債権法改正後の民法の未来 18
譲渡人の地位の変動に伴う将来債権譲渡の効力の限界(1)
德田法律事務所
弁護士 德 田 琢
Ⅰ 最終の提案内容
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「第2 債権譲渡(将来債権譲渡)
将来債権譲渡の効力の限界に関する規定を設けることの当否について、次のような考え方があり得るが、どのように考えるか。
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【甲案】
次のような規律を設けるものとする。- (1) 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。譲渡人又は債務者から当該債権に係る契約上の地位が第三者に移転した後に発生した債権についても、同様とする。
- (2) 不動産の賃料債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に賃料債権が現に発生していないときは、譲受人は、(1)後段の規定にかかわらず、譲渡人から賃貸借契約上の地位が第三者に移転した後に発生した賃料債権を取得することができない。
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【乙案】
次のような規律を設けるものとする。 - 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。譲渡人又は債務者から当該債権に係る契約上の地位が第三者に移転した後に発生した債権についても、同様とする。」[1]
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cf.中間試案(第18 債権譲渡)
「4 将来債権譲渡- (1) 将来発生する債権(以下「将来債権」という。)は、譲り渡すことができるものとする。将来債権の譲受人は、発生した債権を当然に取得するものとする。
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- (4) 将来債権の譲受人は、上記(1)第2文にかかわらず、譲渡人以外の第三者が当事者となった契約上の地位に基づき発生した債権を取得することができないものとする。ただし、譲渡人から第三者がその契約上の地位を承継した場合には、譲受人は、その地位に基づいて発生した債権を取得することができるものとする。」
Ⅱ 提案の背景
将来債権の譲渡後に譲渡人の地位に変動があった場合に、その将来債権譲渡の効力を第三者に対抗することができる範囲に関しては、見解が対立している状況にあることを踏まえ、当該第三者に対抗することができる範囲を明確にする規定を設けることが検討された。
一方で、不動産の賃料債権の譲渡後に賃貸人が不動産を譲渡した場合における当該不動産から発生する賃料債権については、不動産取引に特有の問題が含まれているため、この問題に特有の規定を設けるか否かについても検討された。[2]