JARO、「JAROの最近の審議事例にみる
インターネット上の広告・表示の現状と課題」を公表
−−平成28年度にJAROに寄せられたインターネット広告の苦情は1,936件と増加、
アフィリエイターによる不適切表示が目立つ−−
日本広告審査機構(JARO)は8月22日、「JAROの最近の審議事例にみるインターネット上の広告・表示の現状と課題」を公表した。以下では、JAROが5月26日に公表した「平成28年度の審査概況」とあわせて、概要を紹介する。
発表によると、平成28年度にJAROに寄せられたインターネット広告の「苦情」は1,936件で、前年度比128.9%と大幅に増加した。JAROは、今後も苦情は増えていくと予想され、その適正化は重要な課題であるとしている。
JAROが平成28年度に「見解」を発信した事例38件のうち、インターネットを媒体とするものが25件と、過去最多件数で6年連続1位となった。その内訳をみると、次のようになっている(重複あり)。
- • 自社通販サイト 14件
- • 自社ウェブサイト(通販サイト以外) 7件
- • インフィード広告 5件
- • 中間ランディングページ 1件
- • アフィリエイトサイト 1件
- • バナー広告 1件
- • その他 2件
JAROの「見解」から最近の特徴をみると、次のようになっている。
JAROの「見解」に見る最近の特徴
「リスティング広告からたどり着いた通販サイト」や「SNS上のインフィード広告と移動した先の通販サイト」などに、法律上問題となるおそれのある表現が見られるケースは以前から多かった。この場合の不適切な表示の主体は、自ら商品の販売を行う広告主である。近年の苦情では、こうした事例に加え、不適切な表示の主体として、自ら商品を販売する事業者ではないアフィリエイターの存在が目立ってきている。
平成28年度にJAROから警告したインターネット上の事例のうち、アフィリエイターによる不適切な表示の例を紹介する。
- 【ケース3】 ポータルサイトにインフィード広告を出稿するアフィリエイター
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スマートフォン版ポータルサイトのトップページに、当該ダイエットサプリメントに関するインフィード広告(アフィリエイターが出稿)が多数掲載されていたが、インフィード広告をタップすると、リンク先はアフィリエイトサイトであった。アフィリエイトサイトの「購入はこちら」といったボタンやテキストのリンクから広告主(商品の供給者)の通販サイトに移動するが、そのサイトの広告・表示は注意深く練られており、不適切な表示もそれほど目立つものではない。
アフィリエイトサイトは、「飲むだけで10kg痩せた」などの文言、テレビ番組の画像や芸能人の肖像、体験談などの情報を組み合わせた美容記事風の広告を作成していた。「飲用するだけで簡単に痩身効果が得られる」かのような表示は、アフィリエイトサイトであったとしても、規制対象が「何人も」である医薬品医療機器等法や健康増進法に抵触するおそれがある。また、「お試し○○円」のみの負担で済むような説明や、キャンペーンがすぐにでも終了してしまうかのような説明も、実際の契約内容について誤認を招くおそれがあり好ましくない、などとして、広告主(商品の供給者)ではないアフィリエイターに警告を行った。
- 【ケース4】 ランキングサイト
- 大手検索サイトで「足がつる」と検索し、リスティング広告枠に表示されたウェブサイトをクリックしたすると、表示されたページはランキングサイトになっており、サプリメントで足がつる症状が改善する効能・効果があるかのように標ぼうしつつ、複数のサプリメントを順位づけして紹介していた。しかし、そのランキングの順位等の根拠は曖昧であり、このランキングサイトそのものが複数のサプリメントのアフィリエイト広告となっており、商品名等をクリックすると、それぞれの商品の広告主の通販サイトに移動するようになっている。当該サイト全体に、医薬品医療機器等法や健康増進法上問題となるおそれがある表示が見られ、アフィリエイトサイトを運営する事業者に指摘した。
インターネット上の広告・表示における適正化の難しさ
(「アフィリエイトサイトにおける不適切な表示」の法的責任に関する部分)
アフィリエイトサイトについては、広告を制作するアフィリエイターが商品の供給者ではないこともあり、表示に関する責任が曖昧になりがちである。ここで、改めて、アフィリエイトサイトの不適切な表示に関して、誰に法的な責任が及ぶのかについて確認しておきたい。「何人も」が規制対象となる医薬品医療機器等法、健康増進法では、アフィリエイターが表示の責任の主体となると考えられる。しかし、不当表示を禁止する景品表示法では、アフィリエイターに不適切な表示の責任を問うことはできない。景品表示法は「事業者が自己の供給する商品・サービスの取引について、不当な表示を行うこと」を禁止するものであって、商品の供給者ではないアフィリエイターは、規制対象となっていないからである。
では、景品表示法では、アフィリエイトサイトの不適切な表示について責任を負うべき者は誰なのだろうか。消費者庁は、景品表示法上の規制対象となる事業者は、「表示内容の決定に関与した者」であると説明している。「表示内容の決定に関与」とは、「自ら又は他の者と共同して積極的に当該表示の内容を決定した場合」、「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた場合」のほか、「他の者にその決定をゆだねた場合」も含まれ、不当表示の故意または過失は問わないとしている。つまり、広告主がアフィリエイトサイトの不適切な表示について、景品表示法上の措置を受けるべき事業者に当たると考えられる。
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○ JARO、「JAROの最近の審議事例にみるインターネット上の広告・表示の現状と課題」(8月22日)
http://www.jaro.or.jp/oshirase/pdf/20170822_InternetAdState.pdf -
参考
JARO、平成28年度の審査概況(5月26日)
http://www.jaro.or.jp/kigyou/soudan_kensuu/toukei/20170529ReleaseG.pdf