◇SH2955◇企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第88回) 齋藤憲道(2020/01/09)

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企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

2. 要件2 「見守り役」の6者が連携して監査の効率と品質を高める

(4) 行政機関(国、地方公共団体)

 国・地方公共団体の制度は、全ての企業等に対して公正・公平・厳格に適用される。

 このため、行政機関には、多くの法律によって定期的又は不定期に報告徴収・立入検査等を行い、実態を把握して、業務改善命令等の是正措置を講じ、重大な違反に関しては営業停止・課徴金納付等の命令を行う権限が与えられている。

 しかし、行政機関が法定の権限を行使して調査・検査等しても、意図的かつ組織的に行われた法令違反を全て見抜くのは難しい。

 行政機関としては、特定の事案の調査・検査等に先立って企業の関係部門の実態に係る情報を収集する[1]とともに、その実施に際して「公益通報」の受付窓口(いわゆる「2号通報」の窓口)[2]が設置されている旨を、調査・検査先等を行う対象部門及びその周辺で積極的にアピールする等して、真実の把握に努めたい。

  1. (注)「公益通報」を行った者は、公益通報者保護法により保護される。

 

① 国が行う審査・調査・検査(例)

 1) 各企業に共通して適用する法令の遵守状況を調査等する。

  1. 例  税務調査(国税局)、税関事後調査(税関)、法令遵守立入検査(経済産業省〔安全保障貿易管理〕)、下請法調査(公正取引委員会、中小企業庁)、労働法関係の臨検監督指導(労働基準監督署)、独占禁止法違反被疑事件の立入検査(公正取引委員会)
  2.   (参考) 警察が犯罪を認知する端緒には、告訴、告発、被害者・被害関係者の届出(110番通報を含む)、第三者からの届出(110番通報を含む)等がある[3]

 2) 企業の業法[4]遵守は、主務官庁が確保する。

 企業にとって「業法」は事業の存続に係る重要な法律である。これに適合しなければ事業を行うことができず、違反した場合は営業停止・罰金等の処分・処罰を受ける。

  1. ⅰ) 企業の申請を審査等し、事業を行うのに必要な許可・認可・承認・登録等を行う。
  2. ⅱ) 業務運営の状況を監視・報告徴収・検査等する。
  3.    法令・基準・規格の運用状況を確認するために、コンピュータ・システムのプログラム検査が必要な場合がある[5]
     計測・測定等においてシステム評価[6]を行う場合は、その専門家を評価メンバーに加える。
     監視・報告・検査等の手続きを簡素化する手法の一つとして、法令・基準・規格等を電子化して利用することが考えられる。
    例 法令・基準・規格等の規定を遵守する「画一的業務」、技術規格等の「標準ソフト」や「マスター・ファイル」を制定者である国等が提供し、企業がこれを利用すれば、企業の現場の業務を簡素化できるだけでなく、行政も審査等を簡単に行うことが可能になる[7]
     ただし、ソフトやデータの提供者(国等)と利用者(企業)の双方において情報セキュリティを確保する必要がある。

 3) 人・金・物の越境規制に関する法令の遵守を確保する。

 入国・出国審査(VISA審査を含む)、外国送金手続、輸出入の通関・検疫手続に関する法令を厳正に運用し、企業にこれを遵守させる。

 4) 公的な事故調査委員会

 特定の事故の原因究明及び再発防止策の提言を中立・公正な立場で行い、事業の安全性の確保・向上(事故防止、被害軽減等)を図る。

 例1) 運輸安全委員会 (運輸安全委員会設置法)

 航空・鉄道・船舶の重大事故及びインシデントの発生原因や被害原因を究明し、原因関係者に必要な施策・措置の実施を求め、事故の防止・被害軽減を図る。

 例2) 消費者安全調査委員会 =通称、消費者事故調=(消費者安全法5章1節)

 生命・身体分野の消費者事故から教訓を得て、予防・再発防止を図る。

  1. (参考) 医療事故調査制度(医療法第3章)
  2.    医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い、その調査報告を民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター[8])が収集・分析して、報告者に結果報告等を行う。調査従事者の研修・再発防止の普及啓発等により、医療事故の再発防止を図る。
     

