◇SH2795◇日本弁護士連合会、民事裁判手続のIT化に伴う本人サポートに関する基本方針 ――日本司法書士会連合会では相談センターにおける新規事業の検討も (2019/09/26)

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日本弁護士連合会、民事裁判手続のIT化に伴う本人サポートに関する基本方針

――日本司法書士会連合会では相談センターにおける新規事業の検討も――

 

 日本弁護士連合会(菊地裕太郎会長)は9月12日、「民事裁判手続のIT化における本人サポートに関する基本方針」を定め、公表した。日本司法書士会連合会(今川嘉典会長)においても9月17日、「民事裁判手続のIT化における本人訴訟の支援に関する声明」を公表している。

 いずれも、国の喫緊の課題として検討が進められている民事裁判手続のIT化を巡り、IT技術の利用が困難となりうる、とりわけ本人訴訟の当事者を対象に連合会としての基本的な取組方針を明らかにしたもので、日弁連では地方裁判所におけるIT化導入を念頭に置いて、日司連ではその後さらに簡易裁判所において導入されることを視野に入れ、表明された。

 日弁連の基本方針は、(1)本人訴訟でIT技術の利用が困難な当事者本人に対して裁判を受ける権利を実質的に保障して必要な法律サービスを提供することを可能とするため、IT面についても必要なサポートを提供する、(2)サポートの内容については、裁判所・日本司法支援センター(法テラス)等の公的機関によるサポート体制の充実度との調整を図り、また各弁護士会の実情に応じて人的・物的体制等も含め、IT化の実施時までに具体的に検討を進める、(3)IT化に伴い裁判を受ける権利に支障が生じる場合は国がその責任において支障を除去することは当然であり、日弁連としては市民の権利を擁護する使命に基づき、地方裁判所における本人訴訟のIT面のサポートを提供するものであるが、併せて国に十全なサポート体制の構築や支援を求めるとともに、最高裁判所・法務省・法テラスなど関係機関と緊密に連携協議していく――の3本柱。なお、提案に至った背景を説明する「第2 基本方針提案の理由」の「1 民事裁判手続のIT化」「2 本人サポートの必要性」では、商事法務研究会において開催される民事裁判手続等IT化研究会(座長・山本和彦一橋大学大学院教授。本年9月19日に第13回会合を開催)での検討状況に触れながら議論の進捗を整理し、また、IT化に伴ってIT面のサポートに便乗するなどした非弁活動が増加するといった懸念についても言及しており、適宜参考とされたい。

 地裁における本人サポートについて、日弁連では内閣官房「民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議」での指摘を引用しながら、(ア)IT機器の提供や利用方法の教示などの純粋な電子化支援サービス(ITリテラシー支援策)である形式サポートと、(イ)法的助言などを伴う法律サービスとセットとなったサポート業務(実質サポート)とに区分したうえで、(イ)を弁護士のみがなしえ、弁護士または弁護士会が担う必要があるものと位置付けている。

 その具体的な内容として現時点での想定を、①弁護士によるサポート:民事裁判遂行に必要な本人サポートの実施、法的助言などの法律サービス(事件の受任を含む)の提供、②弁護士会によるサポート、③日弁連による弁護士会に対するサポート支援とに整理。②では、①のような弁護士を紹介するサービスに加えて「各弁護士会の実情に応じて会内施設に、民事裁判手続のIT化に対応した機器を設置するなど」のサポートを挙げるが、一方で、裁判所の協力を得て裁判所のスペースを使用して実施することも考えられること、本人サポートが適切に機能するためには本人がいったんアクセスした裁判所窓口・各種の相談機関等から弁護士会等に適切につなぐための連携枠組みを十分に確保する必要があることを指摘した。

 日司連の声明では、(1)本人訴訟の当事者をかねて支援してきたこと、(2)司法書士が全国438の簡易裁判所のうち433の管轄区域に存在していること(本年5月1日時点)を説明しつつ、(3)登記手続においてすでに導入されているオンライン申請制度を巡っては、平成29年度時点の利用率が約70.2%にも上っていることを強調し、「民事裁判手続のIT化を推進する場面においても、これまでに培ったIT利用の知見やスキルを積極的に提供したい」と述べる。

 そのうえで、今後積極的に検討・対応していきたいとするサポート内容として、①9月11日現在、全国157箇所で稼動する司法書士会総合相談センターの窓口において、日司連の支援の下、IT機器を設置し、本人訴訟の当事者に対して民事訴訟の追行に必要なIT面のサービスを提供する事業を開始すること(機器の貸与にとどまらず、裁判書類の提出・閲覧・相手方提出書類の入手等のための支援なども考えられる)、②全国各地に存在する司法書士事務所において、司法書士が本人訴訟の当事者の依頼に応じ、従前の業務に加え、必要なIT面のサポートサービスを提供すること――を挙げている。

 

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