◇SH1885◇公取委、平成29年度における独占禁止法違反事件の処理状況を公表(2018/06/05)

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公取委、平成29年度における独占禁止法違反事件の処理状況を公表

 

 公正取引委員会は5月23日、平成29年度における独占禁止法違反事件の処理状況を公表した。

 公取委では、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしているほか、IT・デジタル関連分野、農業分野、公益事業の自由化分野における参入制限など、社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に取り組んでいるところである。

 平成29年度における独占禁止法違反事件の処理状況の概要は、次のとおりである。

 

第1 審査事件の概況

1 法的措置等の状況

(1) 排除措置命令等の状況

 独占禁止法違反行為について、のべ41名の事業者等に対して、13件の排除措置命令を行った。排除措置命令13件の内訳は、価格カルテル1件、入札談合5件、受注調整5件、不公正な取引方法1件、事業者団体による事業者の数の制限1件となっている。

 また、違反行為を認定したが、排除措置命令を行うことができる期間を経過していた事件について、独占禁止法の運用の透明性を確保し、他の事業者における未然防止を図るなどの観点から、事案の概要を公表した。

(2) 警告等の状況

  1. ① 違反の疑いのある行為が認められた3件について、関係事業者に対し、事前説明を行った上で警告・公表を行った。
  2. ② 違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られなかったが、違反につながるおそれのある行為がみられたものであって、競争政策上公表することが望ましいと考えられる事案であり、かつ、関係事業者から公表する旨の了解を得た1件について、注意・公表を行った。
  3. ③ 事業者から自発的な改善措置の報告を受けた2件について、法運用の透明性や事業者の予見可能性を高める観点から、事案の概要を公表した。

(3) 課徴金納付命令の状況

 のべ32名の事業者に対して、総額18億9,210万円の課徴金納付命令を行った。一事業者当たりの課徴金額の平均は5,912万円であった。

 

2 刑事告発の状況

 東海旅客鉄道株式会社が発注する中央新幹線に係る建設工事の受注調整事件について、平成30年3月23日、競争見積参加業者4社および当該4社のうち2社で東海旅客鉄道株式会社が発注する中央新幹線に係る建設工事の受注等に関する業務に従事していた従業者2名を、検事総長に告発した。

 

3 申告の状況

 独占禁止法の規定に違反すると考えられる事実について公正取引委員会に寄せられた報告(申告)の件数は、5,578件であった。申告が書面で具体的な事実を摘示して行われるなど一定の要件を満たした場合には、申告者に対して措置結果等を通知することとされているところ、5,902件の通知を行った。

 

4 課徴金減免制度

 課徴金減免制度に基づき、事業者により自らの違反行為に係る事実の報告等が行われた件数は、103件であった(平成18年1月の制度導入時から平成29年度末までの累計は1,165件)。

 また、価格カルテル・入札談合・受注調整事件11件における、のべ35名の課徴金減免制度の適用事業者について、これらの事業者の名称、減免の状況等を公表した。

 

第2 行為類型別の事件概要

1 価格カルテル・入札談合・受注調整

(1) 価格カルテル

 ハードディスクドライブ用サスペンションの製造販売業者による価格カルテル事件について、1件の法的措置を採った。

(2) 入札談合・受注調整

  1. ① 入札談合
  2.    地方公共団体等が発注する物品等の入札における入札談合事件について、5件の法的措置を採った。
     
  3. ② 受注調整
  4.    民間の事業者が発注する物品等の調達における受注調整事件について、5件の法的措置を採った。
  5.    また、外国所在の金融機関による国際機関債の受注調整事件について、違反行為を認定したが、除斥期間を経過していたことから排除措置命令を行わなかったが、独占禁止法の運用の透明性を確保し、他の事業者における未然防止を図るなどの観点から、事案の概要を公表した。

 

2 不公正な取引方法

(1) 取引条件の差別取扱い・差別対価

 農業協同組合と組合員との取引における取引条件の差別取扱いについて、農業分野タスクフォースにより審査を行い、法的措置を採った。

 また、一般電気事業者であった小売電気事業者による戻り需要家に対する差別対価について、公益事業タスクフォースにより審査を行い、警告を行った。

(2) 拘束条件付取引

 アマゾンジャパン合同会社による電子商店街の出品者との取引において、その事業活動を制限している疑いについて、ITタスクフォースにより審査を行った。本件については、審査の過程において、同社から違反被疑行為について自発的な措置を講じるとの申出がなされたところ、上記の疑いを解消するものと認められたことから審査を終了し、事案の概要を公表した。

