◇SH1748◇債権法改正後の民法の未来19 譲渡人の地位の変動に伴う将来債権譲渡の効力の限界(2) 德田 琢(2018/04/05)

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債権法改正後の民法の未来 19
譲渡人の地位の変動に伴う将来債権譲渡の効力の限界(2)

德田法律事務所

弁護士 德 田   琢

 

Ⅲ 議論の経過

(一) 経過一覧

 法制審議会では、下記一覧表記載のとおり議論がなされた。

会議等 開催日等 資料
第7回 H22.4.13開催
第1読会
部会資料9-1、9-2(詳細版)  
第22回 H23.1.25開催
論点整理
部会資料22  
中間的な論点整理 H23.4.12決定 同補足説明 部会資料33-3(中間的な論点整理に寄せられた意見の概要(各論2))
第45回 H24.4.17開催
第2読会
部会資料37  
第3分科会第4回 H24.7.10開催 大阪弁護士会民法改正問題特別委員会有志「債権譲渡禁止特約及び将来債権譲渡についての条文提案
第66回 H25.1.15開催
中間試案
部会資料55 大阪弁護士会 民法改正問題特別委員会 有志「部会資料55(中間試案のたたき台(3))第1~6 に対する意見
中間試案 H25.2.26決定 中間試案(概要付き) 同補足説明 部会資料71-4(中間試案に対して寄せられた意見の概要(各論3))
第93回 H26.7.8開催
第3読会
部会資料81B  
第95回 H26.8.5開催
第3読会
部会資料82-2  

(二) 概要

 将来債権の譲渡後に譲渡人の地位に変動があった場合に、その将来債権譲渡の効力を第三者に対抗することができる範囲が問題となる具体的な事例としては、例えば、①不動産の賃料債権の譲渡後に賃貸人が不動産を譲渡した場合における当該不動産から発生する賃料債権の帰属、②売掛債権の譲渡後に事業譲渡等によって事業が譲渡された場合における当該事業から発生する売掛債権の帰属、③将来債権の譲渡後に譲渡人に倒産手続が開始された場合における管財人又は再生債務者の下で発生する債権の帰属といった例が挙げられる。

 これらの場合に、将来債権譲渡の効力を第三者に対抗することができる範囲が必ずしも明らかでないことは、将来債権の譲渡を萎縮させるおそれがあるとともに、将来債権の譲渡を対抗される可能性のある第三者も、不測の損害を被るおそれがあることから、立法によりその範囲を明らかにするための規定を設けることが望ましいという考え方の下、検討がなされ、具体的には、中間的な論点整理以降、継続して、「第三者が譲渡人の契約上の地位を承継した者である場合は、第三者の下で生ずる債権にも譲渡人の処分権が及んでいると言えること」を理由として、「将来債権を生じさせる譲渡人の契約上の地位を承継した者に対して、将来債権の譲渡を対抗することができる」旨の規定を設けるべきであるとする改正提言がなされた。[1]

 しかし、先ず、上記③については、主として倒産法上の問題として議論されるべきであるという意見が大勢を占め、早々に議論の対象から外れた。[2]

 また、上記①及び②についても、当初から、「債権者が交代した後の契約関係から発生した債権については、本来的には将来債権の譲渡の効力が及ばないはずである」という反対意見が呈されていた。[3]

 更に、上記①については、不動産を譲り受けようとする者が当該不動産から発生する賃料債権の譲渡の有無という情報に容易にアクセスできるのかという公示の問題、将来の賃料債権が譲渡された不動産が流通するおそれがあることが不動産取引の安全を阻害しないかという不動産流通保護の問題、法定果実である賃料債権を不動産の所有権から分離して長期間にわたって譲渡することの可否という物権法上の理論的な問題などが指摘され、[4]中間試案後に至って、上記①に限っては、譲渡人から賃貸借契約上の地位が第三者に移転した後に発生した賃料債権については、将来債権譲渡の効力が及ばないとする特則を設けることについても検討された。[5]

 

Ⅳ 立法が見送られた理由

 結局、合意形成が困難であると考えられたことから、譲渡人の地位の変動に伴う将来債権譲渡の効力の限界に関する規定の明文化は見送られることとなった[6]。特に、不動産の賃料債権の譲渡に特有の規定を設けるか否かについては、意見が分かれた。[7]



[1] 中間的な論点整理補足説明

[2] 部会資料37

[3] 中間的な論点整理補足説明

[4] 中間的な論点整理補足説明、部会資料37

[5] 部会資料37、部会資料81B

[6] 部会資料82-2

[7] 第93回議事録6頁以下

 

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