事刷新と営業の基本動作の徹底、（2）次代を担う経営人材の育成、（3）「競争から協働へ」という経営方針の転換、（4）営業と管理のバランス（横軸）とホシザキと15販社の関係（縦軸）という2軸を意識したグループ内部統制の強化、（5）不正行為の組織的要因に踏み込む再発防止策の推進の5点を提言。「ホシザキとして、グループ経営やグループ内部統制に多くの問題があることを虚心坦懐に受け止め、本件についての総括を行い、今後のグループ経営の建て直しに活かしていくこと」を第三者委員会の期待として表明するなどし、結語とした。