法のかたち-所有と不法行為
第十五話 自由-「私のもの」を守ること
法学博士 (東北大学)
平 井 進
7 自由の構造-四つの側面
ここで、「自由」について検討してみる。前述の宗教的な弾圧において見られたように、「実体」の状態が体制によって弾圧される状況において、その状態を維持することを求める権能が公法的な「自由」という理念によって観念されることになる。すなわち、前述の「権利」のうちの侵害を排除する作用について、侵害(弾圧)する者が体制であるときに、その作用(請求)による結果状態を「自由」と呼んでいる。
「自由」の概念には四つの面がある。第一は、自分が望む「実体」の活動を行うために、それに対する侵害を排除することが正当であるとする地位(権能)である。第二は、侵害者にその侵害を止めることを請求する作用(権利)である。第三は、その排除作用の結果として、自分が望む「実体」の活動を行うことができる状態である。第四は、その状態において行われる「実体」の活動とその目的である。
この自由の概念における第一(地位)、第二(作用)、第三(結果)、第四(目的)の四つの面の構成は、第二話で述べた権利の地位・作用・結果・目的の四つの面と対応している。このようにして、第二の作用は、侵害する者に対して請求する権利の概念となる。従来、自由と権利がしばしば渾然として唱えられるのは、このような作用の共通構造による。