経産省・総務省、「カメラ画像利活用ガイドブック 事前告知・通知に関する参考事例集」
岩田合同法律事務所
弁護士 羽 間 弘 善
経産省及び総務省は、事業者がカメラによる撮影によって得られた画像等のデータ(以下「画像データ等」という。)を利活用する際の指針として、『カメラ画像利活用ガイドブック』(以下「本ガイドブック」という。)を作成している。
本ガイドブックは、被撮影者の理解を得る上で求められる配慮事項を記載したものであるが、本ガイドブックでは、配慮事項の中でも特に、画像データ等の取得を始める前や、実際に取得を実施するときに、被撮影者が当該画像データ等の利用目的や利用方法を理解でき、必要に応じて運営主体へ問い合わせなどができるよう、必要な情報を事前告知・通知することが重要であるとしている。
今般、経産省及び総務省が作成した「カメラ画像利活用ガイドブック 事前告知・通知に関する参考事例集」(以下「本事例集」という。)は、本ガイドブックにおいて特に配慮が求められている情報の事前告知・通知の方法に関する実際の事例をまとめたものである。
そもそも、事業者が本人を判別可能である画像データ等の利活用する場合には、当該画像データ等は「個人情報」(個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)2条1項1号)に該当するため、個人情報保護法を遵守しなければならない。
具体的には、画像データ等を取得する場合には、防犯カメラのように取得の状況から見て利用目的が明らかな場合(個人情報保護法18条4項4号)等を除き、利用目的をあらかじめ公表し、又は個人情報の取得後速やかに本人に通知若しくは公表しなければならない(同法18条1項)。また、画像データ等を体系的に構成して個人情報データベース等を構築した場合には、個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理措置を講じる(同法20条)等の対応を実施しなければならない。
もっとも、個人情報保護法を遵守した場合においても、それだけでは被撮影者が抱くプライバシー侵害等の懸念を解消するには十分でない場合もあり得ることから、事業者には本ガイドブック及び本事例集に記載されているプライバシー保護の観点から一定の配慮を行うことが求められている。
例えば、事業者がマーケティング目的で店舗に設置されたカメラから来店者の年齢層や性別、行動分析等を行う場合を考えてみたい。この場合、事業者は予めホームページで画像データ等の利用目的を公表していれば、来店者をカメラで撮影し、画像データ等を取得すること自体は個人情報保護法上適法に実施することができる。
しかし、事業者は予めホームページで画像データ等の利用目的を公表していても、来店者が撮影されていることを認識せずに当該カメラに写り込んでしまうことによってプライバシーが侵害のおそれが生じることや、カメラ本体を目視しただけではカメラで取得された情報がどの範囲で利用されるのか分からないため、本人が望まない形でデータが利用されるといった問題は解消されない。そのため、事業者としては、個人情報保護法を遵守することに加えて、さらに、プライバシー保護等の観点から一定の配慮を行うことが望まれており、本事例集では、実際のカメラの撮影箇所の案内看板等を目につきやすい場所に掲示する方法や、案内看板等にQRコードやURL等を記載して個人情報の取扱い方法について記載したWebサイトに誘導する方法などの配慮方法が紹介されている。
近年IoTの急速な普及に伴い、カメラ等の様々な機器によって人々の動きを解析し、産業や事業においてデータを利活用することが一般化しており、画像データ等を利活用する事業者は増加するものと思われるが、被撮影者のプライバシーへの配慮のために、具体的に事業者が講じる措置の内容を検討するにあたり、本ガイドブック及び本事例集は非常に参考になるであろう。
(本ガイドブック4頁参照)