監査役協会、「監査役の視点によるコーポレートガバナンス・コードの分析-適用2年目における開示事例等の分析-」を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 藤 原 宇 基
公益社団法人日本監査役協会ケーススタディ委員会は、適用開始から2年が経過した「コーポレートガバナンス・コード」(以下、「GC」という。)に対する各社の対応のうち、特に、⑴ 第4章(基本原則4 取締役会等の責務)における初年度からの開示の変化、⑵ 第4章以外で監査役が明記されている原則の開示内容の傾向、⑶ 監査役として関心の高い原則の開示事例等について調査・分析結果をまとめた報告書を公表した。
概要は以下のとおりである。
- ⑴ 第4章(基本原則4 取締役会等の責務)における初年度からの開示の変化
- 各原則を実施しない理由(「エクスプレイン」)については、概ね全体として、「コンプライ」とする比率が増加している傾向が見られた。適用1年目に「エクスプレイン」として開示した事例のうち、約5割がほぼ同様の内容で「エクスプレイン」として開示し、約4割が「コンプライ」したとして開示を取りやめている。
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要開示原則については、原則によっては適用1年目と2年目で内容にあまり変化のない記載事項も見られたが、GC適用をきっかけとして各社の対応が進んだと考えられるもの(補充原則4-11③等)について対応状況を詳細に説明・開示する例も見られた。
- ⑵ 第4章以外で監査役が明記されている原則の開示内容の傾向
- 原則1-5(いわゆる買収防衛策)、原則1-6(株主の利益を害する可能性のある資本政策)、補充原則2-5①(経営陣から独立した内部通報窓口の設置等)、原則3-1(情報開示の充実)、補充原則3-2①、②(監査役会による外部会計監査人の選定・評価基準の策定、独立性・専門性の確認。外部会計監査人と監査役との十分な連携の確保等)について、調査を行った。
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例えば、補充原則2-5①については、「経営陣から独立した内部通報窓口」を設置していないためエクスプレインしている事例が多く、独立した窓口は設置してないが、その上で、間接的に監査役等に報告がなされている旨を説明している事例などが見られた。
- ⑶ 監査役として関心の高い原則の開示事例等の分析
- 監査役として関心の高い原則((a) 原則4-11、補充原則4-11③(取締役会の実効性の分析・評価)、(b) 原則4-4、補充原則4-4①(監査役及び監査役会の役割・責務)、(c) 原則4-14(取締役・監査役のトレーニング))について、ガバナンス報告書の開示事例では読み取れない実務実態等について、インタビューやこれまでの公表資料等を参考に分析した。
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例えば、補充原則4-11③については、下記のような実効性評価プロセスを想定し、それぞれのプロセスにおける各社の対応を調査した。
- その結果、取締役会の実効性評価の必要性への認識は相当程度浸透しているものと思われるが[1]、ガバナンス報告書の開示内容からは、実効性評価のプロセスや内容が必ずしも明確でない事例に加え、評価の結果としての課題に対する改善策の実施とフォローアップについて十分な記載がなされていない事例が多く見られた。
本報告書においても述べられているが、監査役としては、本報告書の開示事例や他社のガバナンス報告書を参考にしながら、自社のGCへの対応が適切になされているかに加えて、自社のガバナンス報告書において株主や投資家に対して適切な情報開示がなされているかを確認することが重要である。