② 地方公共団体が行う立入検査等(例)

  1.   建築基準法(建築主事、市町村又は都道府県の職員[9])、都市計画法[10](都道府県知事・市町村長)、医療法(都道府県福祉保健部門等[11])、医薬品医療機器等法(都道府県知事・保健所設置市長等[12])、火薬類取締法(都道府県の警察)、消防法(市町村の消防本部・消防署等)、下水道法(都道府県・市町村の下水道局等)、廃棄物処理法(都道府県・市町村等)、大気汚染防止法(都道府県・指定都市等の環境部門等)

 守秘義務の壁 (行政における守秘義務)

 行政に関わる守秘義務は、公務員の身分に関する法律(国家公務員法、地方公務員法)、及び、公務員等が担当する職務に関する法律によって定められている。それぞれの法律が違反者に対して刑事罰・資格剥奪等の制裁を科している。

 最近は、法律で秘密関係を解除する例が現れている。

  1. (例) 介護保険法は、市町村が被保険者等に関する調査を行うために、被保険者等に対して文書・物件の提出を命じ、自らの職員に質問させ、官公署に必要な文書の閲覧・資料提供を求め、銀行等に報告を求めることができる旨を定める[13]。介護保険に関しては、保険者と被保険者の間で秘密関係はないといえる。

(1) 公務員の身分に基づく守秘義務を定める法律

 ⅰ) 国家公務員法 100 条(秘密を守る義務)[14]の要点

  1. ・ 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。退職後も同様とする。(1項)
  2. (注)「職務上知ることのできた秘密」とは、職員が職務に関連して知り得たすべての秘密をいう。例えば、税務署の職員が税務調査によって偶然知った納税者の家庭事情、労働基準監督署の職員が調査過程で偶然知った調査対象企業の経営状況。
  3. ・ 法令による証人・鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。(2項)
     この許可は、法律・政令の定める条件・手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。(3項)
  4. ・ 上記の1項~3項の規定は、人事院で扱われる調査・審理の際人事院から求められる情報に関しては適用しない。
     人事院が正式に要求した情報について人事院に陳述・証言を行わなかつた者は、本法の罰則の適用を受ける。(4項)
  5. ・ 罰則:違反者(退職後を含む)は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。(109条)
  6. (注) 公益通報(内部告発)と守秘義務の関係
     公益通報における「通報対象事実」は犯罪行為の事実等を指すので、一般的に、公益通報に関して守秘義務違反の問題は生じない。ただし、職務上知り得た「通報対象事実に該当しない秘密情報」を外部に漏らすと、守秘義務違反になり得る。

 ⅱ) 地方公務員法 34条(秘密を守る義務)の要点

  1. ・ 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。退職後も同様とする。(1項) 
  2. ・ 法令による証人・鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、任命権者(退職者については、その退職した職又はこれに相当する職に係る任命権者)の許可を要する。(2項)
     この許可は、法律に特別の定がある場合を除く外、拒むことができない。(3項)

 ⅲ) 国・地方の公務員が「法令による証人・鑑定人等」として「職務上の秘密に属する事項」を発表する場合(例)

  1. ・ 民事訴訟(民事訴訟法[15])証人義務、公務員の職務上の秘密に関する尋問、不出頭に対する過料・罰金等
     鑑定義務、証人尋問の規定の鑑定への準用(職務上の秘密について意見を述べる場合等)
  2. ・ 刑事訴訟(刑事訴訟法[16])証人尋問、公務員が知り得た職務上の秘密に関する尋問
  3. ・ 議会関係  国会(衆議院、参議院)の国政調査に際しての出頭・証言、又は、書類の提出・提示(議院証言法1条)
     地方公共団体の議会の100条調査(地方自治法100条4項[17]
  4. ・ 行政委員会等が証人喚問、又は、書類・その写しの提出を求めた場合
     国の人事院(又はその指名する者)が行う人事行政の調査(国家公務員法17条2項)
     人事委員会又は公平委員会が行う法律・条例に基づく権限の行使(地方公務員法8条6項)

