コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(38)
―第3ステップの感想と全国運動推進事務局会議開催―
経営倫理実践研究センターフェロー
岩 倉 秀 雄
前回は、第3ステップ「行動を考える」の職場討議結果について述べた。
今回は、第3ステップに取り組んだ事務局員の感想と、第4ステップ「行動宣言」を採択するために招集した全国運動推進事務局会議について述べる。
【第3ステップの感想と全国運動推進事務局会議の開催】
(1) 第3ステップの感想
第3ステップの職場討議は、事件報道の他に乳業工場の別会社化が実施されるなど、大きな変化の中で行われた。討議を推進した運動推進事務局員の主な感想は、下表のとおりであった。
表.第3ステップ「行動を考える」に対する運動推進事務局員の声
(チャレンジ「新生・○○」運動NEW No.4を基に筆者がまとめた)
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以上のように、場所によりさまざまな感想が出た。第3ステップの職場討議は、関東評議会委員長の講演により息を吹き返したが、一方、気になる状況もあった。
それは、業務と並行して長期間運動に取り組むことで、現場の運動推進事務局員に負担がかかり、疲労が蓄積して運動を停滞に追い込むのではないかという懸念だった。(筆者自身も、この頃になると疲労が蓄積していた。)
そこで、第1ステージのまとめとしての第4ステップ「行動宣言の採択」は、運動の勢いが消える前に行うこととし、1997年3月下旬に全国運動推進事務局会議を招集した。
(2) 全国運動推進事務局会議
1996年6月に始めた組織風土改革運動の第1ステージは、全国運動推進事務局会議で運動を総括し行動宣言を採択して終了した。
運動推進本部長の会長(酪農生産者出身)は、会議冒頭のあいさつで、「今まで、大変な状況の中、職員がこの運動に頑張ってきたことに感謝している。この組織は、酪農専門の全国連合会として今後とも日本の酪農の維持・発展になくてはならない組織だと信じている。職員はもう一度、原点に返り、農協の理念を学び、それを基礎として行動してほしい。」と述べた。
また、筆者は「この運動は、組織が永年培ってきた組織風土を上からの指示ではなく、関係会社を含めた働く現場の職員が変えていこうというある意味で革命的な取り組みである。まず、実行したことに意味がある。2度と事件を起こさない社会に信頼される組織を共に創るために、今後も粘り強く取り組んでいこう。」と呼び掛けた。
その後、各運動推進事務局員より、取り組み状況の報告や運動への意見、感想が述べられた。
その要旨は、「忙しい合間を縫って討議時間を取ることに苦労したが、日常業務での挨拶、接客、職場環境の改善に自主的に取り組んだ。酪農祭りを開催し地域イベントに積極的に参加して地域の人と触れ合う貴重な経験をしたことにより、改めて組織が社会の一員であることを実感した。運動開始から10ヵ月近く経ち、最近盛り上がりに欠けてきた面があるものの、この運動は今後とも継続する必要がある。」というものであった。
今後の運動の方向としては、①別会社化した乳業生産会社との連携を取りながら、運動を継続する、②販売回復に結びつく取り組みを行う、③第3ステップで決めた各職場の行動具体策を着実に実行する、とした。
次回は、会議で採択された3つの行動宣言について述べる。