◇SH2012◇債権法改正後の民法の未来46 一部請求と時効障害(3・完) 新宅正人(2018/08/03)

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債権法改正後の民法の未来 46
一部請求と時効障害(3・完)

新宅法律事務所

弁護士 新 宅 正 人

 

Ⅲ 議論の経過

2 概要

  1. ⑷ 中間試案
  2.    第2読会を受けて、債権の一部についてのみ訴えを提起した場合、訴えの提起が時効の停止事由(改正法における時効の完成猶予事由)と改められることも考慮し、昭和34年最判と異なり、時効の停止(改正法の時効の完成猶予)の効果は、債権の全部に及ぶことが提案された[1]
     これにより、一部請求であることを明示して債権の一部について訴えを提起した場合に、その後に請求の拡張をしようとしても、そのときまでに既に残部について消滅時効が完成しているという不都合な事態は生じないことになるとしている。
     他方、一部請求を認容する判決が確定した場合の時効の更新の及ぶ範囲や、債権の一部について強制執行の申立てがされた場合の時効障害の及ぶ範囲については、提案がなされていない。

 

Ⅳ 立法が見送られた理由

 中間試案の決定後、明示的な一部請求の訴えの提起がされた場合に、残部について裁判上の催告としての時効中断の効力が生ずることを認める判例が現れた[2]

 その検討の結果、訴訟物ではない残部について裁判上の催告としての時効中断の効力が生ずる理論的な根拠が明らかでなく、この規律が訴え提起の場合に限って妥当するものであるのか、裁判上の請求に準ずるものや他の時効中断事由にも妥当するのかについては未だ議論の途上であることからすると、今回の改正で、訴えの提起だけを取り出して明文化するのは適切ではないと考えられること、明文規定を設けなくても、当事者の意思解釈の問題として対処することも可能であると思われることを理由に、この論点については取り上げないこととされた[3]

 しかし、第3読会(79回会議)においては、判例理論を明文化することが国民に取って分かりやすい民法となるのではないか、という複数の意見が出されている[4]

以上



[1] 部会資料54第7.7(2)(17頁)、部会資料58第7.7(2)(29頁)、部会資料60第7.7(2)(12頁)、中間試案第7.7(2)(11頁)、同補足説明(83頁)

[2] 最一判平成25・6・6民集67巻5号1208頁

[3] 部会資料69A(24頁)、第79回議事録27頁

[4] 第79回議事録27頁、28頁、33頁

 

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