◇SH1025◇実学・企業法務(第26回) 齋藤憲道(2017/02/20)

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実学・企業法務(第26回)

第1章 企業の一生

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

(3) 物(モノ)

6) 固定資産の価値の評価
 企業が保有する資産は、時間の経過とともに物理的に変化[1]するだけでなく、経済的価値も変わる。

 (a) 償却資産

 決算では、経年劣化する固定資産(償却資産)の評価は、その資産の取得価額から年度ごとに耐用年数[2]を基礎にして一定の方法(定額法、定率法、生産高比例法、リース期間定額法の中で法令が定める方法[3])で算出した減価償却費の累計額を控除する方法で行う。

 (b) 土地

 地価には、下記のように、実際の取引価格と、目的に応じて当局が設定する価格が並存する。土地所有者は、後者について、価格の設定方法が適切か(長年、変更されていない等)をチェックしたい。

 ①実際の取引価格(実勢価格)、②地価公示法に基づいて国土交通省が公示する公示価格[4]、③相続税・贈与税の基準にする路線価[5]、④地方税法に基づいて市町村長が固定資産税・不動産取得税の対象にする固定資産税評価額[6]、⑤国土利用計画法に基づいて都道府県知事が判定・公表する基準地の標準価格[7]

  1. 〔土地価格の規制〕
    1980年代のバブル経済期に、土地の投機的取引・地価高騰が社会生活・経済活動に与える弊害が顕著になり、1980年代後半から、①事後届出制、②注視区域・監視区域における事前届出制、③規制区域における許可制により土地取引を規制する国土利用計画法[8]が活用された。こうして土地価格は鎮静したが、その後、日本経済はデフレに陥った。


[1] 通常は、強度・耐水性等の物理的特性が劣化する。これを経年劣化といい、資産の有効寿命を耐用年数という。法人税法で適用する耐用年数は法定耐用年数という。これに対して、商品のライフサイクルや代替技術の開発動向等を反映し、資産が経営に寄与する経済的寿命を経済耐用年数という。

[2] 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(財務省令)参照

[3] 法人税法施行令48条の2。生産高比例法は鉱業用機械・鉱業権等の使用に対して比例的に減価するものに適用される。

[4] 毎年1月1日時点の地価で、官報に公示され、新聞に掲載される。適正な地価水準として、公的指標・相続税評価・固定資産税評価の基準になる。

[5] 市街地では道路を基準にして道路に接する土地1㎡当たりの価格を決め、これを基にして評価額を算出する。路線価を用いない地域の相続税等の評価額は、固定資産税評価額に一定倍率を乗じて算出する。

[6] 地方税法410条、411条

[7] 都道府県知事は、自然的・社会的条件面で類似の利用価値を有する地域において、利用状況・環境等が通常の基準地を選定し、不動産鑑定士の鑑定評価を得て基準日(毎年7月1日)の標準価格を判定する(国土利用計画法施行令9条1項)。国土利用計画法に基づく土地取引の価格規制審査において、公示価格とともに判断規準とされる。

[8] 1974年6月25日制定

 

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