◇SH0892◇実学・企業法務(第4回) 齋藤憲道(2016/11/24)

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実学・企業法務(第4回)

第1章 企業の一生

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

Ⅱ 法人の種類と、設立から閉鎖までの法手続き

 日本では、自然人以外で法律上の権利義務の主体となることができるのは法人であり、法人は民法その他の法律の規定によってのみ成立する(法人法定主義、民法33条1項)。

 法人格を与える立法の方法には、そのつどの特別な立法によって行う特許主義(日本銀行等)、一般的な法律に基づいて主務官庁が裁量的に許可することによって行う許可主義(旧民法34条の社団法人・財団法人[1])、法律の要件を具備していれば主務官庁が必ず認可を与えなければならない認可主義(消費生活協同組合、農業協同組合等)、一般的な法律が定めた条件を備えていれば設立できる準則主義(会社、一般社団法人、一般財団法人等)がある[2]

 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う(民法34条)。

 法人はその特性によって、営利法人と非営利法人、社団法人と財団法人、内国法人と外国法人等に分類される。

 通常、ビジネスを行う「会社」は営利を目的とする社団法人であり、株式会社・合名会社・合同会社・合資会社の4形態がある(会社法2条1号)。

4つの形態の会社にはそれぞれ長所と短所があり、その長短を考慮して適切な形態を選択する。
次に、事業者側から見た長所と短所を例示する。
株式会社 (長所)出資者有限責任、社会の認知度が高い、資本金1円で可、上場可
(短所)決算公告が必要、役員改選義務がある、配当・会社機関等の法規制が多い
    ※上記の短所は、投資家にとって透明性が高いことを意味する。
合名会社 (長所)無限責任社員のみ、労務・信用の出資可、定款自治、決算公告不要
(短所)上場不可、経営者が無限責任、社会の認知度が低い
合同会社 (長所)構成員全員の有限責任、定款自治、決算公告不要、役員の任期無し
(短所)上場不可、社会の認知度が低い
合資会社 (長所)有限責任社員と無限責任社員が並存、労務・信用の出資可、定款自治、決算公告不要
(短所)上場不可、経営者が無限責任、社会の認知度が低い

 国税庁の2014年度の集計[3]によれば、活動中の法人企業数は合計261万社あり、その内訳は株式会社94.7%、合名会社0.2%、合資会社0.7%、合同会社1.5%、その他(企業組合、相互会社、医療法人等)2.9%である。これを資本金規模でみると、1,000万円以下が85.5%、1,000万円超~1億円以下13.6%、1億円超~10億円以下0.7%、10億円超0.2%であり、資本金1億円以下の企業が99.1%を占めている。

 会社の資本金の規模は、法律による規制や保護の対象にするか否かの基準にされることがある。

 たとえば、物品の製造・修理、情報成果物の作成、役務提供の委託等の取引において、発注者(=親事業者)が受注者(=下請事業者)を不当に取り扱わないように規制する下請代金支払遅延等防止法(通称、下請法)は、親事業者と下請事業者の区別を、売上高・利益・資産・従業員等ではなく資本金の大小によって行う。資本金が1,000万円以下の事業者が1,000万円超の事業者から委託を受ける場合は、その全ての取引が保護の対象になるので、日本のほとんどの事業者が、下請法で保護されていることになる。

 1年間の会社設立の総数は約11万社であり、このうち株式会社が80%を占める[4]。これらの新会社が、日本経済活性化の担い手になることが期待されている。

また、法人はさまざまな税法[5]において納税義務者になる。

近年、日本の歳入に占める法人税のウェイトは全体の約10%[6]であり、企業の利益計上額を増やして法人税収入を拡大する政策が検討されている。しかし、平成26年度の利益計上法人数は全体の33.6%であり、欠損会社[7]が66.4%を占める。約7割の企業が納税しないことを前提にして法人税のあり方を議論しても、建前と本音が錯綜して、納税者が賛同する説得的な結論は得にくい。

なお、企業法人には連結納税制度を適用することが認められている。納税の完全支配関係にある内国法人をすべて一つの納税単位として法人税を納付することにつき国税庁長官の承認を受けた連結親法人(法人税法4条の2、同法6条の2)は1,493社(この連結子法人数は10,711社)に上る。

 以降、法人の大半を占める株式会社について学ぶ。



[1] 社団法人・財団法人について許可主義が採られていたが、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(2008年12月施行)」によりこの両法人の設立が準則主義に変更された。〔旧民法34条〕学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。〔2006年改正民法33条2項〕学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。

[2] 日本では自由設立主義は認められていない。

[3] 平成26年度分「会社標本調査」調査結果(国税庁)より。

[4] 法務省「登記統計 統計表」によれば、2015年の設立登記の総件数は111,238件で、このうち株式会社は88,803件(2014年86,639件、2013年81,889件、2012年80,862件)である。

[5] 法人税法、消費税法、関税法、登録免許税法、印紙税法、自動車重量税法他。なお、所得税法は給料や報酬の支払いをする会社等を源泉徴収義務者として源泉徴収した所得税を国に納付すべきことを定める(所得税法183条他)。

[6] 国の平成27年度(2015年度)一般会計当初予算の歳入総額96.3兆円の内訳は、所得税16.4兆円(17.1%)、法人税10.9兆円(11.4%)、消費税17.1兆円(17.8%)、国債発行による公債金36.8兆円(38.3%)等である。

[7] 連結納税欠損法人の割合が多い業種(平成26年度)は、料理飲食旅館業78%、出版印刷業78%、繊維工業77%である。

 

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