◇SH2567◇GPIF、「第4回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表(2019/05/29)

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GPIF、「第4回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表

――「統合報告書」作成企業が増加し、「機関投資家による活用が進んでいる」と回答する企業も増加――

 

 年金積立金管理運用独行政法人(GPIF)は5月16日、「第4回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表した。

 GPIFでは、運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価と「目的を持った建設的な対話」(エンゲージメント)の実態把握等を目的として上場企業を対象としたアンケートを実施しているところである。今回のアンケートは、昨年12月20日時点の東証1部上場企業2,129社を対象に行われ、回答社数は604社(回答率28.4%)であった。

 以下、アンケート結果の概要を紹介する。

 

1 GPIFの運用受託機関を含む機関投資家の現状・変化について

 ここ1年間のIRミーティング等における機関投資家の変化については、40.6%が「好ましい変化がある」と回答した。

 機関投資家との対話において「具体的な長期ビジョンを示す」企業は70.1%で前回調査(70.5%)とほぼ同様である。中期経営計画期間をベースにしている企業が多く、その想定期間は3~5年程度と回答する企業が大多数である状況も前回同様であったが、想定期間を10年以上とする企業が増加している。

 IRミーティングにおける機関投資家の議論の時間軸は、「経営戦略」に関しては56.0%の企業が「中長期視点になってきている」と回答しており、前回調査と同様の結果となった。

 機関投資家のIRミーティングに向けた事前準備については、23.0%の企業が「以前より事前準備に時間をかけておりミーティングのレベルが上がっている」と回答しており、前回調査(16.7%)より増加した。

 「コーポレート・ガバナンス報告書」の機関投資家による活用は「進んでいると感じる」企業は16.8%で、前回調査(14.4%)から微増であったが、「統合報告書」の機関投資家による活用は「進んでいると感じる」企業が39.4%と前回調査(17.5%)から大幅に増加した。回答企業のコメントでは、「統合報告書への質問や意見を多くいただく。対話ツールとして活用することで、新たに対話機会の創出と対話の質向上に繋がっている」「ESGをテーマにした取材や、ESGエンゲージメント目的のレターが増えた。統合報告書の内容を踏まえた議論、統合報告書での更なる情報開示に関する意見が増加した」などとされている。

 改訂版スチュワードシップ・コードで「有益な場合もあり得る」とされた「協働エンゲージメント」については、「受けたことがある」企業は8.1%にとどまり、「要請はあったが謝絶」した企業は0.5%であった。企業側のメリットとしては、「時間の節約・効率化」が62.6%ともっとも多く、次いで「多数意見の把握」(47.0%)、「共通認識の醸成」(37.4%)などとなっている。デメリットとしては、「機関投資家間の理解度合いが異なる場合」(55.3%)や「機関投資家間の意見調整が十分になされていない場合」(47.7%)に対話が難しくなると回答した企業が多い。

 

2 回答企業のIR及びESG活動について

 ESGを含む非財務情報の任意開示(CSR報告書、サステナビリティ報告書、統合報告書)は72.4%の企業が行っており、その際、参考にしているスタンダードやガイドラインとしては、「GRIガイドライン」または「GRIスタンダード」がもっとも多く(40.7%)、次いでIIRCの「国際統合報告フレームワーク」(33.3%)となっている。

 ESGをはじめとする非財務情報の説明の場は、引き続き、決算説明会(45.4%)やIRミーティング(72.0%)が中心である。ESG等に特化した説明会を開催する企業は8.4%とわずかであるが、前回調査(4.8%)に比べると大幅に増加しており、機関投資家の関心は高い。今後開催を予定している企業や開催を検討している企業は計112社に達している。

 統合報告書またはそれと同等の報告書を作成する企業は292社(51.2%)で今回初めて5割を超えた。作成していない企業の中では、「作成予定」または「作成を検討中」の企業が約6割である。また、作成している企業の中では、「英語版を作成している」企業が91.9%であった。

 ESG活動における主要テーマとしては、①コーポレートガバナンス(71.2%)、②気候変動(45.5%)、③ダイバーシティ(41.6%)という企業・社会の共通課題を掲げる企業が多い。前回調査との比較でみると、②気候変動については前回に比べて9.2ポイント、①コーポレートガバナンスが同3.8ポイント、⑮資本効率が同2.8ポイントそれぞれ上昇しており、企業における意識が高まっている。

 SDGsについては、「知っている」企業が96.7%と前回調査の8割超からさらに認知度が向上し、「取組みを始めている」企業も前回調査では24%だったのが今回は44.7%と大幅に増加している。

 

3 GPIFの取組みについて(環境指数およびESG指数)

 GPIFが昨年選定したS&P/JPXカーボン指数(以下、環境指数)の認知度は、回答企業全体の72.8%であった。評価方法および自社のランクの両方を確認した企業は全体では43.9%であったが、大企業(TOPIX100)に限れば、いずれも8割を超えている。

 環境指数の選定について、「高く評価する」または「評価する」と回答した企業が54.8%であり、ネガティブな評価はほとんどない。大型・中型株に属する企業では「評価する」という回答がいずれももっとも多い一方、小型株に属する企業については、「分からない」という回答が47.0%でもっとも多い。評価の理由としては、「情報開示を促す仕組みであること」(37.6%)、「評価のメソドロジーを公開していること」(36.4%)、「ポジティブスクリーニングであること」(33.4%)、「組み入れ銘柄を公開していること」(32.3%)、などを挙げる企業が多い。

 

 

  1. GPIF、「第4回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表(5月16日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/05/stewardship_questionnaire_04.pdf
     
  2. 参考
    SH1779 GPIF、「第3回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表(2018/04/18)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=5940925
  3.   SH1178 GPIF、「第2回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表(2017/05/22)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=3659289

 

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