意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~
第30回 社内への教育・周知(2)
森・濱田松本法律事務所
弁護士 金 山 貴 昭
Q 従事者以外の従業員に関する公益通報者保護法上の留意点
従事者以外の従業員については、基本的には公益通報者保護法が適用される場面はないと思いますが、何か留意しなければならない事項はありますか。
A 【ポイント】
公益通報者保護法や法定指針が、従事者以外の個人に対して、何らかの義務を課したり、特定の行為を禁止することは既定していません。しかし、同法や同指針は、事業者に対して、公益通報者を保護するために必要な措置としていくつかの措置を講じることなどを義務付けており、事業者が講ずるべき措置の対象には従事者以外の事業者の役職員も含まれます。そのため、従事者以外の従業員も、事業者が講じるこれらの措置を遵守する必要がありますし、これに違反した場合には懲戒処分等の対象になりますので留意が必要です。 |
【解説】
公益通報者保護法や法定指針では、公益通報者の保護や公益通報への適切な対応のための義務を定めていますが、公益通報対応業務従事者への守秘義務を除けば、その義務の対象となっているのは事業者であって、事業者の従業員は同法等の義務の対象とはなっていません。しかし、事業者は、公益通報者を保護するために必要な措置を講じることを義務付けられており、これらの措置の対象には従事者以外の事業者の従業員も含まれます。そのため、従事者以外の従業員も、事業者の講じる措置を遵守する必要があり、違反した場合には懲戒処分等の対象になります。
公益通報者保護法及び法定指針において、公益通報者を保護するために従事者以外の従業員を対象として事業者が講ずべきとされている措置の内容は次の通りです。
- ① 公益通報をしたことを理由に、公益通報通報者に対し、不利益な取扱いをすることを防止するための措置
- ② 公益通報者を特定させる事項を必要な範囲を超えて共有すること(範囲外共有)を防止するための措置
- ③ 公益通報者を探索することを防止するための措置
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(かなやま・たかあき)
弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。
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