     

(2) 公務員等の担当職務に係る守秘義務を定める法律(みなし公務員・委託を受けた者を含む)

 担当業務に関して知り得た秘密を漏らすことが禁じられ、違反者には罰則が科される。

 職務の担当者は、国家公務員法又は地方公務員法と、職務を規定する法律の「2つの守秘義務」を負う。

 公共性・公益性の高い業務に従事する者は、その業務に関する刑法その他の罰則の適用において、法令により公務に従事する職員とみなされる場合がある。(「みなし公務員」といわれる。)

  1. (注) みなし公務員規定によって適用される犯罪類型には、贈収賄、公文書偽造、公務執行妨害等がある。

地方税法22条(秘密漏えいに関する罪)
 地方税に関する「調査に関する事務」又は「徴収に関する事務」に従事している者(退職後も同じ)の守秘義務

労働基準法105条 労働基準監督官(退職後も同じ)の守秘義務

・労働組合法23条 労働委員会の委員・職員(退職後も同じ)の守秘義務
 中央労働委員会の地方調整委員(退職後も同じ)も同様の義務を負う。

・建築基準法77条の8第1項、77条の25第1項、77条の35の10第1項(秘密保持義務)
 -指定建築基準適合判定資格者検定機関の役員及び職員(退職後も同じ)
 -指定確認検査機関(法人の場合はその役員)、その職員(確認検査員を含む)(退職後も同じ)
 -指定構造計算適合性判定機関(法人の場合はその役員)、その職員(構造計算適合性判定員を含む)(退職後も同じ)

 上記の業務に従事する者は、みなし公務員とされる。[18]

・住宅品質確保促進法69条1項 指定住宅紛争処理機関[19]の紛争処理委員・その役員・職員(退職後も同じ)の守秘義務委員等はみなし公務員とされる。69条2項

船員法109条 船員労務官[20](退職後も同じ)の守秘義務

・精神保健福祉法51条の6 精神障害者社会復帰促進センターの役員・職員(退職後も同じ)の守秘義務

・児童福祉法61条 児童相談所において、相談・調査・判定に従事した者の守秘義務

・独占禁止法39条 委員長・委員・公正取引委員会の職員(退職後も同じ)の守秘義務

・農業委員会法14条 委員(退職後も同じ)の守秘義務

・運輸安全委員会設置法 12条1項 委員長・委員(退職後も同じ)の守秘義務
 19条2項 委員会から調査等の事務の委託を受けた者(退職後も同じ)の守秘義務
 19条3項 受託者はみなし公務員とされる。

・消費者安全法 11条の5 消費者安全確保地域協議会の事務従事者(退職後も同じ)の守秘義務

・刑事訴訟法103条[21](公務上秘密と押収)

・犯罪捜査のための通信傍受に関する法律28条[22](関係者による通信の秘密の尊重等)
 (参考) 犯罪捜査規範9条[23](秘密の保持)

  1. (参考) 国家資格に基づく職務に伴う守秘義務を定める法律
  2.    特定の業務に関する法令・実務に精通し、品位を保持する者として国から特定の資格を与えられた者は、その資格に係る業務を通じて知り得た秘密を漏洩・窃用してはならない。
     これに違反した者には、違反の程度に応じて、懲戒・登録抹消・免許取消等の処分が行われ、懲役・罰金等の刑事罰が科される。

・刑法134条1項 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、(弁護人)、公証人又はこれらの職にあった者に守秘義務を課す。

  1. (注) 医師の守秘義務は、医師の職業倫理を示す「ヒポクラテスの誓い[24]」の中にも記されている。「WMA医の国際倫理綱領[25]」は、医師の守秘義務について「患者の権利を尊重しなければならない」とした上で、①患者が同意した場合、又は、②患者や他の者に対して現実に差し迫って危害が及ぶおそれがあり、守秘義務に違反しなければその危険を回避することができない場合は、機密情報を開示することが倫理に叶うとしている。[26]
     この守秘義務は、社会的要請や法令に基づいて解除される場合がある[27]。日本の法律にも、患者の情報の開示(法廷証言、通報等)を求める例がある[28]

