消費者庁、「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表
−−制作した表示例に対する消費者の意識調査等に基づき景品表示法上の考え方を整理−−
消費者庁は7月14日、「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表した。
事業者が商品・サービスの内容や取引条件について訴求する「強調表示」は、対象商品・サービスのすべてについて、無条件・無制約に当てはまるものと一般消費者に受け止められるため、仮に例外条件や制約条件等があるときは、その旨の表示(いわゆる「打消し表示」)をわかりやすく適切に行わなければ、一般消費者に誤認され、不当表示として不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」)上問題となるおそれがあるとされている。この「打消し表示」については、公正取引委員会が「見にくい表示に関する実態調査報告書−−打消し表示の在り方を中心に−−」を平成20年6月13日に公表していたところである。
今般、消費者庁では、表示物の収集により打消し表示の実態を調査するとともに、制作した打消し表示の例を用いて幅広い年代の消費者を対象とした意識調査を行い、一般消費者による自主的かつ合理的な選択に資する観点から、景品表示法上の考え方を整理した。今回の調査では、平成28年10月31日〜平成29年3月31日に、一般消費者がふだん接する可能性のある各種媒体から、打消し表示が含まれている表示物を収集し、業種別、打消し表示の内容別に整理・分析。その結果を参考に、Webアンケート調査およびグループインタビュー調査を実施した。そして、有識者による研究会(座長=糸田省吾・全国公正取引協議会連合会会長代行)も開催し、本報告書を取りまとめたものである。
以下、報告書の概要を紹介する。
1 打消し表示の実態と類型化
打消し表示が含まれている表示物の収集結果を参考に、次のように分類した。
- ○ 例外型=例外(別条件型および追加料金型に係るものを除く)がある旨の注意書き
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打消し表示の例「医療行為、医療機関及び適用症などによっては、給付対象とならないことがあります」
- ○ 体験談型=体験談に関する注意書き
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打消し表示の例「個人の感想であり、効果には個人差があります」
- ○ 別条件型=何らかの別の条件が必要である旨を述べる注意書き
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打消し表示の例「××のインターネット契約が3年間必要です」
- ○ 非保証型=(体験談を記述せずに、)効果・性能等には個人差がある旨や、効果・性能等を保証するものではない旨を述べる注意書き
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打消し表示の例「気持ちを表すもので、効果効能を保証するものではありません」
- ○ 変更可能性型=予告なく変更する可能性がある旨を述べる注意書き
- 打消し表示の例「価格・内容は予告なく変更する可能性があります」
2 打消し表示の態様と景品表示法上の考え方
(1) 表示方法に問題のある打消し表示
制作した表示例を用いて、打消し表示を回答者が認識できたか否か、打消し表示を認識できなかった要因としてどのようなものが考えられるかを調査した。調査結果等をもとに整理した景品表示法上の考え方のポイントは、次のようになる。
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① すべての媒体に共通して問題となる表示方法
・打消し表示の文字の大きさ
・強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス
・打消し表示の配置場所
・打消し表示と背景との区別 -
② 動画広告において問題となる表示方法
・打消し表示が含まれる画面の表示時間
・強調表示と打消し表示が別の画面に表示されるか
・音声等による表示の方法
・複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場するか -
③ Web広告において問題となる表示方法
(Web広告において、強調表示と打消し表示が1スクロール以上離れているか)
(2) 表示内容に問題のある打消し表示(例外型、別条件型、追加料金型、試験条件型)
制作した表示例を用いて、打消し表示の内容を回答者が理解できたか否かを調査し、調査結果等をもとに景品表示法上の考え方を整理すると、次のようになる。
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① 例外型
調査結果によると、23.6%の回答者が、打消し表示を見た上でも、打消し表示の内容を理解できなかった。商品・サービスの内容や取引条件を強調した表示に対して、何らかの例外がある旨を記載している打消し表示について、一般消費者が打消し表示を読んでも具体的な例外事項の内容を理解できない場合、一般消費者は例外事項なしに商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。こうした強調表示および打消し表示から商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良または有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。 -
② 別条件型
47.7%の回答者が、打消し表示の内容を理解できなかった。たとえば割引期間や割引料金が強調される一方、割引期間や割引料金が適用されるための別途の条件が打消し表示に記載されており、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は別途の条件なしに強調された割引期間や割引料金で商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。こうした強調表示および打消し表示から商品・サービスの取引条件について実際のもの等よりも著しく有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。 -
③ 追加料金型
