LIXILグループ、社外取締役候補者7名の連名によるメッセージを公表
――株主提案には反対を表明、これを受け提案株主からは質問状も――
LIXILグループは5月30日、6月25日開催予定の定時株主総会において会社提案の社外取締役候補者として指名されている7名が同社に対し「株式会社LIXILグループの経営正常化へ向けた重要メッセージ」(以下「メッセージ」という)を提出したとし、これを公表した。
指名委員会等設置会社である同社では5月13日、指名委員会での決定内容を支持するとして定時総会の取締役候補者を取締役会で決議。指名委員会において「真摯な審議の結果、当社が提案する取締役候補者は、現任取締役を含まない構成に刷新することが相当であるとの結論に至りました」として決定された取締役候補者8名は全員が新任候補者で、うち7名を社外者とするものであった(詳細について、SH2549 LIXILグループ、現任者を含まない構成に刷新する取締役候補者を発表 (2019/05/22)既報)。
同社からはその後、5月17日・20日と各1名に関する「追加取締役候補者に関するお知らせ」が発表され、計2名を追加。結果、定時総会における会社提案の取締役候補者は全員が新任で計10名(うち社外9名・社内1名)、現任取締役2名により株主提案されている取締役候補者は当該現任者2名を含む計8名、うち2名は会社提案と重複している状況となっている。
同社が31日に発表した「第77回定時株主総会の上程議案に係る補足説明資料」では「社外取締役候補者による会合の実施状況」が明らかにされており、①5月20日(同社が直面する課題の把握、機関投資家株主・幹部社員等からの要請事項の把握)、②5月27日(現在の経営執行部・上級幹部社員との対話を実施)、③5月28日(新たなガバナンス体制・執行体制の在り方の検討、次期CEOに関する検討)の計3回の会合を経て、同社に対して「メッセージ」が提出された。
公表されたメッセージによれば、このような複数回にわたる会合結果、公式情報、同社経営陣・上級幹部社員らと行った対話の結果も踏まえ「同社の経営正常化へ向けた重要メッセージ」として発信したとされており、社外取締役候補者7名の連名(株主提案と重複する2候補の名は記載されていない)により関係各位に向けたものとなっている。要点は「1. 現任取締役を刷新し、速やかに対立構図を解消するべきである。」「2. これまでの経営をめぐる諸議論に終止符を打って上級幹部社員など皆実務に従前通り精励し、全社一丸となれる経営執行体制の継続を最優先とすべきである。」「3. 次期CEOの選定プロセスを開始している。」の3点。
上記1をみると、現任取締役を刷新するなどの指名委員会の判断は「適切かつ合理的なものである」として指名委員会の決定を支持するとともに、指名を受けた社外取締役候補者として「創業家影響力と派閥主義を排除し、真に独立した立場から、株主価値実現のために監督機能を発揮することを確約する」と述べている。また、株主提案の取締役候補者については会社提案と重複する2名を除き「支持できず、承認されるべきでない」とし、その理由として(1)株主提案には現任取締役が含まれ、完全に新しい取締役会を実現するという目的に合致しないこと、(2)株主提案が目的としたコーポレートガバナンス強化は、前取締役の影響が排除されることをもってこそ、その目的が達成されること、(3)仮に会社提案に係る取締役候補者が選ばれ、さらに株主提案に係る取締役候補者に含まれる現任取締役も再任されることとなれば、内部対立や取締役会の肥大化に伴う経営意思決定の遅れなどによる混乱長期化が避けられず、株主価値を棄損する恐れが極めて高いことを挙げている。
このメッセージを受け、株主提案を行っている現任取締役の瀬戸氏は6月3日、ウェブサイト上で「会社提案取締役候補への質問状」を公開。同社指名委員会の委員長・委員各位に宛てたもので、今回の件を社内対立として喧嘩両成敗のような形で処理するのが最善とする姿勢では今後が懸念される、同氏との対話を拒否し株主総会当日まで対立を助長したのは会社提案の候補者の方々であるなどとしつつ、指名委員会が決定した4名の取締役候補者について「適格性の疑問点」を指摘し、書面での回答を要請した。
この質問状を巡って同社は6月5日、「株主提案者からの質問状に関する補足説明」と題するプレスリリースを発表。質問状の内容について(株主提案者である現任の)取締役としての守秘義務の観点から強い懸念を有していると表明するとともに、質問状で指摘された疑問点について主に機関投資家・株主に向けて説明・反論を行っている。