◇SH1627◇金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について公表 松原崇弘(2018/02/06)

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金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対する
パブリックコメントの結果等について公表

岩田合同法律事務所

弁護士 松 原 崇 弘

 

 金融庁は、2018年1月26日、①企業内容等開示府令及び特定有価証券開示府令等並びに②特定有価証券開示ガイドライン及び電子開示手続等ガイドラインの改正に関して2017年10月に募集を開始したパブリックコメントの結果を公表した。

 上記①の内閣府令は、2018年1月26日付で公布・施行され(一部、2018年4月1日施行)、ガイドラインについても2018年1月26日より適用される。なお、改正後の規定は、2018年3月31日以降に終了する事業年度を最近事業年度とする有価証券届出書及び当事業年度に係る有価証券報告書から適用される。上記②のガイドラインは、2018年2月1日より適用される。

 以下、上記①の企業内容等開示府令、特定有価証券開示府令等の改正を概説する。

 

1 改正の経緯

 2016年4月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(座長 神田秀樹 学習院大学大学院法務研究科教授)の報告[1]では、企業と投資家との建設的な対話を促進していく観点から、開示内容の共通化・合理化や非財務情報の開示充実に向けた提言がなされた。金融庁は、当該提言を踏まえ、有価証券報告書等の記載事項について改正案を作成し、パブリックコメントに付した上で、今般企業内容等開示府令、特定有価証券開示府令等を改正した。

 

2 改正の趣旨・概要

 企業内容等開示府令、特定有価証券開示府令等の改正の趣旨は、⑴開示内容の共通化・合理化と⑵非財務情報の開示充実である。

 まず、⑴開示内容の共通化・合理化に関する改正は、(ⅰ)有価証券報告書及び事業報告における大株主の状況に係る記載の共通化、(ⅱ)「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」及び「ストックオプション制度の内容」の項目を「新株予約権等の状況」に統合するなどの新株予約権等の記載の合理化、(ⅲ)株主総会日程の柔軟化のための開示の見直しである(詳細は、図1参照)。

 

図1 企業内容等開示府令、特定有価証券開示府令等の改正

(ⅰ) 有価証券報告書及び事業報告における大株主の状況に係る記載の共通化

 

有価証券報告書等の「大株主の状況」における株式所有割合の算定の基礎となる発行済株式について、議決権に着目している事業報告と同様に自己株式を控除。両者の記載内容を共通化。
 

(ⅱ) 新株予約権等の記載の合理化

 

  1. ・「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」及び「ストックオプション制度の内容」の項目を「新株予約権等の状況」に統合。この際、現行様式の表を撤廃し、企業の判断により過去発行分を一覧表形式で記載することを可能とする。
  2. ・ ストックオプションについては、財務諸表注記(日本基準の場合)で記載されている場合、当該記載の参照を可能とする。
  3. ・「新株予約権等の状況」については、事業年度末及び有価証券報告書提出日の前月末現在の記載を求めているところ、事業年度末の情報から変更がなければ、後者については変更ない旨の記載のみでよい。
     
(ⅲ) 株主総会日程の柔軟化のための開示の見直し

 

有価証券報告書における「大株主の状況」等の記載時点を、事業年度末から、原則として議決権行使基準日へ変更。
 

 

 次に、⑵非財務情報の開示充実に関する改正は、「財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に関する記載の統合と対話に資する内容の充実である。後者につき、経営成績等の状況の分析・検討の記載を充実させる観点から、経営者の視点による分析評価の記載を求めている。具体的には、ア)事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について、経営者の視点による認識及び分析と、イ)経営者が経営方針・経営戦略等の中長期的な目標に照らして経営成績等をどのように分析・評価しているかの2点である。

 

3 経営者の視点による分析評価の記載の考察(前記⑵)

 金融庁によるパブリックコメントの回答(3番 [2頁] )によれば、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析に関する記載内容は、各企業の実態に応じて、経営者が主体的に判断すべきとされ、例示等はなされなかった。もっとも、パブリックコメントの回答(1番 [1頁] )によれば、現在の開示の状況の問題点として、経営者の視点による分析・検討が欠けている例が多い、財務情報の要約を文章化しているにとどまり分析的に記載されていない、他の項目と同じ情報が含まれていることが挙げられている。今般の改正は当該問題点を踏まえて企業と投資者との対話に資する、より体系立った分かりやすい開示の実現を目指すものであることが明らかにされており、今般の改正の趣旨を踏まえた記載が望まれる。

 今後も、投資家の投資判断に必要な情報や、企業と投資者の建設的な対話に資する情報を開示する要請は一層強くなるといえ、比例して、経営者の視点による情報発信も一層重視されよう。

 

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