  1. 《アマゾン・サービシズ・インターナショナル・インクによる電子書籍に関する自発的な措置の報告》
  2.    アマゾン・サービシズ・インターナショナル・インクから、Amazon.co.jpウェブサイト上で配信される電子書籍に関する出版社等との間の契約において、出版社等の一般消費者等に対する小売価格を他の電子書籍配信プラットフォームにおける小売価格と同等とすることなどの条件の撤廃等を内容とする自発的な措置の報告を受け、競争への影響に係る懸念を解消するものと認め、その旨公表した。

 

3 中小事業者等に不当に不利益をもたらす不公正な取引方法

(1) 優越的地位の濫用

 農業協同組合による組合員に対する優越的地位の濫用事件について、農業分野タスクフォースにより審査を行い、注意・公表した。

 このほか、優越的地位の濫用行為については、「優越的地位濫用事件タスクフォース」を設置し、効率的かつ効果的な調査を行い、濫用行為の抑止・早期是正に努めることとしている。平成29年度においては、同タスクフォースにより調査を行い、優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして48件の注意を行った。

(2) 不当廉売

 食品スーパーを営む小売業者による野菜の不当廉売事件について、2件の警告を行ったほか、酒類、石油製品、家庭用電気製品等の小売業に係る不当廉売の申告に対し迅速処理を行い、不当廉売につながるおそれがあるとして457件の注意を行った。

 

4 事業者団体による事件

 公益社団法人神奈川県LPガス協会による一定の事業分野における事業者の数の制限事件について、1件の法的措置を採った。

 

第3 タスクフォースの取組状況等

 公取委では、ITタスクフォース、農業分野タスクフォース、公益事業タスクフォース等を設置し、これらの分野における独占禁止法違反被疑行為に係る情報に接した場合に、専門的な検討・分析、効率的な調査を実施することとしている。また、IT・デジタル関連分野、農業分野、電力・ガス分野における、独占禁止法違反被疑行為に係る情報を広く受け付けるため、平成28年3月以降、順次専用の情報提供窓口を設置している。

 平成29年度における当該情報提供窓口における情報受付件数は、IT・デジタル関連分野が104件、農業分野が30件、電力・ガス分野が30件となっている。

 

第4 独占禁止法違反に係る行政処分に対する取消請求訴訟

 平成29年度当初において係属中の排除措置命令等取消請求訴訟の件数は5件であったが、平成29年度中に新たに2件の排除措置命令等取消請求訴訟が東京地方裁判所に提起されたため(このうち1件については併せて執行停止の申立てがなされた)、平成29年度に係属した排除措置命令等取消請求訴訟は7件となった。

 

第5 審判及び審決等の概要

 平成29年度中に係属していた審判事件数は245件(うち122件は課徴金納付命令に係るもの)である。平成29年度においては、66件の審決を行った。内訳は、排除措置命令に係る審判請求棄却審決33件および課徴金納付命令に係る審判請求棄却審決33件である。このほか、1件について被審人から審判請求取下げが行われた。

 この結果、平成30年3月末時点では178件の審判事件が係属中である。

 

第6 審決取消請求訴訟

 平成29年度当初において係属中の審決取消請求訴訟の件数は6件であったが、平成29年度中に新たに9件の審決取消請求訴訟が提起されたため、平成29年度に係属した審決取消請求訴訟は15件となった。

 平成29年度においては、これらのうち、最高裁が、①上告棄却および上告不受理決定をしたことにより終了したものが2件、②上告不受理決定をしたことにより終了したものが1件、③上告受理決定(併せて上告棄却決定)をした上で上告棄却判決をしたことにより終了したものが1件あった。この結果、平成30年3月末時点では11件の審決取消請求訴訟が係属中である。

 

 

  1. 公取委、平成29年度における独占禁止法違反事件の処理状況について(5月23日)
    http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/may/180523_1.html
  2. ○ 平成29年度における独占禁止法違反事件の処理状況について
    http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/may/180523_1.files/01_honbun.pdf
  3. ○ 別添1 平成29年度における優越タスクの取組状況
    http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/may/180523_1.files/02-1_betten1.pdf
  4. ○ 別添2 平成29年度のIT・デジタル関連分野、農業分野、公益事業分野における取組状況
    http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/may/180523_1.files/02-2_betten2.pdf
  5. ○ 概要
    http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/may/180523_1.files/03_gaiyou.pdf
  6. ○ ポイント
    http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/may/180523_1.files/04_point.pdf

 

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