・弁護士法23条(秘密保持の権利・義務)

・司法書士法24条(秘密保持義務)

・税理士法38条、54条(税理士又は税理士法人の使用人・その他の従業者についても税理士と同じ守秘義務を課す。)

・弁理士法30条(守秘義務)

 



[1] 日本の国税庁は、企業が提出すべき「法人事業概況説明書」の「経理の状況」欄に「社内監査」実施の有無の記載を設けている。

[2] 「通報対象について処分又は勧告等の権限を有する行政機関」として外部の労働者等から受け付ける通報(公益通報者保護法3条2号の通報)

[3] 「平成29年の犯罪」警察庁より。2017年(平成29年)の刑法犯総数は915,042件(内訳:窃盗犯71.6%(非侵入盗37.9、乗物盗25.8、進入盗8.0)、粗暴犯6.6、知能犯5.1、風俗犯1.1、凶悪犯0.5、その他15.1)であり、罪種別の認知の端緒を「知能犯(犯罪総数47,009件)」についてみると、告訴1,056、告発361、被害者・被害関係者届出36,827、第三者届出1,427、他7,338である。「知能犯」の内訳は、次の通りである。詐欺42,571件(告訴595、告発143、被害者・被害関係者届出35,239、第三者届出945、他5,649)、業務上横領771件(告訴310、告発22、被害者・被害関係者届出393、第三者届出2、他44)、横領642件(告訴38、告発4、被害者・被害関係者届出478、第三者届出16、他62)、文書偽造1,695件(告訴63、告発184、被害者・被害関係者届出256、第三者届出246、他946)、支払用カード偽造609件(告訴0、告発1、被害者・被害関係者届出73、第三者届出67、他468)、有価証券偽造85件(告訴2、告発2、被害者・被害関係者届出55、第三者届出10、他16)、印章偽造66件(告訴1、告発0、被害者・被害関係者届出6、第三者届出16、他43)、賄賂42件(告訴0、告発3、被害者・被害関係者届出0、第三者届出3、他36)、背任64件(告訴41、告発1、被害者・被害関係者届出17、第三者届出0、他5)

[4] 名称の末尾に「業法」がつく例が多いので一般に「業法」といわれる。内閣府(銀行法、貸金業法)、総務省(消防法、電気通信事業法、放送法)、財務省(酒税法、通関業法)、厚生労働省(医薬品医療機器等法、旅館業法)、農林水産省(肥料取締法、JAS法)、経済産業省(ガス事業法、電気事業法)、国土交通省(道路運送車両法、建設業法、建築基準法、旅行業法)、警察庁(古物営業法、警備業法、風俗営業法)他

[5] 自動車排ガス規制への適合性審査において、ドイツの製造業者(フォルクスワーゲン)が不正ソフトを使用して合格していた事件がある。

[6] 「システム監査基準(経済産業省 2018年(平成30年)4月20日)」は、システム監査で用いる方法として、チェックリスト法、ドキュメントレビュー法、インタビュー法、ウォークスルー法、突合・照合法、現地調査法、コンピュータ支援監査技法を例示する。

[7] 国税庁では、電子申告(e-TAX)を推奨している。〔対象例〕所得税、消費税、法人税、酒税、印紙税

[8] 医療法6条の15第1項に基づいて厚生労働大臣が定める団体。「一般社団法人日本医療安全調査機構」が指定されている。

[9] 特定行政庁の命令若しくは建築主事の委任を受けた市町村若しくは都道府県の職員。(建築基準法12条6項、7項)

[10] 国土交通大臣・都道府県知事・市町村長は立入調査・立入検査を行うことができる。(都市計画法25条1項、82条1項)

[11] 例えば、医療法25条1項に基づく病院・診療所等への立入検査(都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長)

