◇SH0491◇プロ向けファンド規制に関する金融商品取引法施行令及び内閣府令等の改正案の公表 深沢篤嗣(2015/12/01)

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プロ向けファンド規制に関する金融商品取引法施行令及び内閣府令等の改正案の公表

岩田合同法律事務所

弁護士 深 沢 篤 嗣

 平成27年11月20日、金融庁は、主に適格機関投資家等特例業務(以下「特例業務」という。)に関する金融商品取引法施行令や、金融商品取引業等に関する内閣府令等の改正案を公表した(以下、それぞれ「施行令案」、「業府令案」といい、公表された各改正案を総称して「本改正案」という。)。本稿では、これら改正案について概説する。

1 改正に至る経緯

 金融商品取引法(以下「金商法」という。)では、いわゆる有価証券の私募(金商法2条8項7号)や自己運用(同項15号)を業として行うためには、原則として金融商品取引業者としての登録(同法29条)が必要であり、各種の規制に服する。しかしながら、このような規制は、原則として一般投資家の保護を念頭においたものであって、専門的知識及び経験を有するプロ投資家(以下「適格機関投資家」という。)にまで貫徹させる必要性に乏しい。このような観点から、金商法は、適格機関投資家等に対して行われる有価証券の私募や自己運用については、一定の要件の下、「特例業務」として、上記登録を不要とし届出制としている(同条2項)。

 しかしながら、特例業務については、金融商品取引業者に比べ行為規制が緩いことや、上記のとおり登録制でないために業務改善命令等の行政処分の対象となっていないこと(別表参照)を悪用した詐欺的なファンドが横行し、一般投資家に被害を与えるケースが多発しているといった問題が指摘されており、実際に、証券取引等監視委員会が、特例業務届出者に対して禁止命令(金商法192条1項)を申し立てる事例も生ずるようになった[1]

 このような問題を受け、平成27年金商法改正で特例業務に関する規定の改正が行われ(以下「改正法」という。)、本改正案はこれに対応するものである。

2 改正の概要

 改正法及び本改正案による主な改正ポイント5点につき、以下概説する。

 ① 特例業務届出者の要件

 当局によるファンド実態の把握のため、ファンドの投資内容や勧誘対象、ファンドに出資する適格機関投資家の名称、役員等の履歴書の届出を義務付けるとともに(改正法63条3項3号、業府令案238条の2)、投資家等がファンドの実態を把握できるようにするため、代表者の氏名や主たる営業所の住所、電話番号等の公表が義務付けられることとされている(改正法63条6項、業府令案238条の5)。

 ② 適格機関投資家の位置付け

 実態を伴わない適格機関投資家として問題が多いとされた投資事業有限責任組合(LPS)の排除等のため、適格機関投資家が運用資産残高5億円未満のLPSのみの場合や、届出者と密接に関係する者等からの出資割合が2分の1以上である場合には、特例業務として認められないこととされている(改正法63条1項1号、業府令案234条の2)。

 ③ 行為規制の強化

 特例業務を行う場合には、当該特例業務届出者を金融商品取引業者と見なして、誠実義務、契約締結前に契約内容等を説明した書面を交付する義務、適合性原則等の行為規制が適用(改正法63条11項)されることとなり、また帳簿書類の作成及び事業報告書の作成・提出等も義務化された(改正法63条の4)。

 ④ 特例業務届出者に対するエンフォースメントの強化

 特例業務届出者等に対する報告・資料提出命令や、立入検査を行う権限が当局に付与され(改正法63条の6)、監督上の処分として、業務改善命令、業務停止命令、業務廃止命令等を行うことが可能となった(同63条の5)。また無届出や虚偽届出に対する罰則も強化された(同197条の2)。

 ⑤ 出資者の範囲の限定

 従前は、特例業務のファンドの出資者に規制はなかったところ、本改正により、出資者の範囲についても、法人については、上場会社や、資本金又は純資産の額が5000万円以上の法人等(施行令案17条の12第1項7号ないし9号)、個人については、保有資産が1億円以上で、証券取引口座を開設した日から1年以上経過している者(同14号、業府令案233条の2第3項1号)などといった制限が設けられることとされている。

3 施行日等

 改正法は、平成27年6月3日から起算して1年を超えない日において施行されることとされており、また本改正案に対しては同年12月21日までパブリックコメントに付されているところである。

 これら改正の施行後、既存の特例業務届出者については、施行日より6か月以内に、上記改正により追加された届出事項・添付書類を提出する必要がある。施行予定日の情報や経過措置等で必要となる提出書類に関する案内は、平成28年1月下旬から、金融庁のウェブサイトで情報発信が行われる予定とされており、パブリックコメント結果の公表とあわせて、注視する必要がある。

(別表)

販売関係の業規制・行為規制



[1] 証券取引等監視委員会による平成27年3月20日付申立て、同平成26年1月10日申立て等

 

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