◇SH1547◇実学・企業法務(第101回) 齋藤憲道(2017/12/14)

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実学・企業法務(第101回)

第3章 会社全体で一元的に構築する経営管理の仕組み

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

2. 金融商品取引法・上場規則の考え方

(2) 証券取引所規則の要請(証券取引所の自主ルール)

「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」[1]

 この報告書は、適切なディスクロージャーに経営者が責任をもって取り組む意識を持ち、経営者の独走を牽制する観点から独立性のある社外人材を適切に活用することを企図して、証券取引所が提出を求めるものである。

  1. 〔記載事項[2]〕 
  2. 1 コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方、資本構成、企業属性(決算期、業種、従業員 数、売上高等)、その他の基本情報  
    支配株主がある場合は、その株主と取引等を行うときの少数株主の保護指針を含む。
  3. 2「コーポレートガバナンス・コード[3]」を実施するか、実施しない場合の理由を説明する。  ○□◇☆
    上場会社には、本コードをComply(遵守)する義務はないが、東証への提出が義務付けられている「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の中で、Explain(説明)義務を果たさなければならない(Comply or Explain Rule)。 
    説明すべき範囲は、次の通りである[4]
     A. 東証1部・2部の上場会社は、基本原則・原則・補充原則の全て(73項目)を説明する。
     B. マザーズ及びJASDAQの上場会社は、基本原則(5項目)について説明する。
  4. 3 経営上の意思決定、執行・監督に係る経営管理組織その他のコーポレートガバナンス体制の状況及びその体制を選択している理由  ○□
  5. 4 株主その他の利害関係者に関する施策の実施状況  □◇
  6. 5 内部統制システムに関する事項  □◇☆
    基本的な考え方、その整備状況(反社会的勢力排除に向けた体制整備を含む)等
  7. 6 独立役員の確保の状況  
     (注) 独立役員と会社との関係を、具体的に記すことが求められている。
  8. 7 その他取引所が必要と認める事項

 

「独立役員届出書」  ○

 証券取引所は、上場会社に「独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役)」を1名以上確保すべきことを義務付け[5]、原則として役員変更が生じる日の2週間前までに「独立役員届出書」を提出することを求める[6]

  1. (注1)「社外取締役又は社外監査役」1名以上確保の義務違反は、東京証券取引所による実効性確保手段(改善報告書等)の対象になる[7]
  2. (注2) 上場会社は「取締役である独立役員」を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない[8](努力義務である)。
  1. 〔独立役員届出事項の構成〕
  2. ① 基本情報(会社名、提出日等)
  3. ② 独立役員、社外役員の独立性に関する事項(属性:業務執行者、監査役等)
  4. ③ 独立役員の属性、選任理由
  5. ④ 補足説明

 会社が提出した届出書は、東京証券取引所から公表される。



[1] 東京証券取引所有価証券上場規程419条

[2] 東京証券取引所有価証券上場規程204条12項1号、同規程施行規則211条4項。

[3] 金融庁に設置された有識者会議が2015年(平成27年)3月に作成した原案を基にして、2015年6月1日に東京証券取引所が制定した。このとき「上場会社コーポレート・ガバナンス原則(2004年3月16日 東京証券取引所公表)」が廃止された。

[4] 東京証券取引所有価証券上場規程436条の3

[5] 東京証券取引所有価証券上場規程436条の2(独立役員の確保)

[6] 2009年(平成21年)12月に東京証券取引所が「有価証券上場規程」を変更して実施した。有価証券上場規程施行規則436条の2(独立役員の確保に関する取り扱い)、211条4項6号

[7] 東京証券取引所有価証券上場規程 第4章4節1款「遵守すべき事項」の規定(同規程436条の2を含む)に違反した会社に対して、東京証券取引所は改善報告書の提出を求めることができる(同規程502条1項2号)。

[8] 東京証券取引所有価証券上場規程445条の4(2014年2月5日改正、同月10日施行)。2012 年9月の法制審議会「会社法制の見直しに関する要綱」の附帯決議「金融商品取引所の規則において、上場会社は取締役である独立役員を1人以上確保するよう努める旨の規律を設ける必要がある」を受けて改正された。

 

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