◇SH0549◇中国:「新三板」(店頭登録市場)について 德地屋圭治(2016/02/09)

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中国:「新三板」(店頭登録市場)について

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 德地屋 圭 治

 「新三板」とは、中国の全国中小企業株式譲渡システムという日本でいう店頭登録市場に類似する株式市場の通称である。中国では多層的な資本市場が形成されており、メインボード(上海・深セン証券取引所)、中小企業ボード(深セン証券取引所)及びベンチャーボード(深セン証券取引所)や、各地方株式取引センターのほか、全国的な店頭登録市場である新三版が設けられている。新三板は、北京市の中関村科技園区のハイテク中小企業を中心とした株式店頭市場である株式譲渡代行システムに由来しているが、2013年に、「全国中小企業株式譲渡システム有限公司暫定管理弁法」が制定されるとともに、国務院の決定により、新三板に登録できる企業は、一定の地域の企業に限らないこととされ、全国に拡大された。

 2015年12月末日時点で、新三板に登録している企業は5129社、時価総額は約2.4兆人民元であり、業種的には、製造業及びIT業が多い(それぞれ登録会社数の約53%、約20%を占める)(全国中小企業株式譲渡システムホームページより)。

 

1 登録申請の条件

 全国中小企業株式譲渡システム業務規則(試行)によれば、企業が新三板に登録申請するには、以下の条件を満たすことが必要とされている。他の一部の証券市場と異なり、利益獲得能力等に関し財務指標の要件は規定されておらず、登録のハードルは比較的低く設定されている。

  1. ① 設立されてから2年以上経過していること(有限責任公司が股份有限公司に組織替えしていた場合には、有限責任公司の設立から起算する)。
  2. ② 業務が明確で、継続的経営能力を有すること。
  3. ③ コーポレートガバナンスの仕組みが健全で、経営を合法的に規律していること。
  4. ④ 株式(の帰属)が明確で、株券の発行及び譲渡行為が合法で規定に適合していること。
  5. ⑤ 担当証券会社からの推薦があり、継続的に監督されていること。
  6. ⑥ その他の全国中小企業株式譲渡システムが要求する要件

 これらの要件を満たせば、中国内資企業のほか、外国企業から出資がなされている外商投資企業であっても、新三板に登録可能である。

 また、国務院の決定では、ハイテク中小企業などの成長企業による新三板への登録が推奨されているものの、登録の会社の業種に関し制限はないとされている。

 

2 登録株式の取引方法

 新三板登録株式については、現時点で二種類の取引方法があり、相対取引方式及びマーケットメイク方式である。相対取引方式は、買主及び売主が市場外で価格等を協議して取引をする方法であり、マーケットメイク方式は、マーケットメイカーである証券会社が売りと買いの気配値を提示し、買主・売主はマーケットメイカーと取引をする方法である(なお、オークション方式についても将来の実施が想定されているが、現時点では未実施である。)。

 取引方法についてはいずれを実施するか、登録会社が選択する。2015年12月末日時点では、相対取引方式が登録会社の80%程度、マーケットメイク方式20%程度である。

 

3 新三板登録株式への投資資格

 新三板登録株式の市場取引に参加するには、登録資本500万人民元など一定の条件を満たす必要がある。外国投資家も市場取引への参加は可能であるが、適格国外機関投資家(QFII)・人民元適格国外機関投資家 (RQFII)などの条件を満たす必要がある。

 

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