◇SH2258◇ISS、2019年版「Proxy Voting Guidelines」(議決権行使助言基準)を公表 伊藤広樹(2018/12/19)

未分類

ISS、2019年版日本向け「Proxy Voting Guidelines」(議決権行使助言基準)を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 伊 藤 広 樹

 

 ISS(Institutional Shareholder Services)は、本年12月6日、2019年版日本向け「Proxy Voting Guidelines」(議決権行使助言基準)(以下「本基準」という。)を公表した。

 本基準は、2019年2月1日付で適用されるものであるが、本稿では、本基準について、従来の議決権行使助言基準からの改正点を解説する。

 

1. 社外役員の独立性判断基準~株式の持ち合い~

 本基準では、社外役員の独立性が否定される基準として、新たに以下の項目が設けられた(以下「新独立性判断基準」という。)。

  1.   “Individuals who work or worked at companies whose shares are held by the company in question as “cross-shareholdings””

 即ち、上場会社が政策保有株式を保有している場合に、その政策保有株式の発行会社に在籍している又は過去に在籍していた者を社外役員として選任しようとするときには、その社外役員については独立性が否定されることになる。

 政策保有株式については、近時、様々な議論がなされている。例えば、本年6月1日付で適用されたコーポレートガバナンス・コードでも、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示することが求められており、また、上場会社が開示すべき「政策保有に関する方針」の具体例として「政策保有株式の縮減に関する方針・考え方」が挙げられている(原則1-4)等、政策保有株式の保有については、近時、市場から厳しい目が向けられていると言えよう。

 そのような状況の中、ISSは、事業上の関係の維持等を目的とする政策保有株式に関して、その発行会社出身の社外役員に独立性を認めることは困難であるとの判断の下、新独立性判断基準を定めるに至った。なお、新独立性判断基準は、2020年2月から適用される。

 また、2018年10月25日付でISSが公表している「ISS議決権行使助言方針(ポリシー)改定に関するコメント募集」において、政策保有株式の銘柄としては、有価証券報告書における「保有目的が純投資以外の目的である投資株式」欄に掲載されている株式が対象になる予定であるが、有価証券報告書が提出されるのは、通常、定時株主総会の開催後であるため、実際には1年前の有価証券報告書記載の情報が利用されることになるとの説明がなされている。例えば、6月総会の会社を前提にすると、新独立性判断基準が最初に適用される2020年の6月総会では、2019年3月期の有価証券報告書記載の情報が利用されることになる。したがって、新独立性判断基準の適用自体は2020年2月以降であるものの、その際に利用される情報は、今年度(2019年3月期)の有価証券報告書記載のものとなり得る点に留意が必要である。

 なお、ISSは、指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社については、独立性が否定されることを理由として社外取締役の選任議案に反対推奨するものの、監査役会設置会社については、独立性が否定されることのみを理由として社外役員の選任議案に反対推奨するものではない。

 

2. 取締役会に占める社外取締役の割合

 既に2018年版の日本向け「Proxy Voting Guidelines」に記載されていたものの、その適用時期が2019年2月からとされていたものとして、取締役会に占める社外取締役の割合がある。具体的には、指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社において、株主総会後の取締役会に占める社外取締役の割合が3分の1未満である場合、経営トップである取締役の選任議案に、原則として反対推奨するとされている。

 厳密には、本基準での改正点ではないが、2019年2月から適用されるものとして留意が必要である。

2019年版日本向け「Proxy Voting Guidelines」のポイント

 1. 社外役員の独立性判断基準~株式の持ち合い~

  1. ・ 政策保有株式の発行会社出身の社外役員については、独立性が否定される。
  2. ・ 適用時期は、2020年2月から。
  3. ・ 政策保有株式の銘柄については、有価証券報告書記載の情報が基準となる(そのため、通常は1年前の情報が利用されることになる。)。
     

 2. 取締役会に占める社外取締役の割合

  1. ・ 指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社において、株主総会後の取締役会に占める社外取締役の割合が3分の1未満である場合、経営トップである取締役の選任議案に、原則として反対推奨される。

以 上

タイトルとURLをコピーしました