16.8%の回答者が、打消し表示を見た上でも、打消し表示の内容を理解できなかった。「全て込み」などと追加の料金が発生しないかのように強調している一方、それとは別に追加料金が発生する旨が打消し表示に記載されており、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容が理解できない場合、一般消費者は当該価格以外に追加料金が発生しないという認識を抱くと考えられる。こうした強調表示および打消し表示から商品・サービスの取引条件について実際のもの等よりも著しく有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。 -
④ 試験条件型
14.9%の回答者が、打消し表示を見た上でも、打消し表示の内容を理解できなかった。打消し表示として、試験・調査等によって客観的に実証された内容が書かれていたとしても、打消し表示の内容が外来語、業界独自の用語、技術に関する用語等の専門技術的なものを含み、一般消費者が打消し表示の内容を理解できないことにより、表示された効果・性能等と試験・調査等によって客観的に実証された内容とが適切に対応していないことを理解できない場合、一般消費者は強調されているとおりの賞品の効果・性能等があるという認識を抱くと考えられる。こうした強調表示および打消し表示から商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。
(3) 体験談を用いる場合の打消し表示
制作した表示例を用いて、商品・サービスの広告における体験談および打消し表示について、一般消費者の意識調査を行った。調査結果等をもとに景品表示法上の考え方を整理すると、次のようになる。
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① 体験談に関する景品表示法上の考え方
調査結果から、実際に商品を摂取した者の体験談を見た一般消費者は「『大体の人』が効果・性能を得られる」という認識を抱き(回答者の42.2%)、打消し表示に気付いたとしても、体験談から受けた認識が変容することはほとんどないと考えれる。このため、たとえば、実際には、商品を使用しても効果・性能等をまったく得られない者が相当数存在するにもかかわらず、商品の効果・性能等があったという体験談を表示した場合、打消し表示が明瞭に記載されていたとしても、一般消費者は「大体の人が何らかの効果・性能等を得られる」という認識を抱くと考えられるので、商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。 -
② 体験談および打消し表示を用いる場合の留意点
体験談を用いる際は、体験談等を含めた表示全体から「大体の人に効果がある」と一般消費者が認識を抱くことに留意する必要がある。
体験談により一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該価格商品・サービスの効果・性能等に適切に対応したものを用いることが必要であり、商品の効果・性能等に関して事業者が行った調査における①被験者の数およびその属性、②そのうち体験談と同じような効果・性能等が得られた者が占める割合、③体験談と同じような効果・性能等が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すべきである。
3 まとめ
(1) 事業者における留意点
事業者においては、表示を行う際の前提として、一般消費者がふだん広告に接する際に打消し表示を意識して見ない(読まない)という実態を十分に理解し、広告に記載した内容を一般消費者が正しく認識できるように工夫して表示を行うことが求められる。これを踏まえた上で、事業者が商品・サービスの内容や取引条件について強調表示を行おうとする場合には、まず、打消し表示がなくても商品・サービスの内容や取引条件の実際を一般消費者が認識できるような強調表示の内容とすることが求められる。
やむを得ず、強調表示とともに打消し表示を行う場合でも、一般消費者が読んでもその内容を理解できない打消し表示であれば、表示していないことと変わりがない。そのため、事業者は、一般消費者が打消し表示の内容を正確に理解できるようにわかりやすく表示するとともに、各媒体の特徴を踏まえた上で一般消費者にとって見やすく表示することにより、強調表示と打消し表示とを合わせて、表示物全体として、表示から受ける一般消費者の認識と実際のもの等との間に差が生じないように留意する必要がある。
各事業者においては、今回の調査で示した景品表示法上の考え方を十分に理解し、以下の取組みを行うことが望まれる。
- ① 表示チェックの体制やルールの構築、不断の見直し、改善
- ② 一般消費者の視点の活用
- ③ 正しい知識の習得
- ④ 「チェックリスト」の作成・見直し
(2) 消費者が注意すべきこと
広告で強調されている内容を見たときは、注意事項として例外条件、制約条件等が広告のどこかに記載されていないか意識を向けること。
特に購入を検討している場合は、表示物の一部から判断するのではなく、表示物全体の内容を把握した上で検討すること。
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消費者庁、「打消し表示に関する実態調査報告書」の公表について(7月14日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170714_0001.pdf -
○ 打消し表示に関する実態調査報告書
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170714_0002.pdf -
○ 概要
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170714_0003.pdf -
○ 参考1(「打消し表示」に関するWebアンケート調査報告書)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170714_0004.pdf -
○ 参考2(「打消し表示」に関するグループインタビュー調査報告書)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170714_0005.pdf -
参考
公正取引委員会「見にくい表示に関する実態調査報告書−−打消し表示の在り方を中心に−−」(平成20年6月13日)
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/cyosa/cyosa-hyoji/h20/08061303.html