◇SH1676◇タイ:ICO(Initial Coin Offering)と仮想通貨に関するタイの現状 佐々木将平(2018/02/28)

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タイ:ICO(Initial Coin Offering)と仮想通貨に関するタイの現状

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 佐々木 将 平

 

 タイの携帯電話販売会社Jaymart Pclは、タイの上場企業として初のICO(initial coin offering)を実施することを公表した。同社のホワイトペーパーによれば、ICOは同社グループのVC部門であるJ-Venturesを通じて行われ、調達資金は、ブロックチェーン技術と統合された分散型デジタルレンディングプラットフォームの開発に活用されることが予定されている。2月14日から始まったICOのプレセールにおいては期間満了前に販売予定のトークンが完売した模様であり、タイにおいても仮想通貨やICOに対する関心が高まっていることが伺える。

 ICOについては、中国のように全面禁止の方針を取る国もあるが、タイの規制当局はICO自体を禁止するのではなく、その実質によっては証券取引法の規制が及ぶ可能性があることを注意喚起するという対応を取っている。具体的には、タイ証券取引委員会は、昨年9月14日にICOに対するコメントを公表しており、その中で、ICOにより発行されるトークンの中には経済的なリターンや権利義務が証券取引法において規制される有価証券に類似するものも存在することを指摘している。したがって、現状の法制度の下でも、ICOの内容によっては証券取引法の適用があると判断される例もあり得るので、今後ICOを行う場合には、プロジェクト毎にトークンの法的性質を検討する必要がある。なお、Jaymart社のICOについては、現時点では証券取引委員会が何らかの処分・措置を行ったとの報道はない。

 仮想通貨に関しても、現時点では法制度は未整備の状況であるが、タイ中央銀行は、2月12日付で、各金融機関に対して仮想通貨に関する事業(仮想通貨の取引、投資、取引のためのプラットフォームの提供、クレジットカードでの仮想通貨購入を認めること及び仮想通貨購入の助言を顧客に対して行うこと)に関与しないことを要請する通達を行っている。当該通達においては、仮想通貨は法的な通貨ではなく、資金洗浄やテロ資金の供給等の違法行為に利用されるおそれがあるという当局の見解が示されている。

 今後の規制の方向性については、証券取引委員会が、昨年10月から本年1月までの期間パブリックコメントを実施済みであり、これに基づき、ICOと仮想通貨に関する規制の枠組みが検討されている(第一四半期中に規制が取りまとめられる予定との報道がなされている)。パブリックコメントにおいて証券取引委員会から提案されていた規制の概要は以下の通りである。

  1.  •  証券取引法において、投資参加(Investment Participation)という概念を新設する。投資参加は、「単位毎に分割され、標準化された条件を有する、権利を表章する証券で、公衆から資金調達を行うために発行され、集合的に管理される出資からの収益に保有者が参加する権利を有するものであり、投資家が日々の運営に対するコントロールを有しないもの」と定義されており、証券取引法の既存の有価証券に該当するものや、資産やサービスの消費や利用のための権利として契約に基づき発行される権利(前払式証票に相当するもの等が想定されていると思われる)は除外される。
  2.  •  機関投資家、ベンチャーキャピタルファンド、プライベートエクイティファンド及び一定の富裕層を除く一般の投資家については、30万バーツ(約100万円)を1プロジェクトあたりの投資額の上限とする。これに加えて、投資家が全てのICOに対して行うことのできる合計投資額について上限(投資家一人あたりの12か月以内の投資額が3百万バーツを超えないこと)を設けることも検討されている。
  3.  •  ICO市場の透明性・信頼性確保のために、全てのICOについて、証券取引委員会が認めるICOポータル(5百万バーツ以上の資本金を有するタイ国内で登録された法人)を通じて実施することを求める。ICOポータルはICOに関する各種業務(各ICOについてのデューデリジェンス、投資家の投資上限額の確認、本人確認等)を行う。証券取引委員会は、ICOを直接スクリーニングするのではなく、あくまでICOポータルを通じた監督を行う。
  4.  •  ICOにより発行されるデジタルトークンが、証券取引法の有価証券に該当することとなる場合には、当該ICOの発行・募集以外の業務(たとえば、仲介、投資助言、取引所の運営)に関与する者は、必要な許認可等を取得しなければならない。

 上記はあくまで証券取引委員会の試案であり、具体的な規制の内容については、今後の動向を注視する必要がある。

 

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