消費者庁、「景品表示法施行規則(案)」及び
「景品表示法第8条に関する考え方(案)」に関する意見募集を開始
岩田合同法律事務所
弁護士 泉 篤 志
平成27年11月25日、消費者庁は、「不当景品類及び不当表示防止法施行規則(案)」及び「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方(案)」に関する意見募集を開始した。このうち、後者[1]については、その金銭的なインパクト等から民間事業主の関心が特に高いと思われるため、以下概要につき紹介することとする。
まず、本考え方は、課徴金納付命令の対象行為となる「優良誤認表示」(商品やサービスの品質や規格等が優良であると誤認させるような表示。改正法5条1号)及び「有利誤認表示」(商品やサービスの価格等が有利であると誤認させるような表示。改正法5条2号)に該当する表示の考え方を示したうえで、課徴金額の算定方法や、課徴金の納付を命ずることができない「相当の注意を怠った者でないと認められる」場合や課徴金額が一定の金額に満たない場合(改正法8条1項ただし書き)の考え方等について解説している。
このうち、実務上最も問題となりうる「相当の注意を怠った者でないと認められる」か否かについては、その判断基準を示したうえで、具体的に想定される事例が複数挙げられている。すなわち、改正法における課徴金納付命令は、優良誤認表示や有利誤認表示を行った事業者が、これらの表示であることを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められる場合は、その納付を命ずることができないとされており、「相当の注意を怠った者でないと認められる」か否かは、一般消費者の利益保護の見地から、当該表示の根拠となる情報を確認するなど、正常な商慣習に照らし必要とされる注意をしていたか否かにより、個別事案ごとに判断される。当該判断に当たっては、当該事業者の業態や規模、課徴金対象行為に係る商品又は役務の内容、課徴金対象行為に係る表示内容、課徴金対象行為の態様等を勘案することとなるが、必要かつ適切な範囲で、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年内閣府告示第276号。表示等に関する情報の確認や共有方法等について規定している。)に沿うような具体的な措置を講じていた場合には、「相当の注意を怠った者でない」と認められると考えられている。
そして、具体的に想定される事例としては、以下のようなものが挙げられており、それぞれ正常な商慣習に照らし必要とされる注意の具体例が記載されている。あくまで個別事案ごとに異なるものであるが、下記具体例に照らすと、当該取引における正常な商慣習として、当該商品を生産・製造した事業者あるいは客観的な第三者機関の発行する証明書や検査結果報告を取得して確認していることが、「相当の注意を怠った者でないと認められる」ことに繋がるものと考えられる。
改正法によって導入される課徴金納付命令は、事業者にとっては重い負担となりうるものであるが、上記のとおり正常な商慣習に照らし必要とされる注意を怠らなければ命じられないものでもあり、事業者においてはこれまで以上に商品やサービスの表示を行うに当たって、根拠となる情報を適切に確認する必要があるものといえよう。
想定例
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正常な商慣習に照らし必要とされる注意の具体例
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[1] 平成26年11月19日に成立した不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成26年法律第118号)によって導入された課徴金制度(施行は、公布の日(平成26年11月27日)から起算して1年6月以内の政令で別途定める日からとなっている。)の運用の透明性及び事業者の予見可能性を確保するために制定されるものである。