[12] 医薬品医療機器等法69条 厚生労働大臣・都道府県知事・保健所設置市又は特別区の市長又は区長。

[13] 介護保険法202条1項、203条、214条

[14] 最高裁判所(昭和52年12月19日)は、「「秘密」であるためには、国家機関が単にある事項につき形式的に秘扱の指定をしただけでは足りず、非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護すると認められるに値すると認められるものをいう。」としており、実質的秘密が守秘義務の対象であると解される。(「自治実務セミナー36巻7号」18頁 良書普及会)

[15] 民事訴訟法190条、191条1項、192条、193条、212条1項、216条

[16] 刑事訴訟法143条、144条

[17] 地方自治法100条1項・4項は、議会が選挙人・関係人の出頭・証言・記録提出を求めることができ、関係人等から「公務員たる地位において知り得た事実について、職務上の秘密に属するものである旨の申立を受けた」ときは、その官公署の承認がなければ、事実に関する証言・記録の提出を請求することができない旨を定める。ただし、承認を拒む官公署は、その理由を疏明しなければならない。

[18] 建築基準法77条の8第3項、77条の25第2項、77条の35の10第2項

[19] 紛争処理機関は、紛争処理を行う過程で事件当事者のプライバシー情報等の秘密情報を多く知り、また、支援センターを経由して指定住宅性能評価機関に対してその秘密情報(守秘義務を負って保有する情報)を請求する権限を有する(住宅品質確保促進法71条)。

[20] 船員労務官は、国土交通大臣が任じ(船員法105条)、必要があると認めるときは船舶所有者又は船員に対して船員法・労働基準法・船員法に基づく命令の遵守に関し注意喚起又は勧告ができる(同法106条)。また、船員法・労働基準法・船員法に基づく命令の違反の罪について刑事訴訟法に規定する司法警察員の職務を行う(同法108条)。

[21] 刑事訴訟法103条「公務員又は公務員であつた者が保管し、又は所持する物について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ、押収をすることはできない。但し、当該監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。」

[22] 検察官等通信の傍受に関与し、又は通信の内容を職務上知り得た者は、通信の秘密を不当に害しないように注意し、かつ、操作の妨げにならないように注意する。

[23] 昭和32年国家公安委員会規則第2号 (9条1項)秘密の厳守、及び、被疑者・被害者等の事件関係者の名誉を害してはならない。(9条2項)告訴等犯罪捜査の端緒又は犯罪捜査の資料を提供した者の名誉・信用を害さないように注意する。

[24] 紀元前5世紀(2,500年前)にギリシャの医師ヒポクラテス(医学の祖とされている)の弟子が編纂した「ヒポクラテス全集」の中に記された職業倫理に関する宣誓文。

[25] THE WORLD MEDICAL ASSOCIATION, INC.“International Code of Medical Ethics”(2006年10月修正)

[26] 日本医師会HP(2019年9月10日)

[27] 「WMA医の倫理マニュアル(Medical Ethics Manual)2015年第3版」は、守秘義務が、通常、解除されるケースとして次の場合を挙げている。①医師・看護師・検査技師・学生等が適切なケアを提供し、学生が臨床医学を学ぶために、患者の医療情報へのアクセスを求めること。患者が医療提供者と異なる言語を使う場合に通訳を用いること。自分の医療について決定できない患者の場合、患者の代わりに決定し、治療に必要な情報を他者に与えること。医師が死亡者の家族に死因を伝えること。②法的な要請に従う場合(例えば、多くの法域に、自動車の運転に適さないとみなされる指定疾患の患者や、児童虐待の疑いがある患者について報告を義務づける法律がある。)。なお、日本の最高裁判所は「医師が、必要な治療又は検査の過程で採取した患者の尿から違法な薬物の成分を検出した場合に、これを捜査機関に通報することは、正当行為として許容されるものであって、医師の守秘義務に違反しない。」としている(平成17年(2005年)7月19日)。

[28] (例) 捜索・押収(刑事訴訟法102条2項)、捜査における公務所等照会(刑事訴訟法197条2項)、調査の嘱託(民事訴訟法186条)、弁護士照会(弁護士法23条の2第2項)、証人尋問(刑事訴訟法143条、民事訴訟法190条)、届出・報告・通報・通告の義務(児童福祉法25条1項・2項、児童虐待防止法6条1項・3項)

 

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