法のかたち-所有と不法行為
第十三話 実体・因果性・相互作用のカテゴリーによる私法の一般理論
法学博士 (東北大学)
平 井 進
2 私のもの、実体・因果性・相互作用
カントは、1797年の『人倫の形而上学』法論(序論と第一部)において[1]、「私のもの」について論じている。これには二種類あり、第一は、法作用によらずに生得的に帰属する「内的な私のもの」であり、ただ一つである(237-238)。第二は、外にあるものを取得する「外的な私のもの」(248-249)である。
これらをまとめたものが「法による私のもの」(meum iuris)であり、それは「他者が私の同意なく使用しようとすれば、その使用が私に損害を与えるように結びついているもの」である。また、「外的な私のもの」は、「私がそれを占有していなくても、その物を他者が使用すると、私に損害を与えうると私が認めるようなもの」であり、もっぱら法によるものであって(245)、現実の経験的な占有を基礎付ける条件を捨象することによって拡張された占有である(250-252)。
最も重要である「内的な私のもの」について、カントはこれ以上の説明をしていない。
3 相互作用による同時存在
カントは上記第三の原則として、複数のものが相互作用において同時に存在するということについて述べている。
誰かが外的な何かが「自分のもの」であると宣言して、他者がその対象に干渉することを控えるように求めるときに、そのような宣言に対して他者を拘束することを求めることが相互に承認され、保証されているのでなければ、社会の成員はそのように拘束されてよいとは考えない。そのような拘束の義務が普遍化され、相互的であるときに、それは強制力をもつ社会的な規則として機能する(カントはそれを「市民状態」という)。
「外的な私のもの」が可能であるのは、このような状態である(255-256)。法の概念は、万人の自由の原理と調和する社会の普遍的で相互的な強制によって構成されるが、これは作用と反作用が等しいという力学法則のアナロジーによる(232)。
この力学法則とは上記の第三の原則(相互作用による同時存在)のことであり、上記の社会的規則の普遍性と相互性はその原則に対応している。