2020年3月18日号
ベトナム:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
はじめに
欧米における急速な渡航制限・行動制限の拡大に伴い、新型コロナウイルスの国内外における事業活動への影響が一層深刻化してきています。感染拡大に伴う国内の各種法律問題に加え、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、当事務所の海外オフィスと連携して速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本ニュースレターは感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本ニュースレターの内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本ニュースレターの内容は、特段記載のない限り、2020年3月17日夜時点で判明している情報に基づいています。
全体概況 死亡者:0人、感染者数:66人(3月17日現在) 中国と国境を接して経済的結びつきも強いベトナムでは、当初から警戒を強め、早期に中国とのフライトの運行停止、旧正月明けからの全国の学校の休校、感染者が複数出た北部の村の隔離などの措置を採っていた結果、2月14日以降新規の感染症例は確認されていなかった。しかし、3月6日以降欧米からの帰国者とその濃厚接触者の感染が相次いで発覚した。ベトナム政府は感染者との接触者約3万人を隔離するなど抑え込みに全力を注いでいる。また、18日から事実上ほぼすべての外国人の入国を制限する措置を採ることを発表した。 |
主な政府発表
- ・ 感染病防止法及び保健省の決定[1]に基づき、感染者については病院での隔離、感染者との直接の濃厚接触者(F1)については病院での隔離又は集中隔離、F1との濃厚接触者(F2)及びF2との濃厚接触者(F3)については自宅での隔離が強制される。濃厚接触には、同じ飛行機に搭乗していた場合も含まれる。
- ・ 労働・傷病兵・社会問題省は、2月2日付で「感染地」からの外国人への新規労働許可証の発行停止を関係機関に通知(第01/CD-LDTBXH号)。同省は、3月2日時点で在ベトナム日本国大使館に対して「中国や韓国の入国制限対象地域に過去の滞在履歴がない日本人については、通常どおり労働許可証の申請を受理し、発給業務を行っている」と回答したとのこと[2]であったが、3月16日現在、ハノイ市労働局は、「感染地」に日本も含むとして運用しているとの電話回答。ホーチミン市労働局は日本人への新規労働許可証の発行を続けているとのこと。
- ・ 副首相を委員長とするCOVID-19対策国家指導委員会を設置。
- ・ 税務総局は、関係機関に対して、COVID-19による損害を被った企業向けの納税期限の延期及び延滞利息の免除に関するガイドライン(第37/TCT-QLN号)を発行。
- ・ 公共の場でのマスク着用を義務付け。ハノイ市、ホーチミン市ではカラオケ店やバーなどの営業停止を指示。
渡航情報
- ・ ベトナム外務省は、18日以降①すべての外国人に対するビザの発給を30日間停止し、かつ、②ビザ免除での入国者、及び専門家・企業管理者・高技能労働者等(ベトナムで就労する外国人は、原則としてこれらのいずれかに該当するものと思われる)の入国について、新型コロナウイルス感染症の(ベトナム政府が認める)陰性証明書を所持していなければベトナムに入国できない、とした[3]。入国ができる場合でも、規定に従った検査、隔離措置等が採られる。これにより、ビザ保有の有無を問わず、18日以降の日本人(及びその他の外国人)のベトナムへの入国は事実上極めて困難になったものと考えられる。
その他
- ・ ベトナムでの感染者数は多くはないが、政府及び市民の警戒感は強い。ベトナム政府の徹底した水際対策のため、接触者として隔離されるリスクに警戒が必要である。
- ・ ベトナム現地法人の従業員に感染者が出た場合、政府から職場の一時閉鎖が命じられる可能性が高い。ベトナム労働法では、このような「危険な疫病」による閉鎖期間中の従業員に対する給与については、地域別最低賃金を下回らない範囲で労働者と合意した水準の賃金(通常の賃金の75%などと労働協約で合意されている例もある)を支払う必要があるとされている(労働法第98条第3項)。
(さわやま・けいご)
2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。
現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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