◇SH1291◇金融庁、「金融行政の再点検」に係る具体的な取組み状況等 飯田浩司(2017/07/19)

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金融庁、「金融行政の再点検」に係る具体的な取組み状況等

岩田合同法律事務所

弁護士 飯 田 浩 司

 

1.

 金融庁は、平成29年7月7日、「「金融行政の再点検」に係る具体的な取組み状況等について」を発表した(以下「本発表」という。)。

 

2.

 本発表に先立ち、金融庁は、平成28年10月21日付平成28年事務年度金融行政方針[1]における「金融行政の再点検」及び平成28年12月13日付「金融行政方針で掲げた「金融行政の再点検」に係る具体的な取組み」[2]として、下表のような方針及び取組みを公表していた。

方針①

必要性の低下した調査・公表資料等の廃止等を行う。

取組

過去から継続している作業等のうち必要性が低下しているものの定期的な洗い出し(その結果としての報告頻度の引き下げや廃止)を行う。

方針②

許認可等に係る審査手続に関し、リスト化等による適切な進捗管理を行うとともに、効率化・透明化を図る。

取組

審査が長期にわたる許認可審査について、次のものを行う。

  1. (ⅰ) 早い段階で議論すべきテーマと今後の見通しを金融機関等との間で共有して管理すること、
  2. (ⅱ) 事務年度を跨ぐことによる担当者の交替等によって審査が停滞しないよう努めること、
  3. (ⅲ) 許認可のうち特に「登録」について、申請の審査等に係る一般的な流れや過去の登録等の審査における主な論点等の公表

方針③

業務改善命令等について、立入検査の結果が解除の主な判断材料となっているという現在の運用を改める。

取組

業務改善命令及び報告徴求命令において、報告義務の解除のために、立入検査による改善確認を常に要する運用の見直しを行う。

 

3.

 本発表は、その後の更なる「具体的な取組み状況等」を示すものである。そこでは、上記方針①~③の基本的な枠組みは維持されており、追加的に記載されたといえる情報は以下の通りである。

 方針①については、新たに報告頻度の見直しや廃止を行った調査等について、例えば個人情報等漏えいの場合を挙げている。具体的には、漏えいの場合に全件報告を要していたところ、金融機関の責めに帰さない事案については原則報告を要さないものとされ、軽微事案については月次報告から四半期ごとの報告に改められた。

 方針②については、「審査が長期にわたるものについては、許認可等案件をリスト化し、進捗管理等を行うとともに、金融機関等との間で議論すべきテーマや今後の見直し等について認識を共有している」と一般論を述べた上で、

  1. (ⅰ) 登録申請に係る関連法令等や財務局窓口の一覧に、(近時の資金決済法改正で関連規定が設けられた)仮想通貨交換業者についての記載を追記し、
  2. (ⅱ)「これまでの新規免許・登録申請案件に係る具体的事例」として、具体的な免許・登録の審査経過に関する7つの事例(例えば資金移動業の登録の事例)を記載し、
  3. (ⅲ)「仮想通貨交換業者の新規登録の相談状況・審査内容等」として、仮想通貨交換業者の登録申請に係る事前相談、事前審査の主な内容について示している。

 この②(ⅱ)は免許・登録に時間を要した場合や、目標とした時期に免許交付した場合について、当局の目線での要因(上記資金移動業の登録の事例では、法令等遵守体制や適切な業務運営を確保するためのチェック体制の整備が不十分又は整備されていないなど)が記されており、特に参考になるものと思われる。

 方針③については、平成28年12月13日の「具体的な取組み」の公表後、「報告がなされた時点や決算が明らかとなった時点など適宜のタイミングにおいて、金融機関の経営陣の取組姿勢や改善措置の進捗状況、改善措置が未実施となっていることの理由等を総合的に勘案し、報告義務解除の判断を行っている」としており、立入検査による改善確認以外の報告義務解除の際の考慮点が例示されている。

 

4.

 本発表それ自体は、従前の方針・取組みの延長に位置付けられるものであり、直ちに実務上大きなインパクトを持つものではないと考えられるが、金融庁の実務運用の変化を知る端緒としては有用であり、かつ、現に少しずつ変化が生じていることが見てとれる。今後の動向についても注視すべきであろう。

 

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